松永K三蔵「バリ山行」(『文芸春秋』2024年9月号)

去年に引き続き、実家に帰ったら置いてあったので読んだ(『文藝春秋2023年9月号』(市川沙央「ハンチバック」ほか) - logical cypher scape2
今回、読んだという記録のみ


芥川賞選評と受賞者インタビューは双方読んだ
サンショウウオの四十九日」の方は未読
選評では、山田詠美栗原裕一郎にたいしてゴシップめいたこと書くなら実名書けや、みたいなこと書いてたことくらいしか印象に残ってない


「バリ山行」はやたらリーダビリティが高いと評されていて、読んでみたら確かにリーダビリティが高かった。
読みやすくてわりと面白いとは思ったけど、あんまり芥川賞っぽくもないかな、とも思った。芥川賞っぽいってのもよく分からんけど。
土建系中小企業の営業マンお仕事小説であり、登山小説
登山小説と言っても、出てくるのは六甲山系の低山だけ、というのは面白いといえば面白いのかも
タイトルにあるバリ山行というのは、バリエーションのことで、登山道以外の道を登ることを指すらしい。無論、お行儀のよくない趣味ではあるのだが、バリこそ本来の登山と考える人もいる、と。
会社の方針に従うか否かということと、バリをするか否かということが重ね合わされている。
妻鹿(めが)さんは、ある種のヒーローなんだろうが(ダメな奴っぽくて実はすごい奴的な)、しかし、初心者に毛が生えた程度の主人公を、主人公側から連れて行ってほしいと言ったとはいえ、薮の中へとガシガシ連れ込むのは、ただのやばい奴よな。
しかし、ちょっと前に旦那に趣味の登山をやめてもらう方法のコメントとかで、登山趣味は危ない目に遭ってもやめられなくなるみたいなのを読んだせいで、登山趣味者へのバイアスがかかっていたかもしれない。