『ナショナルジオグラフィック 2025年2月号』

謎の「ほかの人類」を探す

取り上げられているトピック自体は、どこかで読んだことがあるものだったが、発見のエピソード中心で、そのあたりは知らない話が多かった。また、ビジュアルが多いので、その点はやはりよい。


甘寧省・チベット高原の洞窟で1980年に発見された下顎骨
DNAは残っていないが、2019年、張東菊はオランダのフリード・ウェルカーとともに、タンパク質分析により、デニソワ人だと同定した。
タンパク質で初期人類が同定された初めてのケース
デメターとラゾーニが発見した、ラオスコブラ洞窟の化石は、タンパク質も残っていなかったが、甘寧省の下顎骨と比較することで、デニソワ人と考えられている。
甘寧省の下顎骨は、デニソワ人の化石の「判定基準」となったと書かれているのだが、もしかして、デニソワ人ってタイプ標本ない?? (追記:Wikipedia曰く「正式な種名は、より完全な化石が発見されるまでは確立されない」まだ新種記載されていないのか)
2014年に、チベット高原の人々が高地に適応できたのはデニソワ人由来の遺伝子によるという研究が発表されたが、2019年に実際にデニソワ人がチベットにいたことがわかって、「パズルのピースがぴたりとはまった」。
デニソワ、ネアンデルタールからホモ・サピエンスへの影響はあるが、逆にネアンデルタールへの影響は見られていない。
スリマックは、フランス・マンドラン洞窟のネアンデルタール人が5万年間、遺伝的に孤立していたことを明らかにした。


今月号の表紙にもなっているホモ・ロンギだが、最後にちょろっと言及があるだけで、あんまり詳しく書かれていなかった。1933年に発見された「ハルビンの頭骨」。ネアンデルタール人やデニソワ人よりもホモ・サピエンスに近いかもしれないといわれている。
ホモ・ロンギの頭骨から古生物アーティストによって復元された過程の写真が掲載されていた。


DNAが残っていなくてもデニソワ人だと分かる可能性がでてきたため、中国では過去に発見された化石の洗い出しが始まっているらしい。
中国政府は、人類の化石を国外へ持ち出すことを禁止しているが、張など若手研究者は海外との研究協力をすすめている

追記

sp.m.jiji.com

この頭骨化石は1933年に黒竜江省ハルビン市の橋の建設工事現場から発見され、2021年になって河北地質大などの研究チームが現生人類に近い新種「ホモ・ロンギ(竜人)」に分類したと国際科学誌イノベーションに発表した。しかし、この分類が妥当か議論になり、同研究所チームがたんぱく質を抽出してアミノ酸配列を解析した結果、デニソワ人特有の変異を見つけた。

極北の氷の中の秘密基地

1960年頃、アメリカがグリーンランドに作っていた基地について
今号のナショジオは、上述の古人類の記事目当てに手を取ったのだが、むしろこっちの方が面白いまであった。
まず、歴史の話として、そんなことがあったのかという意味で面白いが、しかし、このタイミングで読むと、変なアクチュアリティが出てきてしまってその点でぞわっとくる面白さ(?)もある。
なお、記事中では、トランプによるグリーンランド要求の話には一切触れられていない。
グリーンランドの氷をくりぬいて、その下に基地を建設するという計画があり、実際にある程度まで作られたのだという。
原子炉も設置してそれでエネルギーを賄うというもので、科学研究を名目に建設されていたが、実際にはそれは隠れ蓑で、核ミサイル基地として運用するというのが真の目的であった。
当時、ナショジオ誌もその取材に行っており、その時の写真も掲載されているが、当時は真の目的は秘匿されていたので、当時のナショジオ誌も科学研究目的の施設として紹介していた。
グリーンランドに核ミサイル基地を置くことで、ソ連の主要都市を射程に収める、というそういう計画である。
しかし、氷の中に基地を作るというのはえらく大変で、何故かというと、氷は動いているからで、そのために配管等を調整し続ける作業が必要で、この維持が非現実的ということで計画は廃止された。現在は、その廃墟が残っているという。
当時、氷のボーリングが行われていて、グリーンランドの地面まで到達している。
これもまあ、隠れ蓑としての調査だったわけだが、今では、この基地が成し遂げた最も重要な結果となっている、とのことである。