2025-06-01から1ヶ月間の記事一覧

呉明益『眠りの航路』(倉本知明・訳)

睡眠障害に悩まされる「ぼく」の物語と、大戦末期に日本へ渡り神奈川で戦闘機製造の少年工となった父・三郎の物語とが交互に進んでいく 白水社エクス・リブリス ざっくりいって、戦争と記憶をテーマにした作品だといえる。 三郎パートの多くが日本を舞台とし…

ベンハミン・ラバトゥッツ『恐るべき緑』(松本健二・訳)

20世紀科学史・数学史における人物伝の形で、科学が人類の理解を越えてしまったのではないか、ということを描きだそうとうする中短編小説集 白水社エクス・リブリス 登場するのは、フリッツ・ハーバー(「プルシアン・ブルー」)、カール・シュヴァルツシル…

岡崎乾二郎『抽象の力』(一部)

抽象絵画についての批評。抽象を、単に視覚的な実験として捉えるのではなく、物質的・運動的な観点で捉える。また、日本での抽象美術の動きがヨーロッパの動向の後追いではなく、同時並行的なものだったことを論じている。 色々なものが次々とリンクしていく…

岡田進之介「悲劇を観てなぜ悲しむべきなのか ─フィクション鑑賞における適切な情動的反応について」

https://www.jstage.jst.go.jp/article/bigaku/75/1/75_49/_pdf/-char/ja 『美学』264 号(2024年7月) 去年のものだが、最近読んだ(刊行を知ったタイミングだとまだオンラインで公開されていなかった気がする。待っているうちに忘れていて、最近オンライン…

『ソウルの春』

1979年12月12日に韓国で起きた粛軍クーデターを題材とした映画 以前、『KCIA 南山の部長たち』 - logical cypher scape2を見て、次は『ソウルの春』を見るぞ、と思っていたのだが、気付いたら半年たっていた。プライム入りしたので、これはよい機会と思って…

ショクーフェ・アーザル『スモモの木の啓示』(堤幸・訳)

イラクの次はイラン、ということで、イラン革命によって翻弄された家族を描いた作品を読んだ。 白水社エクス・リブリス 本作は長編だが、ハサン・ブラーシム『死体展覧会』(藤井光・訳) - logical cypher scape2と同様、奇想というか非現実的な描かれ方を…

『美術手帖2025年4月号』(特集ヒルマ・アフ・クリント)

「ヒルマ・アフ・クリント」展 - logical cypher scape2で見てきたけど、もう少し解説とかを読もうかと思い。美術手帖 2025年 04月号 [雑誌]作者:美術手帖編集部カルチュア・コンビニエンス・クラブAmazon 代表作 徹底解説 中島水緖、高嶋晋一 抽象絵画のデ…

ハサン・ブラーシム『死体展覧会』(藤井光・訳)

イラク人亡命作家による14篇からなる短編集 白水社エクス・リブリス イラクでの戦争や誘拐、自爆テロなどの暴力が主題となりつつも、それが、超現実的・SF的な設定やフレーバーとともに語られる。 版元紹介文では「幻想的に描き出す」と書かれている。海外文…