THE IDOLM@STER MR ST@GE!! MUSIC♪ GROOVE☆

横浜にあるDMM VRシアターで行われた、アイマスVRライブイベント、我那覇響回に行ってきた


久しぶりのアイマス関係記事
アイマスとかアニメとかの記事は、数年前からはてなブログの方に書くようになったので、こちらでアイマスのライブイベントについての記事を書くのは久しぶりなわけだが、VR関係でちょっと美学的な話も思い付きでつらつら書こうと思うので、logical cypher scapeで書くことにした。


DMM VRシアターの存在は以前から聞いていて、一度行ってみたいと思っていたのだが、なかなか腰が重くて行きそびれていた。
アイマスMR公演も知っていたものの、チケットを取りそびれていたのだが、いつもの後輩がチケット余ってますよと言ってくれたので行くことができた。

公演概要

DMM VRシアターというのは、ステージ上にホログラムで映像が投影されるというタイプの劇場で、CGアニメーションのキャラクターによるライブを見ることができる
初音ミクのライブのような奴、といえばわかるだろうか。初音ミクは、実際のアリーナとかにホログラム用の透過スクリーン設置して、とかやってるはずだが、VRシアターは元々劇場にそういう設備が常設されていて、様々なアニメ・ゲーム作品等のライブを上演している*1
というわけで、VRといっても、ゴーグルをつけてやるタイプのものではない。
また、今回、アイマスはMR(Mixed Reality)を謳っているようだが、これはおそらく、後述するように、キャラクターと客席との間にインタラクションがあることをもって、Mixedなのかなと思うけど、まあ、Musicと頭文字をかけたかったのかなという気もするし、あんまり深くつっこむところではない。


基本的に、アイマスのキャラクターたちがライブするCGアニメーションのホログラム映像が上演されるわけだが、
公演日ごとに、それぞれ主演アイドルというのが設定されている
公演スケジュール
例えば、自分は我那覇響が主演の日に見に行ったのだが、響のソロとMCが用意されていて、声優がバックステージに控えていて生で声をあてている。
そのため、MCの際には、響が実際に客席とかけあいを行うことができる、という趣向となっている。
上演時間は1時間となっていて、1日3回
劇場のキャパは300〜400くらい。アイマスでこんな小さい箱のイベント参加したの初めてだ


セトリは以下。
ググったら出てきたアイマスMRが凄すぎた!リピート必至の興奮のライブ【現地感想&セトリ】 | アイマス通信を参照した。こ記事では、真回がレポートされている。主演アイドルのソロ以外のセトリは、いくつかのパターンが用意されているようだが、たまたまこの記事でレポートされている回と、自分が行った回は同じパターンのセトリだった模様。

1 ONLY MY NOTE 春香・やよい・美希・千早・真美
2 魔法をかけて! 春香・雪歩・律子
3 私はアイドル 伊織・貴音・亜美
4 L・O・B・M やよい・あずさ・響
5 エージェント夜を往く 真・亜美・律子
6 静かな夜に願いを… 千早・雪歩・真美
7 Vault that borderline! 伊織・真・響
8 THE IDOLM@STER 貴音・あずさ・美希
9 TRIAL DANCE 響(主演公演)
10 READY! 貴音・真・響・雪歩・やよい
11 Happy! 亜美・春香・美希
12 CHANGE!! やよい・亜美・貴音
13 自分REST@RT 千早・響・伊織・律子・あずさ
14 MUSIC 律子・千早・真美・伊織・あずさ
15 しあわせのレシピ 響(主演公演)

VRライブの感想

実をいうと、映像体験的には、前半は「ふーん、こんな感じかー」という印象だった。
むろん、それなりの感動はあるし、アイマス好きなので、アイドルが踊っているところ見て曲聞いてるだけで楽しいというのはあるが、まあしかし、スクリーンに投影されているCGアニメーションだなあ、という感じもある。
ところが、この感想は、主演アイドルである響のソロパートに入って、一転する。
響をセンターにして、人間のダンサーさんが2人ステージに出てくるのである。
ステージ上では、CGアニメーションの映像である響と、人間のダンサーが共演しているのだが、これにより、響の「実在感」のようなものがぐっとあがるのである。
「あ、響ってやっぱりちっちゃいんだなー」とか、そういう感想も浮かんだ。
さらに、ソロ曲では生歌になっているのも、この「実在感」に拍車をかけていた。
いやほんと、TIRAL DANCEの生歌、ラストのぬーのスキャットがとてもよかったんですが
まあそれはともかく、人間と共演すると、CGキャラクターの「実在感」が増す、というのは面白い経験だった。

実在感?

この手のレポートでは「(2次元のキャラクターである)〇〇が本当にそこにいたんだ!」みたいな熱っぽいものが多かったりするわけで、自分も見ているさなかに思わず「実在感があるなー」と思ったりしてしまったわけなのだけど、一応、フィクションの哲学とか勉強している身なので「実在感とか言っちゃっていいのか」と反省したりしてw
というわけで、ちょっとした考察を以下に書くことにする
とはいえ、ソロ以外での「ふーん、こんな感じかー」と、ソロパートで感じた「実在感」の正体、というのは、まあ見ている最中から検討はついていて
こちら、VRシアターの技術紹介のページにどういう仕組みかが書かれているが、ハーフミラーのスクリーンに映像が投影されている。
で、このハーフミラーのスクリーンが1枚と、バックスクリーンが1枚が構成になっていて、まあ要するに、奥行き感を出すのにわりと限界がある。
アイマスは横一列に並んでダンスという曲が多いけれど、やっぱりアイドルはフォーメーションチェンジを見たいなーなどと贅沢なことを思ってしまったりする。
で、アイマスにもそういう曲がないわけではなくて、アイドルたちが前後に交差するという振り付けもそれなりにある。でも、その時の奥行き感、みたいなものがどうしてもちょっと足りない。
キャラクターが3次元空間にいる! っていうのが、こういう映像体験の感動の肝なわけだけど、「あ、やっぱり平面だなー」っていうのが何となく感じられてしまう。
ところが、これに人間のダンサーさんが出てくるとどうなるか。
この劇場は、ハーフミラーのステージとバックスクリーンの間がステージになっていて、そこは人間が普通にステージとして動き回れるようになっている。
響が立っていて、その斜め後ろにダンサーさんが立っていると、それが奥行き感がちゃんと生まれてくる。ダンサーさんが前後に動くことで、(映像である)響も含めて、ステージ全体の立体感が十分に感じられるようになる。
なるほど、自分が感じた「実在感」というのは、要するに「奥行き感」のことだったのか?!

もう少し美学的に考えてみる

以前、デイヴィド・チャーマーズ「ヴァーチャルとリアル」 - logical cypher scapeを紹介したが、チャーマーズがいうデジタリズム実在論など持ち出さなくても、虚構主義(フィクショナリズム)でいいんじゃないの、というのが自分の感想だった。
今回のアイマスMRのようなイベントにおいて、響が客席とやり取りしたという出来事について、思わず実在論を取りたくなるような気もするが、このイベント自体は、全然メイクビリーブ説で理解可能な範疇にあり、我那覇響がフィクショナルな存在であることには何も変わりはない。
(まあ、そもそもチャーマーズが主に問題にしたかったのは、フィクショナルなキャラクターのVRじゃないだろうけど)
何が言いたいかというと、ここでいう実在感は、対象や出来事が実在しているかどうか、という話とはとりあえず関係がない。
すでに上で述べた通り、見え方の問題である。
むしろこれは「描写」に関する哲学とかかわりのある問題なのかもしれない、という思い付きである。
美学では、「描写」というのは「二面性」の経験をもたらすもの、というふうにおおむね定義されている。
つまり、紙とかキャンパスとかモニターとか平面なのに、そこに描かれている対象は立体的なものとして見られている、ということ。ただし、やっぱり平面としても見ている。
つまり、平面でもあり、かつ立体でもあるものとしての「二面性」のある視覚経験が生じていることになる。
というわけで、時に、「だまし絵」は「描写」ではない、と言われることがある*2
「だまし絵」というのは、トロンプ・ルイユとかトリック・アートとか言われているもの
本当に額縁から飛び出しているように見えるような絵の類
こうした絵は、適切な角度から見ると、本当に立体的に見えて、平面的には見えなくなる。つまり、「二面性」がなくなる(なので、描写ではない、と言われることがある)。
今回のアイマスMRも、ダンサーさんが一緒に並んだことで、視覚経験における「二面性」が薄れて、だまし絵的に作用したのではないか、というのが自分の仮説
VRだまし絵説、というのどうでしょう
ところで、VRシアターってVRシアターと名乗っているけど、いわゆるゴーグルをつけるようなVRじゃないわけで、この名前はちょっと誤解の元になるのかも……
VRシアターが使っている技術は、先ほどの技術紹介のページにもある通り、ペッパーズ・ゴーストというもので、同様の技術自体はどうも19世紀からあるものらしい
うーん、ペッパーズ・ゴーストがだまし絵的、というのは、かなり当たり前の話に思えてきた。
まあ、そういうものか。
ところで、もう一点、見ながら思ったこととして、アニメーション映像と実際の人間がステージ上で共演しているのって、もしかして、ウィンザー・マッケイの『恐竜ガーティ』的なあれなのでは、と
参照:細馬宏通『ミッキーはなぜ口笛を吹くのか』 - logical cypher scape
応援上映の流行の時などにも言われた話だし、それこそ渡邉大輔の映像圏みたいな話なのだが、19世紀から20世紀初頭の映像体験に似たものが、21世紀初頭になっていて色々回帰している現象の一つなのかもしれない。
でも、このあたり、描写の観点から整理するのは面白いかもしれない。
VRでいわれるところの「没入」とは何なのか、とかも二面性の有無とかかわっているような気がするし。


人間と並ぶことで実在感が増すように感じるのかどうか、おそらくその手の演出技法としてすでに議論の蓄積がある分野なのではないかと思われるのですが、何か参考文献など知っている人いたら教えてください
初音ミクのライブあたり詳しい人が詳しい分野かなーと思うのだけど、ペッパーズ・ゴーストということは、なんか別の方向から探るという手もあるのだろうか……

脱線

二面性があるかないかで描写かどうかを考えるとなると、彫刻って一体どうなるんだ?
いや、絶対誰かが論じているはずなんだけども。

アイマスPとしての感想

客席とのインタラクションについて

まあ、わりとレポートなんかでは、キャラクターとお客さんが直接話すことができた、ということに結構重きを置いていたりするのかなーという印象があったりする。
これ自体は、非常に面白いのだけど、美学的にどうこうみたいな観点を(自分は)あまり見いだせなかったので、上の実在感についての考察からは外した
ステージ上にはキャラクターの映像があって、客席からは見えないところに声優がいて、客席の様子をモニターしながらしゃべっている(あ、あと、リアルタイムでモーションキャプチャーもやってるらしい)
今回、響の場合は、客席からの無茶ぶりを受けて、というか無茶ぶりをしてもらってw それに対して、響が困るという奴なのだけど
まあ、実際にどういうのが客席から来るかは分からないわけだから、それに対するリアクションとしては、声優の、つまりこの場合、沼倉愛美のアドリブということになる。
で、声優オタクとしては、声優が無茶ぶりふられてアドリブで答える、というのはラジオとかイベントとかでわりと見慣れている光景ではあるのだけど、今回、アドリブしているのは沼倉愛美だけど、あくまでも、響としてアドリブしているので、無茶ぶりして困っている(ように見える)のは、沼倉愛美ではなく響となっている
これは確かにわりと新鮮であった。
シチュエーション自体は見慣れているんだけど、新鮮っていう
で、やっぱこれ、長年ずっと同じキャラを演じているアイマスならではってところもあるかなーと思うのだけど、台本とアドリブの境目が全然分からなかった。
キャラクターがしゃべっている感動というより、どれがアドリブなのか分からない役者側の演技力への感動が強かった感じかも。
で、こういうタイプの演技を目の当たりにすることって普段ないので、それが新鮮だった。

神セトリ

終わった後、開口一番の感想は「セトリに感謝しかねぇ」だったw
「魔法をかけて!」だの「わたドル」だの
あと、「CHANGE!!」も地味にうれしい選曲だし、何より「MUSIC」推しなのが非常に嬉しかった
伊織のVTBとかも普段聞くことないのでよかった

VRシアターって結構低音でますね
しあわせのレシピってバックトラックこんなんだったっけってなった
あ、あと、生歌に変わると、生歌になったってかなり顕著にわかるものなんだな、とも

将来的に見てみたいもの

響とぬーが並んで踊ってるところが見たい! と思ってしまった

*1:と、ここまで書いておいてなんだが、「〇〇がVRシアターでやってた」というような話を聞いてVRシアターのことは知っていたが、VRシアターそのものについてはちゃんと知らないので、実際に今までどういうのを上演していたのだと調べてみたところ、いわゆる二次元アイドルものが多いが、三次元の俳優やアイドル、バンドのほか、ふなっしー稲川淳二、演歌・民謡、TEDトークとかなり多彩。https://vr-theater.dmm.com/schedule

*2:論者によって異なる