『日経サイエンス2026年4月号』『5月号』

日経サイエンス2026年4月号

From nature ダイジェスト 米国の博士課程プログラムが縮小

募集者の7割減とか募集停止とかやってたりしているらしくて、そんな激減してんの、とびびった。

星に届かなかった旅 スターショット計画  S. スコールズ

レーザー推進でアルファ・ケンタウリを目指す、ブレークスルー・スターショット計画
2016年に鳴り物入りでスタートしたが、最近、その後の発表がなくなっており、事実上停止したとみられている。
1億ドル拠出する、といわれたが、実際には1億ドルは支払われなかったという。
実現するためにはめちゃくちゃ時間がかかるわけで、そのことがわかってきて、出資者のミルナーが手を引いたのではないか、と推測されている。
関係者の証言が色々引用されているが、一方で、この計画の主だった科学者からは大体「この記事のインタビューは拒否された」と書かれていて、「あー……」となる。
この計画のポジティブな面として、恒星間飛行が現実にありうるものとして注目を浴びた、というのがあげられている
実際のところ、全く何もしていなかったわけではなくて、それぞれ関係する技術について、多くの科学者が検討を行って、今何ができて何ができないか、というのが整理された点で、意義はあっただろう、と。
スターショット計画で用いられる宇宙船について、当時大学院生だった研究者の超小型衛星の技術が目をつけられて、彼、その後ついたポストはそれとは違うプロジェクトだったらしいのだけど、スターショット計画のおかげでそっちの方の研究も進めることができたらしい。

短期集中連載:定説が覆るとき 改訂され続ける宇宙論

天動説と地動説の話から始まって、暗黒物質の話まで

日経サイエンス2026年5月号

意外に早かった? 多細胞生物の出現  A. エルバイン

2008年、ガボン共和国フランスヴィルの21億年前の地層から発見された「化石」について
発見者であるエル・アルバニらは、これが多細胞生物の化石だと主張
しかし、従来考えられていた時期をはるかに遡るため、懐疑的な研究者も多い
懐疑派は、黄鉄鉱のコンクリーションに過ぎないという。
エル・アルバニは、フランスヴィルの多細胞生物は、現生の生物とは全く異なる系統で、多細胞化を成し遂げたが、すぐに絶滅してしまったと考えていている。
多細胞化自体は、進化史上に1度しかなかった出来事ではなく、複数回起きていたのではないか、というのは、これまでの主流の考えと対立する。


これは化石なのか否か、何を示せば化石だという証拠になるのか
エル・アルバニは、同位体分析などして化石であることを証明しようとしているが、信じようとしないものは端から信じないところがある。
元々懐疑派だったある研究者は、オーストラリアでよく似た構造を発見したことで、こうした化石は実はありふれているのに、見逃してきてしまったのではないか、と考えるようになった。
(ここらへん、観察の理論負荷性というか古生物学の怖さというか、痕跡化石とか素人が見ても何が何だかわからんのが、訓練すると見えるようになるわけだけど、ある専門家には化石に見えて、別の専門家には化石に見えないという時、一体なにが見えてなにが見えていないのか……)
また、やはりエル・アルバニの主張に納得していない研究者でも、一方で、コンクリーションであるという説明にも納得せず、何か別の説明が必要であると考える者もいる。
細菌の活動した跡ではないか、という説もある。
真核生物の誕生から多細胞生物の誕生までの期間は非常に長く「退屈な10億年」などと言われることもあるが、この呼び方がよくない、という者もいう。退屈な期間を誰もわざわざ探したいとは思わないから、予言の自己成就みたくなってしまっている、と。


2024年には、中国の16億年前の地層から多細胞生物の化石が発見されており、最古の多細胞生物の記録を大きく更新した。ただこちらは、フランスヴィルの化石とは似ていないらしい。

海を旅する単細胞 底に住まう多細胞  遠藤智之 協力:五島剛太

名古屋大の五島剛太らの研究
酵母の研究をしていた際に、分裂の仕方が急に変化する現象が発見された。
隔壁形成による分裂から出芽による分裂へ
前者は多細胞生物であるかのように振る舞い、後者は単細胞生物であるかのように振る舞う
可塑的多細胞生物
変化をスイッチするタンパク質も発見
多細胞化は思ったよりも簡単に起きるし、また、単細胞に戻ることもできる
進化の過程で、多細胞と単細胞を切り替えられる中間的な生物がいたのではないか、と

ゲノムが明かした 私たちの脳に潜むネアンデルタール  E. L. カサノバ/F. A. フェルタス

ネアンデルタール人の遺伝子が、現生人類にも残っていることは最近よく知られるようになったところだけど、脳にどのような影響があったか、という点はまだそれほど明らかになっていない。
ただ、自閉症やADHDにおいて、ネアンデルタール人由来の遺伝子が関与していることがわかってきたとか
社会性と視覚的な認知能力の間にトレードオフがある可能性がある、と

短期集中連載:定説が覆るとき 生命のカギを握るのはDNAではなくRNA

ノンコーディングRNAの話
ENCODEとかでたくさん見つかって、RNAが実はいろいろな役割を果たしていることがわかってきたよね、という奴

The Universe 宇宙人から見えるものは?

もし地球外知的生命体がいるとして、彼から地球人類は発見できるのか
地球と同じ文明レベルだった際に、地球のテクノシグネチャーはどの程度遠くから見えるか。
例えば電波。
SETIのように意図的に異星人へ向けて放つ高出力電波ならまあある程度遠くまで届くが、地球上で普段使われている各種電波が漏れ出していくものについては、検出限界は4光年程度で、アルファ・ケンタウリまでも届かない
ほかに、二酸化炭素は検出できるかなど
最悪なのは、人工衛星のトランジットを検出できるか、で、これは火星程度の距離でもわからんとか。