シュリック
今度、吉川浩満さんが編集担当で『シュリック教授殺害事件──ウィーン学団盛衰史』という本が出るらしい。
またどでかいのが出ます。ぜひご予約を。 #編集担当書 #晶文社
デイヴィッド・エドモンズ『シュリック教授殺害事件──ウィーン学団盛衰史』児玉聡+林和雄監訳、杉村文ほか訳、晶文社 https://amzn.to/4lHsYCA
現代英米哲学/分析哲学のルーツとなった20世紀最大の思想的ドラマを活写したノンフィクション大作
ナチス台頭期の不寛容と反知性主義を象徴する事件を軸に、現代英米哲学/分析哲学のルーツとなった20世紀最大の思想的ドラマを活写する。いまふたたび危機の時代を迎えた私たちに鋭く問いを投げかける圧巻の歴史ノンフィクション。
https://bsky.app/profile/clnmn.bsky.social/post/3lum3qzk2y22a
で、シュリックってどんな人だったっけと思って、『現代哲学基本論文集Ⅰ 』を眺めてた
- モーリッツ・シュリック「事実的ア・プリオリは存在するか」(竹尾治一郎訳)
タイトルにある「事実的ア・プリオリ」は、綜合的ア・プリオリのこと
まあ、んなもんはねー、っていう話であり、ア・プリオリな言明ってのはトートロジーだけだ、という内容の論文
ここでターゲットになっているのは、現象学で、現象学批判の一環としてなされているようである。
編者解説の中で、シュリック暗殺は1行ほど言及がある。発狂した弟子による凶行、と。
ポランニーとか
山本貴光さんが今日買った本の写真とかをよくポストしているのだが、その中で知ったのが、重田園江『シン・アナキズム』
カール・ポランニーとデヴィッド・グレーバーについて書いているらしい。グレーバーはなかなか手を出せていないので、ちょっと気になる。
ググると、元になった連載と思われるnote記事があり、何となくポランニーの章を読んだ。
連載 シン・アナキズム 第4章「ポランニーとグレーバー」(その1)|本がひらく
ここから、SNSでの自分のポスト
光文社古典新訳文庫でシュミット出たんだー
重田園江『シン・アナキズム』、ググったら元になったと思われるnoteの連載記事があって、眺めてた
カール・ポランニーの機能的社会主義
経済計算論争とか協同組合とか
https://bsky.app/profile/sakstyle.bsky.social/post/3lus7ruju3k26
ポランニーというと、マイケルの方のイメージが強いんだけど、カールも面白そう
経済計算論争って発端、ノイラートだったのか
ノイラートもノイラートで何か色々やってる人でよく分からんのよな
資本主義のオルタナティブなり外部なりを協同組合に見るのって、キム・スタンリー・ロビンスンもそうだよな
協同組合はいいぞって話は松尾匡とかでも読んだことある
わりとどうでもいい話だけど 、前述note読んでると、ポランニーの入門書として、若森みどりの本がよく言及されているのだけど、若桑みどりに度々空目して、その度に驚いてた
ところで、重田園江って何している人だっけと思ったら、ちくま新書の『ミシェル・フーコー』だしてる人で、ハッキング『偶然を飼い慣らす』の訳者の1人だった。
あと、自分で読んでるところだと現代思想2019年9月号 特集=倫理学の論点23 - logical cypher scape2で不妊治療と出生前診断の話、『現代思想2025年1月号 特集=ロスト・セオリー 絶滅した思想』 - logical cypher scape2で国家理性論の話があった。
カール・ポランニーは、ハンガリー生まれの経済学者、経済人類学も提唱していて、この点で後にグレーバーとつながったりつながらなかったりするようだ(?)(グレーバーがどれくらいポランニーに影響を受けたのかは不明なのだが、重田はこの2人に近いものを感じた、ということらしい。グレーバーの代表作の一つに『負債論』というのがあって、これがまあ経済人類学らしい。『負債論』は、貨幣の起源を交換ではなくて、贈与経済における貸借の記録に見ているらしい)
弟のマイケル・ポランニーは、暗黙知とか創発とかの人。仲の良い兄弟だったらしいが、後々、政治的な考え方の面では対立するようになったらしい。
妻のイロナ・ドゥチンスカは革命家
ポランニーは、ブダペストで育ったが、ウィーン→イギリス→アメリカと亡命・移住していっている。代表作である『大転換』は、1944年、アメリカ時代に書かれている。なお、イロナがアメリカの滞在許可が下りなかったため、2人はカナダで暮らしていたらしい。
この重田の連載では、ウィーン時代に書かれた機能的社会主義の話をしている、と。
ただ、ポランニーの論文には機能的社会主義についてあんまり詳細に書かれていないので、かなり重田なりの補足をした上で解説されている。
経済計算論争ってのがあって、社会主義におる中央指令経済の「計画」は、最適な資源配分の計算が可能か否か、という論争なのだけど、ポランニーは、可能か否かという軸とはずれた答えをしている、と。
市場資本主義でも中央指令型の社会主義でもない道として、機能的社会主義というものを擁護する話になっている、と。
で、これは、イギリスのギルド社会主義とか、「赤いウィーン」においてオーストロ・マルクス主義者といわれたオットー・バウアーやマックス・アドラーとかに由来する
でまあ、上述の通り、協同組合の話なのである。
で、過去に読んできた色々が色々と出てきたので、おおーっとなった、という話。
- ギルド社会主義
山口輝臣・福家崇洋編『思想史講義【戦前昭和篇】』 - logical cypher scape2で知った。
サンディカリズムよりは、国家の役割にも重きを置いている、と。
これとは別に、イギリスの社会主義っていうと、ロバート・オーウェンとかウィリアム・モリスとかジョン・ラスキンとかもいる。モリスやラスキンは、美術の文脈では知ってるけど、社会主義者としてのことはちょっと聞きかじっただけなので、いずれなんか本読みたいと思っている。
- 赤いウィーン
田口晃『ウィーン 都市の近代』 - logical cypher scape2
「「新しい人間」というスローガンの元となった思想家のマックス・アードラー」
- 協同組合論
松尾匡『ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼』 - logical cypher scape2
これは、ポランニーの話とはまたちょっと違う話をしているような気もするけれども
ロビンスンはキム・スタンリー・ロビンスン『ブルー・マーズ』上下 - logical cypher scape2やキム・スタンリー・ロビンスン『未来省』 - logical cypher scape2で協同組合によるポスト資本主義社会を描いている。
伊藤邦武・山内志朗・中島隆博・納富信留編著『世界哲学史7』 - logical cypher scape2の「第4章 マルクスの資本主義批判 佐々木隆治」によると、マルクスも「政治権力による変革ではなく、社会運動や協同組合による変革を考えていたらしい」。
松尾はあくまでも経済の話しかしていないような気がするが、ポランニー(あるいはコールやバウアー)は、政治と経済で一体化している話をしているように思える。議会制民主主義でも評議会(ソビエト・レーテ)による政治でもなく、というようにも見える(深読みしすぎかもしれない)。
ポランニーによると、協同組合を通じた価格決定で、環境問題のような外部性も組み込んだ価格にできるという話らしい。松尾がいうように、リスクを一番わかっている現場の人間が決定できるから、ということと繋がるかな、どうだろう。
ところで、素朴な疑問として、国際経済みたいな遠隔地同士を結ぶ価格決定とかってできるんだろうか。ハイエク的には、価格がシグナルになって市場を伝達するから色々情報伝達できるんだろうけど。ポランニーの機能的社会主義は、中央が決定するのではなく、現場に近い人たちが決めるという意味でハイエク的だけど、それの伝達メカニズムがあんまりよく分からない。
ところで、自分のブログ検索し直してたら、池田信夫『ハイエク知識社会の自由主義』 - logical cypher scape2がハイエクとマイケル・ポランニーとの類似性を指摘しているようだった。
- ノイラート
個人的には、ノイラートの船のイメージが一番強いんだけども
なんと、経済計算論争の発端となったのは、ノイラートの論文らしくて、もともと経済学・社会科学の人だったよう
また、田口晃『ウィーン 都市の近代』 - logical cypher scape2の「赤いウィーン」の中で「新設された「社会経済博物館」にオットー・ノイラートがいて、イソタイプというピクトグラムを作っている」ともある。
三中信宏もノイラートに言及していたような気がするけど、自分のブログ検索しても特になし。普通にググったら、ブックフェアでノイラートの著作『ISOTYPE[アイソタイプ]』を選書していた。
「『The Book of Circles — 円環大全』ブックフェア選書リスト」 - leeswijzer: een nieuwe leeszaal van dagboek
もちろん、ウィーン学団の一員の科学哲学者でもあり、『現代哲学基本論文集1』では、シュリック論文の次に「プロトコル言明」(竹尾治一郎訳)が収録されている。
『現代哲学基本論文集』の編者解説では、科学哲学者としてのノイラートの解説だけで、社会科学者としての解説はなかった。
Wikipeida見ると色々やっている人だなあって分かるけど、それゆえに、結局どういう人なんだ、というのが分からない。
で、冒頭の『シュリック教授殺害事件』では、まさに「赤いウィーンのノイラート」という章に一章さかれているようだ。現在公開されている第一章でもノイラートの言及がちょいちょいある。
【さきよみ】『シュリック教授殺害事件──ウィーン学団盛衰史』第一章【全文公開】|晶文社
