昨年末に以下のようなことを書いた。
『軍靴のバルツァー』からの『リラと戦禍の風』、あるいはキュビスム展の流れで、第一次世界大戦前後が気になり始めている。
というか、もともと戦間期の文化史は興味があって、なので大正史も読んでて面白かったなあというのがあって、もう少しちゃんと勉強しようかなと思った。
しかし、そう思って、ググり始めると気になる本が山のように出てきて「ええと、どうすんのよ、これ」とも思っている。
ベル・エポックから1920年代、パリ、ウィーン、ベルリンないしヴァイマル共和国、ニューヨーク、ロンドンあたりの、美術・芸術、大衆文化、社会主義、哲学・思想についての概観をつかむ、というか。
とりあえず、新書・文庫系の本をピックアップしている。
2023年まとめ - logical cypher scape2
一段落ついてきたかなあと思うので、まとめ記事とする。
全体(第一次大戦)
最後の『デザインの20世紀』は当初アメリカ枠としてリストアップしていたんだけど、読んでみたら全体枠だった。いやまあタイトルからしてそりゃそうだ、というところだけど。
あと、全くブログに記録とってないけど、映画『西部戦線異状なし』(1930)を見た。
リストアップしたけど未読
第一次世界大戦 忘れられた戦争 (講談社学術文庫)
戦間期国際政治史 (岩波現代文庫)
後者の『戦間期国際政治史』はその分野の古典っぽいし、同じ作者の『スペイン戦争』がよかったので、いずれ読みたい。
フランス(パリ)
バレエ・リュスは半分くらいロシアの話でもあるだろ、と言われればそうなんだけど、まあパリで活動してパリの美術との関係も深いので、パリ枠としておこう。
リストアップしたけど未読
祝宴の時代:ベル・エポックと「アヴァンギャルド」の誕生
失われた世代、パリの日々: 一九二〇年代の芸術家たち (20世紀メモリアル)
ずばり1920年代のパリ! みたいな本を読んでいなかったがしかし、パリの話は他の本とかでもちょいちょい出てきたからまあいいかなあ、みたいな気分になっている。
ただ、ガートルード・スタインとかペギー・グッゲンハイムとかの女性パトロンのことが気になっている。
ドイツ・ワイマル
ワイマル共和国については最近NHKの映像の世紀でもやっていたようで(見れてないけど)。
何となく最近の日本の政治状況が似ているように感じないでもないでもない
あと、『バビロン・ベルリン』というテレビドラマを少し見たりした。
『バビロン・ベルリン』シーズン1・『フォー・オール・マンカインド』シーズン1 - プリズムの煌めきの向こう側へ
リストアップしたけど未読
ベルリンのカフェ: 黄金の一九二〇年代
ユダヤ人 最後の楽園――ワイマール共和国の光と影 (講談社現代新書 1937)
ワイマル文化を生きた人びと
政治的暴力の共和国―ワイマル時代における街頭・酒場とナチズム―
もうちょい文化面の話は気になったりもしているけれど
フリッツ・ラング作品も見たいような
オーストリア(ウィーン)
下の『ウィーン都市の近代』は2018年に読んだもので、今回読んだわけではないが、テーマ的にはかなり近い
あとで「哲学・思想」枠の方であげるが『マッハとニーチェ』もわりとウィーンの話多め。
そういえば、ウィーンって色々なウィーン派があるよな、というメモ
- 経済学(オーストリア学派)
カール・メンガーが1871年『国民経済学原理』刊行。シューペンターやハイエクが戦間期。ハイエク周辺は「新オーストリア学派」
- 法学
ハンス・ケルゼン(ユダヤ系):オーストリア憲法起草者。マルクス主義批判。シュミット批判
- 美術史
リーグル
- 音楽(新ウィーン楽派)
リストアップしたけど未読
世紀末ウィーンのユダヤ人: 1867-1938 (人間科学叢書 43)
カール・クラウス 闇にひとつ炬火あり (講談社学術文庫)
カール・クラウスと危機のオーストリア
『世紀末ウィーンのユダヤ人』は今回のためにリストアップしたというより、かなり前から読みたいなと思っているのだけど、結局今回も読み損ねた。同書については、圀府寺司『ユダヤ人と近代美術』 - logical cypher scape2でも少し触れられている。
あと、この時代のウィーンというとカール・クラウスかなと思ってリストアップしたけど、さてどうするか
アメリカ
『大衆消費社会の登場』がタイトル通り大衆消費社会についてであって、文学・美術・映画・音楽などがあまり分からなかった。
そういえば、過去に読んできた本の中で当時のアメリカ文化について触れていたものはあったなあと思って、改めてサルベージしてみたのが次の記事である。
でもって『オンリー・イエスタデイ』もどちらかといえば社会史であって、時折文学作品等への言及はあるものの、というところだった。
まあ、戦間期のアメリカというものを概観するには、大衆がキーワードだろうから、まずはこういうところから読んでいく方がいいかなとは思うが。
それはそれとして「ジャズ・エイジ」なんだしジャズの歴史も気になるし、フィッツジェラルドやヘミングウェイの時代から文学史も気になるし、というところではある。美術(あるいは哲学など)については、アメリカが中心地になるのは第二次大戦後のことなので、戦間期については目立たないけれども、しかし気にならないわけではない。
リストアップしたけど未読
アメリカ1920年代: ロ-リング・トウェンティ-ズの光と影
遊園地と都市文学: アメリカン・メトロポリスのモダニティ
どちらもがっつり専門書なので、今回手を出すのに怯んだが、より文化史っぽい内容ではありそう。
あと、美術展の図録として
アメリカの機械時代: 1918―1941
アメリカの時代 : 1920-30年代ニューヨークの夢と未来
これらは「マシン・エイジ」についての本を調べていたときに見かけた。
それから、『グレート・ギャッツビー』の映画を見たいなと思いつつ見れていない。
イギリス
読んだ順に並べたけど、扱っている時代で考えると逆順
リストアップしたけど未読
ブルームズベリー・グループ―二十世紀イギリス文化の知的良心 (1972年) (グループの社会史〈2〉)
これは、クエンティン・ベルによる回想録。ブルームズベリー・グループについては既に上記の新書を読んだので、まあこれはリストアップしただけで読まなくてもいいかな、と。
イギリスだとあと、ハクスリー兄弟について主題的に扱っている本があったら読んでみたい。
あと、ヴァージニア・ウルフ作品か……。
イタリア
リストアップしたけど未読
スペイン
当初、スペインは予定になかったのだけど、途中で加えた。
ロシア
リストアップしたけど未読
ロシア・アヴァンギャルド ――未完の芸術革命 (ちくま学芸文庫)
ロシア・アヴァンギャルド (岩波新書 新赤版 450)
ロシア革命史 社会思想史的研究 (角川ソフィア文庫)
当初(昨年末)に本をリストアップした時、ロシア関係は(バレエ・リュスを除けば)全然あげていなかった。何故かこうロシアのことがするっと頭から抜けていた。
しかし、やはりこの時代についてロシア抜きはおかしいのでは、と思い至って、いくつか追加でリストに入れた。が、後になってからリストアップしたので、結局手が伸びてない。
哲学・思想
なんだかんだで数が多くなった哲学・思想枠
まあ『戦争の世紀』とか『年表で読む』とかは、全体枠といっても差し支えないようなもので、必ずしも哲学オンリーの本ではないが。
このあたりの哲学は「まあなんとなく名前とかは知ってるんだけど、理解は曖昧~」みたいなところなので、改めてこうやって読むと結構楽しい。
中公の『哲学の歴史』は10年以上前から「いつか読みたい」と思っていた本なので、これを機会に手に取ってみた。
論文
「戦間期ドイツの保守革命論における社会主義」
https://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/hermes/ir/re/17910/kenkyu0290400650.pdf
『西洋の没落』のシュペングラーや経済学者ゾンバルトの国家社会主義について
同時代の西欧マルクス主義と同じような資本主義批判を展開しつつ、マルクス主義ではなくプロイセン社会主義を主唱。個人主義・経済主義ではなく全体主義・政治主義を目指す。
同時代の日本とも似ているといえば似ている
「ラスキンとモリス:二人の理論と実践の継承と発展」https://nfu.repo.nii.ac.jp/records/1722
「ラスキンの藝術経済論」伊藤邦武https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/126654/1/ItoSpecial.pdf
リストアップしたけど未読
ウィリアム・モリスのマルクス主義 アーツ&クラフツ運動の源流 (平凡社新書)
経済学の哲学 19世紀経済思想とラスキン (中公新書)
哲学の歴史 11 20世紀 2
ラスキンとなるともうちょっと時代的にはズレるなあと思うのだが、モリスやラスキンが社会主義者だったというの全然知らなくて、ちょっと気になった。
ラスキンからモリスへの影響があり、モリスはバーナード・ショーとのつながりがあるみたい。
哲学の歴史11は、世紀転換期・戦間期についての本というより分析哲学枠についての本ということでいずれ読みたい気がするが、マッハなどについても書かれているので、当然関わりはある。
その他
戦間期には他に一体何があったかなあというメモ
古生物学・考古学関係
- 恐竜
1902年 ティラノサウルス記載
19世紀末から1930年代 ノプシャ男爵の恐竜研究
1922年~1930年 ロイ・チャップマン・アンドリュースのモンゴル探検
1920年代 お菓子のおまけに古生物トレーディングカード
1920~1930年代 チャールズ・ナイト活躍
1925年 『ロストワールド』
1933年 『キングコング』
1933年 シカゴ万博 シンクレア石油による恐竜展示
以前、戦間期アメリカ文化(過去のブログ記事からなど) - logical cypher scape2で「恐竜表象というと、1851年のロンドン万博が嚆矢だろうが、海野弘『万国博覧会の二十世紀』 - logical cypher scape2を読む限り、20世紀のアメリカ開催の万博では、恐竜がメインコンテンツだった気配はない。」と書いてしまったのだが、全然そんなことはなかった。
1933年のシカゴ万博、1964年のニューヨーク万博において、シンクレア石油が恐竜展示を行っている。
シカゴ万博でシンクレア石油が恐竜展示を行い、図録?を販売していてお土産として買われていたらしい(今読んでいる別の本で知った。この本のことはいずれ)。
シンクレア石油について全然知らなかったので、とりあえずググってみた。
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- シンクレア石油について
en.wikipedia.org
f-favorite.net
(大体、こういうこと調べようとすると、田村さんのページが出てくる)
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- シカゴ万博(1933)の展示について
tenshu53.exblog.jp
tenshu53.exblog.jp
https://robot.watch.impress.co.jp/cda/parts/image_for_link/51865-1584-17-2.html
一番下のは、この動画のページだけを見つけてしまったので、Robot Watchでの元記事が分からないのだけど、1933年に動く恐竜ロボットが展示されていた、という動画
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- ニューヨーク万博(1964)の展示について
ナイトとジョーナスのステゴサウルス: カズやんの恐竜模型徒然草
- ピエール・テイヤール・ド・シャルダン
1929年に北京原人発見報告をしている。
ちなみに、ヌースフィアの提唱は1922年。
ツタンカーメン王の墓が発見されたのが1922年のようだ。
ブログのカテゴリ
最近、ブログのカテゴリを大幅に増やした。
その際に「世紀転換期・戦間期」カテゴリを追加して、この時代に関連する記事はまとめて見れるようにした。
世紀転換期・戦間期 カテゴリーの記事一覧 - logical cypher scape2
この時代に興味関心を抱くきっかけは美術関係なので、あるいは、美術関係についての興味関心がほとんどこの時代に集中していることもあって、このカテゴリの過去記事の大半は美術関係である。
最近になって、戦前昭和・大正関係の歴史の本もいくつか読んだので、そのあたりも含まれている。