太田紘史・山口尚「反機能主義者であるとはどのようなことか」/佐々木健人「現象的意識とアクセス意識」/スーザン・ブラックモア『意識を語る』(ネッド・ブロックについて)

心の哲学で有名な哲学者としてネッド・ブロックがいる。
アクセス意識と現象的意識との区別で知られ、その点で、グローバル・ワークスペース説への反対者でもある。
参考:
スタニスラス・ドゥアンヌ『意識と脳』(髙橋洋・訳) - logical cypher scape2
『シリーズ新・心の哲学3意識篇』(佐藤論文・太田論文) - logical cypher scape2
上記の通り、グローバル・ワークスペース説であるドゥアンヌの本を読んだことがきっかけで、ブロックについても関心がわいたのだが、ブロックの著作は邦訳がなさそう……
で、検索して出てきた以下の論文をざっと眺めた

太田紘史・山口尚「反機能主義者であるとはどのようなことか」

この論文では、ブロックの立場を紹介しつつ、筆者らがブロックへの反論コメントも書いている。

  • 1 機能主義とは何か、何が問題なのか――クオリア欠如

ブロックは、反機能主義者であり、中国国家の思考実験を用いて批判している

  • 2 意識の概念を数え上げる――現象的意識とアクセス意識
  • 3 二つの意識の神経基盤

現象的意識とアクセス意識とを区別し、意識を研究している哲学者や科学者の多くが、この二つを概念的に混同している、と指摘する
また、ブロックは、スパーリングの実験の例を挙げて、経験的にも区別可能だと論じ、神経基盤についても論じている。

  • 4 表象主義を批判する――逆転地球、スペクトル・シフトそして身体感覚

ブロックは、表象主義も批判する
表象主義は、クオリア(意識の現象性)を表象と連関させることで物理主義を守る
ブロックは、逆転地球の思考実験や性差・人種差などによるスペクトル・シフトの事例から、表象主義を批判する。

  • 5 意識のハーダー・プロブレム

ブロックは、タイプB物理主義を支持する
タイプB物理主義は、消去主義的な「タイプA物理主義」や現代科学と相容れにくい「二元論」に対して、中道的な立場であり、これを支持する哲学者は多い。
しかしブロックは、(自身この立場を支持しながらも)タイプB物理主義は、アンチノミーに陥っていることを指摘する。
それが、タイプB物理主義のみが直面する「意識のハーダー・プロブレム」である。

佐々木健人「現象的意識とアクセス意識」

アクセス意識と現象的意識の区別については、これも参考に読んだのでメモっておく。
現象的意識はアクセス意識をオーバーフローする、といっていて、現象的意識はアクセス意識にはアクセスしきれない豊かさを持っている、とする。
その上でスパーリングの実験をどう解釈するか、色々議論がある。

スーザン・ブラックモア『意識を語る』

ずっと昔に読んだ本なのだけど、そういえばと思って引っ張り出してきた。
スーザン・ブラックモア『「意識」を語る』 - logical cypher scape2
というか吉田正俊・田口茂『行為する意識』 - logical cypher scape2を読んだ際に、そういえばヴァレラがブラックモア本に載っていたな、と思って、ヴァレラだけ読み返してもいた。
ところでこのブラックモア本の訳者である山形は、あとがきで、ヴァレラを結構ボコボコに批判しており、その批判自体はそれなりに妥当なような気はするのだけど、一方で、山形が(別のところで)評価している谷淳は、ヴァレラと方向性が近いと谷自身が言っていたりして、ここらへんは不思議な関係だな、と思う。


ネッド・ブロックについていうと、ブロック自身の立場がどういうものかについては、上の太田・山口論文を読んだ方が詳しくわかると思うが、中国国家の思考実験がサールの中国語の部屋に影響を与えたかもね、みたいな話がこちらのインタビューには書かれていたりする。
あと、授業で逆転クオリアとかについて説明すると、2/3くらいの学生は理解してくれるし、ブロックの幼い娘も分かってくれたというが、一方で、どうしても問題をうまくつかめない感じの学生もいる、と。デネットとかもそのタイプなんでは、とブロックは言っている(ただブロックは、デネットと意識については全く意見が異なるが、自由意志については同意できるともいっている)。
このブロックの話を聞いていたブラックモアが、じゃあデネットはゾンビなんですか的なことを聞き出すのが、このインタビュー本の面白いところだが。
ところで、これは自分の勇み足かもしれないけれど、山形もどちらかというとそのタイプなのでは、と思わないところがないでもない。


ところで、この本にはケヴィン・オレーガンという人もでていて、ドゥアンヌ本の謝辞にいたな、と思って眺めてみたら、感覚運動理論の人だった。
あ、ステファン・コイファー、アントニー・チェメロ『現象学入門』(田中彰吾・宮原克典訳)(一部) - logical cypher scape2でオリガンとして名前載ってるな。
感覚運動理論、ちょっとよくわからない話だよな


グローバル・ワークスペースのバースのインタビューについて、NTT出版のwebにあったらしいのだが、流石にもうなくなっていた……