『NOVA5』

大森望編『NOVA1』 - logical cypher scape
『NOVA2』 - logical cypher scape
大森望編『NOVA3』 - logical cypher scape
NOVA5、読んだもののあらすじと感想。
読んだもののみ。

上田早夕里『ナイト・ブルーの記録』

深海探査船のパイロットについて。とある科学記者がインタビューをしようとしていたところ、その前に亡くなってしまうのだが、ある女性から代わりに自分が取材を受けると言われて取材する。話のほとんどは、この女性によるそのパイロットについての思い出話という体裁。
そのパイロットは中年まで実際に潜水艦に乗っていたが、引退してからは、自動操縦の潜水艦に非侵襲形のインターフェイスで感覚を繋げて、操作を教え込むという仕事をしていた。女性は、その研究開発に携わっていた1人。
機械と感覚を繋げることによって、身体拡張が引き起こされる。彼から度々なされるその拡張された感覚の報告に、研究クルーたちは、彼が既に「人間」の枠を越えているように感じる。一方、彼はその「感覚」をより多くの人に体験してもらうことが、海洋の環境保護に役に立つはずと考えていた。
彼の神経活動のデータは記録されているが、そのデータを使って他の人も同じように「感覚」を共有できるようになる技術が作られるかどうかは分からない。
女性が記者の取材に答えたのは、彼のことが「物語」になることで、彼の伝えたかったことを広められるようになればいいと思ったから。

図子慧『愛は、こぼれるqの音色』

人の感覚データを他人(といっても性別と年齢に限りはある)にも再生できるような技術が開発された時代。その技術は、ポルノ産業にも使われていた。
タイトルにあるqというのは、その技術に使われる脳波、q波のこと。
天涯孤独の身で、不動産屋で不法入居者を追い出す仕事をしている青年(少年?)が主人公。半分水没してる地区に住んでいる。本来、立ち入り禁止区域で、治安が悪く、ポルノ撮影などが行われているような場所。
主人公は、仕事で追い出すことになった女性と親しくなる。

宮内悠介『スペース金融道』

タイトルとのギャップが。タイトルだけだとほとんど気を惹かれなかったので、タイトル損しているような気もするのだが、ある種のキャッチーさはあるし、既に「スペース地獄編」というタイトルで続編も出ている。
タイトルからだと、パロディないしコメディに思えるが、宇宙とアンドロイドと金融工学を組み合わせたシリアスなSF。まあ、主人公のやりとりなんかはコミカルになっているのだけど。
アンドロイドの集合無意識(ダークウェブ)と金融工学がもたらす破綻。

東浩紀火星のプリンセス 続』

タイトル通り。NOVA3に掲載されていたものの続編。
栖花は、観客たちの前で自分の正体を明かし、ワームホールゲートへのテロ攻撃が成功する
一方、彰人は1000年後の火星で麻里沙と再会する。
ワームホールゲートの向こう側とは一体何なのか。


NOVA 5---書き下ろし日本SFコレクション (河出文庫)

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