古川日出男『ミライミライ』

戦後、沖縄がアメリカに占領されていたように、北海道がソ連に占領されていたら、というパラレルな歴史を歩んだ日本(日印連邦)を舞台に、「最新゛(サイジン)」というニップノップグループ(ニップノップとは、彼らが生み出したヒップホップのサブジャンル)の物語。彼らの中のMCの1人が何者かに誘拐され、それが、国際政治の思惑と複雑に絡み合っていく。

ミライミライ

ミライミライ

連載の第1回をたまたま読んでいて、単行本が出るのを待望していた。
古川日出男「ミライミライ」(『新潮』2016年6月号・連載第1回) - logical cypher scape
さて、実際読んでみたら、面白いは面白いのだが、「え、ここで終わっちゃうの」みたいなところで終わってしまい、この作品に対して持っていた期待と比べると、やや奮わなかった、というのが個人としての感想となる。


タイトルの「ミライミライ」は、みらいみらい(未来未来)であり、地の文において、(語りの冒頭に使われる)「むかしむかし(昔々)」と並んで、あるいは代わりに使われている。
語りの時点と語られる出来事の時点がズレることもしばしばあるため、「昔々」に代わって「みらいみらい」という言い回しも使われているのである。


語りの時点はいくつもあるのだが、大きく分けると、二つの物語が並行して語られている。
一つは、2016年に世界的に活躍するニップノップグループ最新゛の物語
もう一つは、1945年から1980年代半ばまでの、鱒淵いづる大佐ならびにその娘てふが率いる抗ソ戦線の物語である。