2024年の振り返りをするにあたって、2023年まとめ - logical cypher scape2を読み直していた。
2023年は、しばらく行けていなかった美術展や映画館にまた行くことのできた年として記録されていて、美術展3つ、映画館で4本の映画を見に行っていた。
対して、2024年は、美術展1つ、映画館で見た映画は1本とやや退潮した。
一方で、2023年の年末に「音楽イベントはまだしばらく行けないと思う」と書いていたが、2024年は8月にナナシスのライブに行くことができた(Tokyo 7th Sisters LIVE DIVE TO YOUR SKY!! day2 - プリズムの煌めきの向こう側へ)。
また、12月には文学フリマにも行ってきた。実に6年半ぶりの(一般)参加だった。
ブログの記事数を見ると、100記事を超えており、2020年以降2桁だった記事数が、3桁台に復活した。
読んだ本は、正確には数えていないが、大体70冊くらい。
今年は新書とか小説とかで冊数を稼いだ気がする。比較的時間のかかるものもいくつか読んだはずなので、結構読むことができたな、と思う。
達成状況?
2023年の振り返り記事では、自分にしては珍しく、というか初めての試みとして「来年に向けて」という項目を立てていた。
達成状況を確認してみる。
- 小説
- 海外文学:2023年に読み損ねた本を拾う
まあまあ達成した。
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- SF読む比重を増やす
達成した。
- 美学・美術・表象文化論
- 直近で、美術系で2冊くらい読みたい本がある
ここで念頭に挙げていた2冊のうち1冊は読んだ。
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- 表象文化論というかメディア論というかそっち系で
未達成
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- 恐竜表象・恐竜文化とか科学表象とかもちょっと拾えたらいい
うーん、少し読んだと言えば読んだが、昨年末に想定していたものではない気がする。
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- 英語の本
もともと英語を読むことを目標に掲げていなかったが、少し読んだ(本の中の章を1つと論文いくつか。本1冊は読めていない)。
もともと、上で挙げた英語の本はゴンブリッチを念頭に置いていたが、ゴンブリッチは手つかず。しかし、ゴンブリッチについて扱っている清塚本は読んだ。
- 哲学・科学哲学
- 実在論とか科学表象とか科学哲学関係で読みたい本が数冊
これはほぼ未達成。『客観性』くらいか。
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- ぽろぽろ単発的に読みたい本はある
未達成
- 世界史
これは十分達成
むしろ、今年の1~7月はほとんどこれだった。
- 自然科学
- 進化生物学あたりで読みたい本がぽろぽろあって、集中的に読めたら読みたい
未達成
ここでいうセール中に買った本が正確にどれだったか忘れてしまったが、おそらく4冊中2冊は読んだ。
こういうのがあると、色々と自分の状況が見れるし、読んでいくときも「ここが進展したぞ」などと確認できるのは面白いが、一方で、全然進展していないことも可視化されるので、そこは辛い。
まあ、達成したかどうかはあまり重要ではない。
読みたい本というのは、次から次へと無秩序に増えていって収集がつかなくなるので、「じゃあ次に何を読むのか」という時の指針である。
計画をガチガチに立ててそれに縛られてしまうのもつまらないとは思うが、気が移ろいやすく「あれも読みたいし、これも読みたい、どれにするか決められない」となりやすいので、ルートを決めて読んでいくのもそれはそれで楽しかったりする。
特に今年は、上半期(1~7月)は、かなり方向性を絞って本を読んでいた。
その反動か、下半期は、迷走気味な読書になった。
方向性を定めて本を読んでいく方が充実感はある。
しかし、他のジャンルの本も読みたい、という気持ちがたまってくる。
世界史
世紀転換期・戦間期読書まとめ - logical cypher scape2
これについては、上にまとめたものに尽きる
これまでも、〇〇月間みたいにして、特定のテーマについて読んだりしたことはあったけど、半年間同じテーマについて読むのは初めてだった。
SF
今年は、新刊と古典とを織り交ぜて読むことができた。
新刊といっても、去年読めていなかった分とかなので、今年の新刊はあまり手を出せていない。今年、国内SFで結構読みたい本が増えているので、これは来年の課題としたい。
新刊系
新刊系だと、この2冊が特によかったかな、と思う。
古典系
『20世紀SF〈3〉1960年代・砂の檻』 - logical cypher scape2を読んだのを機に、ちょっと古いものも読んでみようかなと思い立った。
そういうのに手を出し始めると、読みたいものがどんどん増えていくわけで、読みたいけど読めてない本はまだまだあるが
この2冊、もともと超有名作品だけど、かなり面白かった。
ほかには以下の通り。
ブルース・スターリング『蝉の女王』(小川隆・訳) - logical cypher scape2
ラリイ・ニーヴン『無常の月 ザ・ベスト・オブ・ラリイ・ニーヴン』(小隅黎・伊藤典夫訳) - logical cypher scape2
グレッグ・ベア『鏖戦/凍月』 - logical cypher scape2
ブライアン・オールディス『地球の長い午後』(伊藤典夫・訳) - logical cypher scape2
その他リスト
上記にあげた以外で読んだSF作品(若干SFでないものも含む)
『SFマガジン2023年12月号』 - logical cypher scape2
上田早夕里『ヘーゼルの密書』 - logical cypher scape2
ルーシャス・シェパード『美しき血(竜のグリオールシリーズ)』 - logical cypher scape2
ルーシャス・シェパード『タボリンの鱗 竜のグリオールシリーズ短編集』 - logical cypher scape2
キム・スタンリー・ロビンスン『未来省』 - logical cypher scape2
『星、はるか遠く 宇宙探査SF傑作選』(中村融編) - logical cypher scape2
ジェフリー・フォード『最後の三角形 ジェフリー・フォード短篇傑作選』(谷垣暁美・訳) - logical cypher scape2
津久井五月「われらアルカディアにありき」「ラスト・サパー・アンド・ファースト・サマー」「川田さんの遺書」 - logical cypher scape2
ラヴィ・ティドハー『ロボットの夢の都市』 - logical cypher scape2
『Kaguya Planet vol.2 パレスチナ』 - logical cypher scape2
『SFマガジン2024年12月号』 - logical cypher scape2
春暮康一「滅亡に至る病」 - logical cypher scape2
『日本SFの臨界点 中井紀夫 山の上の交響楽』(伴名練編) - logical cypher scape2
ブライアン・オールディス『地球の長い午後』(伊藤典夫・訳) - logical cypher scape2
アーカイブ騎士団『明治スチームパンク小説集』『写真SF小説集』(文学フリマ東京39) - logical cypher scape2
文学
海外
スティーヴン・ミルハウザー『夜の声』(柴田元幸・訳) - logical cypher scape2
フリオ・コルタサル『八面体』 - logical cypher scape2
ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』(鼓直・訳) - logical cypher scape2
ガッサーン・カナファーニー『ハイファに戻って/太陽の男たち』(黒田寿郎・奴田原睦明・訳) - logical cypher scape2
今年はSF中心に読んでいたので、文学は少なめ
『百年の孤独』と『ハイファに戻って』を読めたので、海外文学についてはわりと満足だが、来年はアジア系に手を出しつつ、引き続き色々読んでいきたいと思っている。
国内
磯崎憲一郎『日本蒙昧前史』 - logical cypher scape2
佐藤亜紀『ミノタウロス』(再読) - logical cypher scape2
松永K三蔵「バリ山行」(『文芸春秋』2024年9月号) - logical cypher scape2
『文学+』4号 - logical cypher scape2
国内についてほとんど読んでいない感じ
今年は、優先度も下げていたのでまあこんなもんかな、と。
以前、最近読んだ文学 - logical cypher scape2にまとめたけど、戦後文学というか、第三の新人世代前後の短編小説などをちょいちょい読む、ということをしたけれど、今後、もう少し時代を遡っていこうかなあと思っている。
一方、現代の作品もまあ読みたい。
美学・美術・文化論・物語論・フィクション論
美術
今年はこの2冊を読めたのがよかった。
あとは、デ・キリコ展 - logical cypher scape2に行き、長尾天『もっと知りたいデ・キリコ』 - logical cypher scape2を読んだ。
全部、上半期だな。
描写の哲学
これも読めてよかった本
大変、勉強になった。
美学その他
応用哲学会2024年大会 - logical cypher scape2
銭さんのジャンル論面白かったです。博論書籍化希望~と外野がてきとーに言ってみる
物語論・フィクション論
想像のobjectと想像のvividness - logical cypher scape2
小池隆太のマンガ・アニメに関わる物語論関係の論考を読んでのよしなしごと - logical cypher scape2
『ユリイカ2023年11月臨時増刊号 総特集=J・R・R・トールキン』 - logical cypher scape2
最近、フィクションの哲学をやっている人として、岡田進之介さん、気になっている。
また、フィクションの哲学というよりも物語論をもう少しちゃんと勉強しないとなーという気持ちも出てきているが、手つかず。
文化論
これもよい本でした。
科学表象・科学哲学・動物の美学
科学表象
今年の下半期は、これを読めたのが個人的な大きな出来事
ずっと読みたい本としてあがっていたのだが、どうにか年内に読むことができた。
こういう大著を読めてよかった。
科学史の本
応用哲学会2024年大会 - logical cypher scape2
これ、記事タイトルが「応用哲学会」になってるけど、最後に応用哲学会と全然関係なく、橋本毅彦のサーベイ論文についての感想も書いてて、この論文の中でも『客観性』が触れられている。
恐竜・動物
Allen A. Debus”Rex Battles”(”Prehistoric Monsters: The Real and Imagined Creatures of the Past That We Love to Fear”より) - logical cypher scape2
Michel-Antoine Xhignesse "Imagining Dinosaurs" - logical cypher scape2
Michel-Antoine Xhignesse"Distant Dinosaurs and the Aesthetics of Remote Art" - logical cypher scape2
Thomas Leddy"Aesthetization, Artification, and Aquariums" - logical cypher scape2
久しぶりに英語読むのが復活。10月頃。
1つ目は恐竜表象についての本の中の章を1つ。
それから、恐竜表象についての美学の論文が出ていることを知ったので、2本読んだ。確かこの論文は、村山さんがXで紹介していたのを見て知ったのだと思う。
その勢いにのって、難波さんがブログで紹介していた動物の美学についての論文。
そこで紹介されていた他の論文も引き続き読もうと思っていたのだが、力尽きてしまった。英語読む気力が続かない。
科学哲学・心の哲学
田中泉吏・鈴木大地・太田紘史『意識と目的の科学哲学』 - logical cypher scape2
小草泰・新川拓哉「意識をめぐる新たな生物学的自然主義の可能性」 - logical cypher scape2
哲学の本を読むのは、なにげに相当久しぶりだったような気がするのだが、意識の研究については、去年も一昨年も年に1,2冊程度は読んでいて、何というか「まとめて勉強するぞ」という程ではないんだけど、自分にとって関心が継続的に維持されている分野なんだな、と思う。
自然科学
恐竜・古生物
『日経サイエンス2024年2月号』 - logical cypher scape2
河部壮一郎『デジタル時代の恐竜学』 - logical cypher scape2
小林快次「恐竜学入門」(カルチャーラジオ科学と人間) - logical cypher scape2
今年読んだ中では泉本が面白かったかなあ。
生物学
中屋敷均『遺伝子とは何か』 - logical cypher scape2
シュレーディンガー『生命とは何か』(岡小天・鎮目恭夫訳) - logical cypher scape2
今年、あんまり読めていないジャンル。
分子生物学系から2冊読んでるけど、進化生物学系の本を結構ためてる。
雑誌
『Newton2024年6月号』 - logical cypher scape2
「ビートを感じる脳」(『日経サイエンス2024年11月号』) - logical cypher scape2
『科学』2024年6月号・10月号 - logical cypher scape2
『Newton2024年12月号』 - logical cypher scape2
Newton2025年1月号 - logical cypher scape2
『日経サイエンス 2025年1月特大号』 - logical cypher scape2
最後の日経サイエンス1月号は、植物画の話があって科学表象話でもある。
宇宙
伊勢田哲治・神崎宣次・呉羽真編著『宇宙倫理学』 - logical cypher scape2
向井千秋監修・東京理科大学スペース・コロニー研究センター編著『スペース・コロニー 宇宙で暮らす方法』 - logical cypher scape2
『宇宙倫理学』を1月、『スペース・コロニー』を5月、『宇宙開発の思想史』を9月に読んでおり、つまりバラバラに読んだのであって、何かテーマがあって読んだわけではないんだけど、何となく宇宙科学ではなく宇宙開発ってどうよ、という方向で本を読んでいる感じだな。
映画
ジョン・ウィックシリーズ - logical cypher scape2
ガメラ2 レギオン襲来 - logical cypher scape2
『デューン砂漠の惑星PART2』 - logical cypher scape2
『シビル・ウォー』 - logical cypher scape2
『KCIA 南山の部長たち』 - logical cypher scape2
劇場で見たのは『シビル・ウォー』、面白かった。
『KCIA』は、今後『ソウルの春』『タクシー運転手』を見るための前哨戦みたいな位置づけで見た。
海外ドラマ
一時期、いくつか見てた。
『ペリフェラル』 - プリズムの煌めきの向こう側へ
『バビロン・ベルリン』シーズン1・『フォー・オール・マンカインド』シーズン1 - プリズムの煌めきの向こう側へ
フォー・オール・マンカインド シーズン2 - プリズムの煌めきの向こう側へ
『物語の外の虚構へ』反応
大木 志門 (Shimon Oki) - 「文豪とアルケミスト」から考える現代の「文学散歩」―コンテンツツーリズムとフィクション論の観点から - 論文 - researchmap
エゴサしてたら見つけた。
論文が出てるのは3月頃だけど、見つけたのは12月
筆者は、researchmapによると、日本近現代文学(徳田秋聲・水上勉)を専門としている東海大の教授で、なんか文アル関係のこともやっている、みたい?(7月に文アルとタイアップした石川啄木作品集の編者になっている)
この論文は、コンテンツツーリズムからということで、岡本健→谷川嘉浩→シノハラユウキという感じで、コンテンツツーリズムとフィクション・想像の関係についてサーベイしてくれていて、さらに、フィクションの哲学つながりで石田尚子論文にも触れられている。
あと、文アルはもちろん元はゲームなので、ゲームについての言及もしていて、その中で松永本のことも引用しており、文学の論文なのだが、分析美学の引用がわりと多い論文となっている。
『物語の外の虚構へ』については以下をどうぞ
来年に向けて
去年にならって今年も……とはならないのだった。
去年に書いたやつで未達成のものを読みつつ、しかし、改めて読みたいものの優先度は整理しておきたい。
っていうか、来年は40になるな……
何か新しい趣味を作りたいという気持ちが少しありつつ、そんな時間捻出できるのか感もありつつ。
というわけで、今年はこんな感じでした。
また来年もよろしくお願いします。