アレステア・レナルズ『銀河北極』

アレステア・レナルズ『火星の長城』 - logical cypher scapeの続編。

時間膨張睡眠

最初のシーンのインパクトがすごい
が、全体としてはまあまあかな
融合疫から逃げる人を乗せた船の乗組員の話。

ターコイズの日々

パターンジャグラーの惑星で暮らす研究者を描いた中編
レナルズって、ウルトラ属や連接脳派みたいな超テクノロジーを持った連中か、スカイズエッジ星やアマランティン族の星とか融合疫後のカズムシティとかあんまり科学文明の発達していない世界が多くて、それを考えるとウルトラ属との交流はほとんどないものの、それなりの文明レベルを保っている星が舞台で珍しい
パターンジャグラーは面白いなあと思う。

グラーフェンワルダーの奇獣園

訳者いわくゲテ物祭りw
これぞレナルスですよw
あ、あと、融合疫によってむしろいい思いをした人の話
トランティニャン、トランティニャンじゃないかって感じで、いいオチ

ナイチンゲール

戦争犯罪者をかくまっている病院船に、侵入を試みる即席のチーム
ところが、病院船の人工知能が狂っていて
マルティネスが入れ替わっている(?)のはバレバレな上に何故そういう設定が必要だったかよくわからんけど
病院船の皮膚の培養室とか、人工知能ナイチンゲールの美意識とかは、まあ面白いかも。
小火器にも、ビーム兵器と弾丸兵器とがあって、その違いによって各人のこだわりが分かるとかね。

銀河北極

タイムスケールがやばいw
他の作品でも少し言及されているけれど、人類以外のコミュニケーション可能な宇宙飛行種族が出てきたのは初めてではないかな
インヒビターとの戦いすらも終わった後ってわけで、ちょっとこうページ数的にも、「壮大」というには物足りなさがあるけれど、インヒビターにしろ、この緑機虫にしろ、宇宙を全て飲み込もうとする奴からの逃亡ってのが、レナルズ作品の背景をなしてる。融合疫もある意味でそうか。そこらへんに、「壮大」の片鱗を感じたりする。
ルモントワールって火星の長城に出てきたっけ?
主人公二人が、なんか銀河全域で伝説になっていたりするし、主人公二人も世代交代とかしているし、本当はこれこそ短編じゃなくて長編で書けよって話なんじゃないかなあとも思うけど、逆に短編だからこそってのもあるのかな。
エピソードを増やすことは可能だけど、ストーリーそのものは大してないもんな。いや、でもそれいったら、他の長編だって……
それにしても、なんで一万年も追いかけ続けたんだろうなあ。普通は途中で相手がくたばるだろうし、奪った積み荷も一万年も残ったりしないだろうよw 
自分が冷凍睡眠入っているあいだに、追いかけるものがなくなってしまうという可能性は何故排除しているんだろうなあ
あと、スペオペって宇宙海賊がよく出てくるけど、普通に考えて、宇宙で海賊行為するのって獲物に出会う確率低すぎて大変だよなって思う。これは罠を張っていたって設定だけど。
互いに近光速で航行中の船から船へと宇宙服の装備で乗り移るシーンがあったような気がするんだけど、どうなってんだ?!


やっぱりスペオペって、ファンタジーに近いというか。
大味な物語をいかに装飾していくかって感じのところがあるから、ストーリーがすごいとか、キャラクターが作りこまれているとかで評価できないので、呼んでいる最中はもちろん楽しいのだけど、読み終わってブログ書こうとするとなかなか難しいw
イデアとイメージの勝負って感じ。
イーガンもそうだけど、イーガンだとやっぱり思考実験みたいなところがあるから、それを機に色々考えるとかあるけど、こっちはあまりそういうのもないしなあ。
相対論速度とか天文学的な話は、現実に則って作っているだろうけど、それ以外はファンタジーだよなあと
ただ、そこの説明をいかにそれっぽく作りこむかってとこがSFなんだろう、と。で、そこを面白がって読んでいる。


銀河北極 (ハヤカワ文庫 SF レ 4-4 レヴェレーション・スペース 2)

銀河北極 (ハヤカワ文庫 SF レ 4-4 レヴェレーション・スペース 2)