Transformation越境から生まれるアート展ほか

ブリヂストン美術館がアーティゾン美術館になってから初めて行ってきた!
エントランスからのエスカレータに以前の面影が少しあるような気がしたが、とにかく、全面ガラスに吹き抜けドン! と大きく印象が変わっていた。
今回の目当ては「Transformation越境から生まれるアート」でのザオ・ウーキーだったが、同時開催されていた他の展覧会もシームレスにつながっていたので、あわせて見た。

写真と絵画−セザンヌより 柴田敏雄鈴木理策

タイトルに「セザンヌより」とあるが、セザンヌだけでなくクールベ、モネ、カンディンスキー、ボナール、雪舟などの絵画作品に対して、柴田と鈴木2人の写真家がそれぞれ作品を撮ってくるという企画

  • 《水鏡14》

以前、「モネそれからの100年」展 - logical cypher scape2で見たことがあった
鈴木作品

  • 《水鏡17》

リヒターをみたあとで写真作品を見ると、ボケの使い方に目がいく
鈴木作品

  • 《White19》

クールベ作品に対して
誰も何もいない雪原を撮影した作品
鈴木作品

  • サント=ヴィクトワール山

セザンヌで有名だが、そういえば実際にどのような山なのか見た記憶があまりない
おお、こういう山だったのかーという感想
鈴木作品

柴田作品

こういう具象画を描いていたのか、という感想

柴田作品
作業用の階段を撮影したもので、階段のジグザグした感じが、遠目に抽象絵画っぽくも見えて面白い

  • 《知覚の感光板18》

鈴木作品
ピンボケした葉が最前面にあって、ピントのあった奥側の風景を隠してしまっているが、少し離れて見ると、そのピンボケした葉にも手前に写っているものと少し奥に写っているものがあって「レイヤーだなー」という感想。

  • 《りんご21》

これもピンボケがうまく使われている。連作。
鈴木作品

彫刻作品が置いてあり、その横に、それの側面を描いた絵があり、正面に鏡があるという展示のされ方がしていて、面白かった。

Transformation越境から生まれるアート

ルノワール、藤島・藤田・小杉、クレー、ザオ・ウーキーの4章構成の展覧会
美術館所蔵の作品を、越境というテーマでみせる企画だが、パウル・クレーが新しくコレクションに入ってきたというのもあるようだ。

第1章 歴史に学ぶ―ピエール=オーギュスト・ルノワール

この当時の資料がいくつか展示されていて、その中でブラン編『全流派画人伝』という本がなかなかすごかった。930人の画家について紹介されている本
ルノワールをはじめ当時の画家が、美術館での模写で絵の修行していたって話で、美術館の模写を誰がいつ申請したかという一覧表とかもあった

第2章 西欧を経験する―藤島武二藤田嗣治小杉未醒
  • 藤島《黒扇》

白い服に黒い扇を持った女性の絵

  • 藤島《東洋振り》

イタリアのフランチェスカによる横顔の肖像画に影響を受け、日本人女性に中国服を着せて、横顔を描いたもの。背景には漢字の看板も描かれている。

  • 藤島《屋島よりの遠望》

このセクションで一番よかった(単に、水平線や地平線を描いた風景画が好きなだけかも)。
海の向こうにぼんやりと見える島、というのもよいが、左の方に、白い点のように船が描き込まれているのが、画面を引き締めている*1


基本的に美術館所蔵作品の展示なので、藤田作品は見覚えのあるものが多かった気がする。元々、藤田作品はあまり好みではなくて、なので近代美術館の方で戦争画を見て衝撃を受けた(ゲルハルト・リヒター展 - logical cypher scape2)のだが、それ以外のはやはり好みではないんだよなー
藤田と小杉は同年に渡仏している。藤田は最終的にフランスに帰化する程になるわけだが、小杉の方はヨーロッパがあわなかったらしく予定より早く帰国している。小杉の方は、古事記を題材にとった作品を描いていくことになる。

第3章 移りゆくイメージ―パウル・クレー
  • 《小さな抽象的―建築的油彩(黄色と青色の球形のある)》とドローネー《街の窓》

このセクションでは、まずクレーに対する青騎士への影響から説明されている。
青騎士展に出品していたキュビスムの画家ドローネーの《街の窓》と、クレーの《小さな抽象的―建築的油彩(黄色と青色の球形のある)》が並んで展示されている。

  • ピカビア《アニメーション》

ピカビアっていつもどういう画家だったか分からなくなる(単に自分が記憶できていないだけ、という話)
アニメーションというタイトルだが、もちろんアニメ作品ではなくて、波のような形状の描かれた抽象絵画

第4章 東西を横断する―ザオ・ウーキー

ザオ・ウーキーは以前、「色を見る、色を楽しむ――ルドンの『夢想』、マティスの『ジャズ』……」ブリジストン美術館 - logical cypher scape2での追悼展で初めて見て以来好きで、その後、ブリヂストン美術館「ベスト・オブ・ザ・ベスト」 - logical cypher scape2でも見ていた。
今回の展覧会は、完全にザオ・ウーキー目当てで来た。

  • 《無題(風景)》《海岸》《無題(Sep.50)》

1951年クレーの絵を見て強い影響をうける。これら3作品はいずれもクレーからの影響下で描かれた作品。クレーの記号的な線の描き方を引き継いでいる。

  • 《水に沈んだ都市》1954

クレーの影響を脱したとされる作品。クレー風の記号的な線は描かれつつも、その上から青い絵の具が塗られて平面的になっている、というようなことが説明として付されていた。
ザオは、1957年にニューヨークへ渡る

  • 《15.01.61》

ザオ・ウーキー作品は、日付がタイトルになっている一連の抽象絵画作品が非常に好きで、今回それについては5作が展示されていた。
これだけ一気にザオ・ウーキー作品を見たのは初めてだったので、非常に嬉しかった。
さて、《15.01.61》は、画面の中央に無数の線が描かれているが、クレー的な記号っぽい線ではなく筆触を感じさせるような線で、全体的にもやっと霧のかかったような雰囲気になっていて、それがどことなくイリュージョンとなっている。
《水に沈んだ都市》では、クレーの影響を脱して平面性が強調された絵になった的な解説がされていたけれど、ザオ・ウーキーの絵は、一方では絵の具の物質性が残り平面的なところがあるけれど、一方で、何らかの奥行き感・空間性を感じさせるもので、その両義性が魅力なのではないかと思う。

  • 《10.06.75》

黒とオレンジで描かれた作品

  • 《24.02.70》

まるで入り江ないし峡谷の風景を描いているかのような作品。
サイズも大きく見応えがある。
画面中央部の白い絵の具がかなり盛り上がっていたりする

  • 《10.03.76》

縦長の作品
隅のボケ感、色の混ざり具合がよい感じ

  • 《07.06.85》

全体的に青っぽい作品で、自分が過去にザオ作品を見た2回でも展示されていた奴で、おそらく代表作なのだろう。
個人的にもかなり好き。

  • ジョアン・ミッチェル《ブルー・ミシガン》

並んで展示されていた。アクション・ペインティングな作風の作品
筆のタッチなどについて、広い意味ではザオ・ウーキーとも似ているところがあるかもしれないが、同じ抽象絵画といっても、受ける印象はかなり違う。
ザオの場合、画面全体を青なり茶色なりなんなりの色で塗っていることが多く、また既に述べた通り、どこか奥行き感がある。一方、ミッチェルのこの作品は、白いキャンバスの上に筆を走らせたというのがありありと分かる作品となっている。

  • マーク・トビー《傷ついた潮流》

グレーに赤や青の線

  • アンリ・ミショー

詩人・画家であり、ザオの理解者でメンター的な存在だったという
高齢になったザオに対して、墨で絵を描くことを薦めたのがミショーだったらしい。

石橋財団コレクション選

こちらは流し見
ピカソとミロの特集が組まれていた。