【連載】因果をめぐる7の視点
初回だけ読んでそれ以降読んでいなかったので、まとめて一気読み
初回→『科学2026年1月号』『日経サイエンス2026年3月号』 - logical cypher scape2
(2月号)「因果をめぐる7の視点2 ビッグデータ時代のスモールデータ──説明から納得,そして活用へ」樋口博之
情報科学・AI研究の世界では、「論理・因果」重視から「統計・相関」重視へと流れが変化している。スモールデータからビッグデータへの移行でもあるし、エキスパートシステムから機械学習へという変化でもある。
ところが近年、再び「因果」についても注目されるようになっている、と
「因果発見」と呼ばれ、単なる相関関係ではなく、そこから因果関係を見つけ出す技術ができてきたから。
因果関係かどうかは、分布の形が異なることでわかる、らしい。
非正規分布においては、つねに、因果関係が特定の形の分布図になる、とか(正規分布だと、A→BとB→Aの因果を区別できないらしい)。
富士通の半導体開発で、これを利用して、どの製造パラメータがどの結果に結びついてるかの推定に、2週間かかっていたのを1日に短縮した、とか。従来、専門家の知見によって絞りこんでいたのだけど、その専門家の知見とも一致。ただ、専門家が見つけてなかった因果も発見している、と。
(3月号)「因果をめぐる7の視点3 過去と未来をつなぐ因果の歴史――ヒュームからアインシュタイン,そして現代へ」小澤知己
物理学における因果
ニュートン:自然法則が因果法則
ヒュームやカント:因果は自然にはなく、人間側の認識の問題
→ヘルムホルツやマッハなどの科学者に影響。
相対性理論:光円錐の内か外かで、因果関係が及ぶか否か(相対論的因果律)
→宇宙検閲官仮説:一般相対性理論で出てくる問題。因果律破れないような仕組みが宇宙にはあるはず、という仮説。
量子論:確率的にしかわからない
→確率的にはわかるので、因果律が破られたわけではない
量子もつれ:光速を超える?
→情報は伝わらないとされるのでそれで因果は守られるとする(情報論的因果律)
現代物理学においてホットな因果の問題2つ
- 不定因果順序
シュレディンガーの猫よろしく、プロセスを重ね合わせると、A→Bという因果なのかB→Aという因果なのかはっきりしなくなる。これを利用してバッテリーの充電速度を上げる研究がある
(これ以前ニュースサイトか何かで読んで記憶あるけれど、因果が逆転するというものものしさとバッテリーの充電速度という実用的な話が繋がるのに、なんだか可笑しみがある)
- 超決定論
AはBの原因であるという時、もしAしなかったらBは起きなかっただろうから、という考え方(差異形成説)があるが、それは、Aするかしないかという選択の自由があったことを前提としている。しかし、そんな自由意志はないんじゃないか、というのを超決定論と呼ぶらしい。
(4月号)因果をめぐる7の視点4 因果は複数ある──多元主義的観点から」浅川芳直
哲学における因果
因果の産出説と差異形成説とを紹介し、またそのどちらでも説明できないようなケースもあげ、最近の哲学では、因果の本質はないのではないか、と考えられるようになってきた、と。
同じように因果と呼ぶけれど、その探求している分野によって、その因果の内実は違うんじゃないか、という多元主義
こういうことを知りたい時に用いられる因果はこれ、別のこういうことを知りたい時に用いられる因果はあれ、というように整理すれば「何でもあり」の相対主義にはならない、と。
(5月号)「因果をめぐる7の視点5 証明することを考える――論理学と数学の視点から」横山啓太
タイトルに「証明することを考える」とあり、「はて、因果は?」と思ったら、実際、冒頭で、今回は因果の話ではなく証明の話をやる宣言がなされていた。
ちなみに、完全性定理の話だった。
2026年3月号
計算の発展と科学……小柳義夫
計算科学というのは、特に大規模な計算を用いる科学をさし、シミュレーション科学とデータ科学に大別される。前者を第3の科学、後者を第4の科学と呼ぶこともある。
社会現象と計算物理学……伊藤伸泰
社会物理学=社会現象を物理学の方法で研究する
計算物理学は、原子とか要素のふるまいからシステムをとらえるものだが、社会現象の場合、個々の要素が法則の通り動かない、振る舞いを変えることがある、などがあり、計算量が膨大になる。
計算物理学を社会にあてはめた初期の例は、世論形成を相転移現象として調べたもの
この論文では具体例として、人流・交通流の分析を紹介している。神戸における交通分析(どの道路がどういう役割を担っているか)や災害時の避難誘導最適化
崩れつつある第一原理主義的科学思考――データ駆動が生み出す新しい計算の形……樋口知之
科学の方法を車の両輪に喩える。つまり、演繹法と帰納法。計算科学ではシミュレーションとデータ。
ここでいう第一原理主義というのは、演繹法を重視する考え方。
計算科学の研究コミュニティでは、この考え方が強くて、データというのは計算の検証に使うものであっても、計算に直接組み込んではいけない、という考えが支配的だったらしい。
それが、機械学習や生成AIの発展によって、変わってきたよね、という話
極端な話、データがあればモデルはいらないという主張まである。
気候・海洋シミュレーションとか、データ量が多くて、データは検証用とかいってられない。
2026年4月号
【特集】音楽の科学はどこまできたか
音楽と舞踊の起源――ヒトの脳・身体が生み出す時間の秩序性……藤井進也
リズムについて
リズム伝言ゲーム、という実験がある。ある間隔をおいて発せられた音を聞いてもらって、その音を模倣してタップしてもらう。そのタップした音を録音して再度聞かせて、再びタップしてもらう。これを繰り返すと、自然と整数比の秩序だったものに収束するらしい。
で、これを世界各国、音楽家も非音楽家も含めて実施した、と
そうすると、整数比への収束は普遍的にみられたが、どういう比になるか(1:1:1なのか1:2:1なのかとか)は地域差・文化差があったという話
動物には音楽があるか――比較認知研究から探る音楽の起源……岡ノ谷一夫
人間と動物の連続性と断続性の両方に注目せよ、というもの
動物の音声には(鳥の鳴き声とか)明らかに音楽っぽいものはある。とはいえ、人間の音楽とは違う(社会的機能をいろいろ担っているとか、高い情動喚起能力があるとか、メタ認知されているとか)。
音楽の起源は確かに動物の中にある(連続性)が、しかしどこかで、動物と人間とを分けているものもある(断続性)、と。その点で、言語能力とも似ている。
リズム、メロディ、ハーモニーといった要素を動物は認知できるか。メロディの認知というのは、オクターブ違っても同じ音と認知できるかという相対音感とか。
これら、動物種によってかなりまちまちな実験結果が出ているっぽい。
脳は音楽と言語をどのように聞き分けているのか……貞方マキ子
音楽音と言語音について、音響的な違いはわかってきて、工学的に区別する手法はできてきている。ただし、同じ方法を脳もやっているかどうかは不明。
音楽と言語は実際よく似ている。
脳内での処理については、同じところと違うところがあり、一概に、同じかどうかはいえない
失音楽症では、言語では音の高低が認識できるが、音楽の音の高低が判別できない(言語と音楽で脳内の処理が別)だが、一方で、言語と音楽の認知について、脳内で共有されているネットワークも多い。
オクターブ違っても同じメロディだと認知することは、動物全体でいうと珍しい。多くの動物は絶対的な音高で区別する。
リズムなどの時間的まとまりの認知も、動物によってできたりできなかったりする(一部の鳥やラットなどはできる)
音楽の「快」がもたらす報酬脳活動……森 数馬
音楽も脳に対して報酬をもたらしているが、金銭などの高次的な報酬ではなく、食事などの原初的な報酬に近い
視覚的芸術による報酬は、高次的
ダイナフォーミックスによる演奏技能の限界突破……古屋晋一・塩木ももこ・黒宮可織
ダイナフォーミックスという聞き慣れない言葉は、dynamicsをformする、という造語らしい
演奏を科学的に測定して、練習に役立てる、というものっぽい。
ピアノ演奏について、長い間「音色」というものが科学的にはよくわかっていなかった。というか、演奏家は「タッチで音色が変わる」と言っていたが、科学者的にはそんなん人にコントロールできる要素ではないわ、という対立があったらしい
しかし、改めて、精密に計測してみたら、微妙なコントロールしていることがわかった
重さを触覚的に感知して制御している
で、まず鍵盤の重さの違いを比べられる触覚デバイスを作って、それで重さの違いを判定してもらったあとに、改めてピアノを弾いてもらうと、音量コントロールがうまくなった、という実験が紹介されている。
つまり、聴覚ではなく触覚の訓練によってピアノがうまくなった、と
ほかにも、タイミングが上手くそろわないという壁にぶちあたっていた生徒がいて、そういう場合に「もっと鍵盤を掴むように」みたいなアドバイスがなされるらしいのだけど、測定してみたら、打鍵というよりは離鍵のタイミングがズレていたことがわかって、それをもとに練習したら壁を突破できた、とか。
従来、感覚的な言葉で行われていた演奏教育やアドバイスを、科学的にやってみよう、という話(スポーツ科学の音楽版、という紹介のされ方もしている)
人はなぜコンサートに足を運ぶのか――心理・生理反応の研究から……本田一暁
コンサートという実験室の外での環境での反応を調べるという研究
実験器具の進歩とともに可能になってきた
ここでは、同期という観点から
同じ音楽を聴くと心拍の同期とかが起きる。録音を聞くより、生演奏の方がより同期する。
演奏者との同期も研究中だが、要素が多くて、まだよくわからない
いろいろな実験がされてきているが、まだそれらを説明できる包括的なモデルなどはできていない
なお、生演奏の音楽をきくと、より同期する、という話も全体的な傾向の話で、組み合わせによっては全然同期しない人というのもいる、と
2026年5月号
生成AIが研究不正を加速させる可能性について……川原繁人
自身も研究で生成AIを使っているが、あるとき、AIが提案してきたことが研究不正につながるようなことだった。
研究不正につながる誘いをAIがしてくる可能性がある。
実際に、いくつかAIに質問する実験をしてみたら、研究不正につながる提案をしてきた。
改めてこれまずいよね? と聞くと、それが研究不正にあたると回答してくるが、AIは人間の役に立ちそうなことを優先して提案してきてしまう。
何が研究不正にあたるかまだよくわかっていない学生が、これが正しい研究の方法だと誤解してしまうのではないか、という問題提起
科博のお宝コレクション 2 生涯をかけた思考の記録:南方熊楠の菌類図譜……細矢 剛
新種も多いが公表はされていない
科博のお宝コレクション 3 「嫌われ者」へのまなざしを変える:千石正一氏が収集した爬虫類・両生類コレクション……吉川夏彦
は虫類研究で有名な「千石先生」のコレクション。生前、松戸市教育委員会に寄贈されたコレクションが没後、科学博物館に移管された、とのこと
自分も子供の頃に『どうぶつ奇想天外』を見て千石先生を知ったクチだが、逆に言うとそれでしか知らなかったので、改めてすごい人だったのだな、と
何がすごいかというと、若い頃から、愛好家も含めた連絡会ネットワークを形成したり、若手研究者をまとめて図鑑を作ったりしていたらしく、亡くなった際も関係者からそのリーダーシップについて賞賛する声が多かったとのこと。
世の中の爬虫類嫌いを減らすために、メディア出演も積極的にしていた、と
また、ペット飼育より自然環境下での観察を推奨していたものの、ペット飼育での不幸を減らすために飼育書も執筆し、コレクションにはペット個体の標本も多く含まれているらしい(日本への輸入の実態を残す資料となっている)
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