3年ほど前のSFマガジン。刊行当時、気になりつつもスルーしていた。
最近TLで、本誌収録の春暮康一「モータル・ゲーム」への言及を複数見かけたので、読んでみることにした。
「魔法の水」小川哲
これ小川哲『地図と拳』 - logical cypher scape2の直後に書かれた作品なんだな。で、「魔法の水」といえば石油、もっといえば人造石油である。
二つの話が交互に進行する短編小説
一つは、近未来、とあるゲーム会社で法務を担当している主人公が、新たにアプリのプラットフォームを立ち上げようとしている企業から持ちかけられた契約を検討している話
もう一つは、1930年代後半、山本海軍次官が仲本という人物から「魔法の水」の話を聞かされる。しかし、仲本は延々と、魔法の水とは関係なさそうな話をする。
石油を一種のプラットフォームと見なすことで、どちらの話も、独占企業の独占状況を崩そうという企てのもと、話を持ちかけてくる奴が、山師なのかどうかを見極めようとする話になっている。
直接的には、歴史改変ものでも時間移動ものでもないのだけど、状況を重ね合わせることで、あたかもそういう効果があったかのように思わせる作品になっている。
「モータル・ゲーム」春暮康一
地球外生命体を探すべく宇宙へ出航した船団のうちの一つが発見した惑星で、ライフゲームを見つける。
巨大な水たまりのような環境で、コロニーが形成されており、それらのコロニー一つ一つがライフゲームのセルのようになっていて、ライフゲームと同様のルールでコロニーが生まれたり消えたりしている。
ライフゲームは、そのルールが分かれば、結果が完全に予想できる。決定論的な振る舞いをするこれらのコロニーを、果たして生命と呼ぶべきか否か。そして、有限ステップ内に絶滅が運命づけられているこれらのコロニーに介入すべきか否か。船内では議論が交わされることになる。
地球外生命との接触についての倫理的判断を迫られる、というのは春暮作品によくあるシチュエーションだが、本作は最後に一ひねりされている。
来訪者に対してメタゲームが仕掛けられていたのではないか、と。
地球への手紙・レポート形式で書かれているが、その形式自体が、最後に二人称小説としての仕掛けに転じてもいる。
「すべての原付の光」 天沢時生
そういえば以前【試し読み】滋賀ワイドスクリーンバロック不良小説「すべての原付の光」(天沢時生) |Hayakawa Books & Magazines(β)で読んでいた。
ので、今回は読んでない。いずれ、同名短編集を読もうかとは思っている。
特別対談「戦争を書く、世界を書く」逢坂冬馬×小川 哲
初めて読む気持ちで読んでて、読み終わるまで気付かなかったけれど、ブログのために読み返していたら、以前読んだことある奴だと気付いた。
【対談】戦争を書く、世界を書く。『同志少女よ、敵を撃て』逢坂冬馬×『地図と拳』小川哲|Hayakawa Books & Magazines(β)
「SF翻訳、その現在地と十年後の未来」古沢嘉通
これも読んでみたら、読んだことある奴だった。
SF翻訳、その現在地と10年後の未来|Hayakawa Books & Magazines(β)
結構、無料公開されてる記事多いんだなあ。
現在、SF翻訳者は60代に集中している。このあと、一気に翻訳家減るよ、という話
ここに挙げられているのは錚々たるメンバーで、確かにSFってほとんどこの人たちが翻訳してるよな、とか、ここみんな同世代なのか、とか思わされる。
この世代より下の翻訳家って誰かいるかなーと検索したりしてみたんだけど
例えば、市田泉や佐田千織は? と思ったが、多少、年下かもしれないが、それほど違いがない(上記記事で挙げられている翻訳家の中で最年少とされている中原尚哉の1,2歳年下)
鳴庭真人が1984年生まれらしいので、こちらは明らかに下の世代といってよさそう。
新井なゆりは、生年が分からないが、SF翻訳を始めたのは最近っぽい。
それから、上記記事で、山形浩生が機械翻訳の話をしていたエピソードがあるが、最近、山形がオールディスを試しにGrokで翻訳してみて、結構いけそうだ、みたいな記事を書いていた。
AIと文芸翻訳:オールディス『ヘリコニアの春』を例に - 山形浩生の「経済のトリセツ」
この号、80年代生まれが多いような
1984年生まれ 森田季節、柿崎憲
1985年生まれ 春暮康一、天沢時生、逢坂冬馬
1986年生まれ 小川哲
1987年生まれ 片桐翔造、宮崎夏次系
1988年生まれ 伴名練、木澤佐登志
1989年生まれ 冬木糸一
80年代生まれが多いというか、春暮、天沢、逢坂が同じ年齢なのが目立つというか。
