小説その他

第22回文学フリマ感想その2

銅のケトル社『斜陽の国のルスダン』 モンゴルと初めて戦ったキリスト教国グルジア、歴史書には淫蕩な女王、無能な女王とされているルスダンを、時代に翻弄されながらも大切なものを守ろうとした女王として描いた物語。http://www.amazon.co.jp/dp/B01DW24XF…

宮内悠介『アメリカ最後の実験』

グレッグ音楽院の入学試験を受験するためアメリカ西海岸を訪れた脩が、音楽と実験国家アメリカを巡る事件に巻き込まれながら、失踪した父親の謎と自分にとって音楽とは何かを探求する物語 yom yom誌上で連載された作品で、狭義のSFではないが、読んでいて受…

三上延『ビブリア古書堂の事件手帖』1〜4

人から薦められたもので4巻まで読んだ(既刊は6巻まであるようだけど)。 有名なので名前は知っていたけれど、逆にいうとそれ以外はほとんど知らない状態で読んだので、例えば主人公が20代半ばくらいだったりするのに驚いた。なんか高校生くらいの話だと思っ…

『龍血一滴』第4号

冬コミで買った奴 『龍血一滴』第一号 - logical cypher scape2 2号は感想書いてないみたい 3号は買えなかった 機龍警察 布施 阿久 緑ライの4コマ 影の国 ふたみゆうり ユーリのマンガ 同期の桜 キリエ 小野寺4コマw 特捜部捜査日誌 由起谷と夏川の捜査 …

月村了衛『機龍警察 火宅』

機龍警察シリーズの短編集 これまで発表された短編8本を収録したもの どの短編も、機龍警察らしい、重たい読後感をもたらすものが多い中、宮近理事官を主人公とした「勤行」が癒し 宮近は尊い 火宅 由起谷が昔の上司を見舞う話 由起谷が警察になったときの…

宮内悠介「薄ければ薄いほど」(『小説現代』)/オキシタケヒコ「サイレンの呪文」(『SFマガジン』)/『日経サイエンス』

宮内悠介「薄ければ薄いほど」(『小説現代』9月号) オキシタケヒコ「サイレンの呪文」(『SFマガジン』2014年10月号) 『日経サイエンス』2014年10月号 国際宇宙基地,日本の引き際は? センサー網が実現するESP 代替現実で時間をワープ 銀河を操るダーク…

石川博品『後宮楽園球場』

前々から「今度読もう」「今度読もう」と思っていて、ある時、「今が今度だ」と思ってポチったら、まさにその日に「打ち切りが決まったらしい」という情報を知る羽目になって、タイミングがいいんだか悪いんだかという感じで読んだ本 女装して宮廷のハレムに…

月村了衛『黒警』

組対の刑事沢渡が、中国黒社会と日本の警察上層部の癒着にまつわる件へと巻き込まれていく話 何というか、とても読みやすい するっと読めるし、まあ普通に面白いのだけど、でもやっぱり機龍警察が最強過ぎて、物足りなさはある。 月村作品にしては珍しく(?…

月村了衛『機忍兵零牙』

この小説については、機忍兵零牙 - 基本読書のレビューがよくまとまっているというか、雰囲気を知るのにうってつけ タイトルもやばいが、中身もやばいw 今時よくこんなものができるものだと思うのだけれど、それがすごくうまくできていて、すげーってなる …

月村了衛『コルトM1851残月』

江戸時代を舞台にしたノワール 自分はノワールものってほとんど読んだことがないので、ノワールとしてどうなのかということはよく分からないが、非常にベタというか王道のストーリー展開を見せる作品。 これってそもそも舞台が江戸時代である必要あったのか…

月村了衛『機龍警察 未亡旅団』

超すごい、超やばい、超面白い。みんな読め。 以上w で終わらせるのはさすがにあれなので、続けるけど、気分的にはそういう感じ。 チェチェンの「黒い未亡人」が日本にやってきて、未成年による自爆テロを起こす話。 シリーズ二作目の『自爆条項』が北アイ…

新城カズマ『TOKYO404』

定住しないことをテーマに小説を書くことにした新城カズマの、取材・インタビューを織りまぜたという体裁の小説。 佃島に代々住んできた一族である女子大生のタワダは、一人暮らしをしたいと相談した先輩のすすめにしたがって《メゾン・ポテ》というかなり怪…

坂上秋成『惜日のアリス』

何だか、あんまりうまく感想が思い浮かんでいないので、簡単にあらすじだけまとめておく。 この作品は、だいたい3つの部分に分かれている。 まず、前半。主人公の「わたし」は、いわゆるコミュ障ワナビな感じの女の子で、大学に通いつつ、おばあさんが1人で…

『龍血一滴』第一号

昨日の冬コミで買ってきた、機龍警察合同誌 アツイ! インタビュー1本+設定考察4本+二次創作小説5本 月村了衛メールインタビュー 早く『ノワール』見ないとなーというのと 出版を巡る状況は厳しいって前も何かで言ってたなーって 機龍警察・読後雑感 ア…

グレアム・グリーン『ヒューマン・ファクター』

瀬名秀明「希望」に出てきたので読んでみた。 実際にあった二重スパイ事件をもとにしていると言われる作品。 スパイと言っても、007のような派手な話ではない*1 ロンドンで役所勤めしている諜報員の話。 主人公のモーリス・カースルは、かつて任務で南アにい…

月村了衛『機龍警察 暗黒市場』

何故か感想書き忘れてた ユーリ総受け本 「DRAG-ON」ってセリフ読んだ時変な声出た 宮城県警がよかったっていうか、あの場所をそういうふうに使うとは、やばいみたいな小並感 あとで追加する 機龍警察 暗黒市場 (ミステリ・ワールド)作者:月村 了衛早川書房A…

久美沙織『ドラゴンクエスト5』

自分は子どもの頃から、全くしていなかったわけではないけれど、あまりゲームをしていなくて、ドラクエとFFの二大RPGも実はやったことがない*1。 で、あるとき、ビアンカとフローラのどちらが幼なじみなのかよく分かってないという話をしたら、妻から、…

至道流星『羽月莉音の帝国』(1)

これは一体何と呼べばいいのだろう。 まあ、ラノベであるのは明らかなんだけれど、ラノベ的な面白さは面白さに中心にないというか、まあしかし、やはり広い意味ではラノベ的な面白さなのかと思ったり。 羽月莉音が作った「革命部」は、建国を目指す部活動で…

月村了衛『機龍警察』

月村了衛『機龍警察 自爆条項』 - logical cypher scape2の1作目。 これはやっぱり1作目から読んだ方がいいと思うよww 2作目から読んでも問題ないといえば問題ないけど しかし、あえて言うならば、キャラクターの雰囲気が1作目と2作目で異なって感じ…

月村了衛『機龍警察 自爆条項』

機甲兵装というパワードスーツみたいな兵器がテロに使われるようになった近未来、対機甲兵装テロのために新設された警視庁特捜部の話。 シリーズ2作目なのだが、ネット上のどこかで誰かが、「これから読む人は自爆条項から読むのがいいかも」みたいなことを…

北方謙三『黒龍の柩』

土方歳三を主人公に、池田屋事件から箱館戦争までを描いた作品。新撰組を人斬り集団で終わらせたくないと考える土方が、蝦夷地独立に夢を託そうと奔走する話。 歴史小説・時代小説はほとんど読まないけど、北方謙三読むのは実は2作目。 以前、新聞で連載さ…

吉田直『トリニティ・ブラッド』

2001年から2004年に出てたラノベ。著者が早くに亡くなってしまったため、未完のままとなっていることは知った上で読んでいたが、読み終わってやはり続きが読めないのが惜しいと感じる作品。 “大災厄”以後、文明レベルが衰退した世界。教皇庁が各国を…

石川博品『耳刈ネルリと十一人の一年十一組』

ネルリシリーズの最終巻 石川博品『耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳』 - logical cypher scape2 石川博品『耳刈ネルリと奪われた七人の花嫁』 - logical cypher scape2 もともとLianさんが一巻について どう見てもポストモダン文学。こんな傑作がラノベ畑か…

石川博品『耳刈ネルリと奪われた七人の花嫁』

石川博品『耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳』 - logical cypher scape2の続刊。 前作は、作品世界の中ではシリアスな話が展開しているはずで、主人公もシリアスなことを喋っているはずなのに、主人公の語りが謎のハイテンションでそれに覆われている、という…

石川博品『耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳』

これまた、久しぶりにラノベ読んだという一作。 こちらは どう見てもポストモダン文学。こんな傑作がラノベ畑から出てくるとは思ってもみなかった。素晴らしい。 http://book.akahoshitakuya.com/cmt/8918547 というLianさんの感想を見かけて手を出したので…

広沢サカキ『アイドライジング!』

新刊のラノベ買うのとかすげー久しぶり! ラノベを読むこと自体久しぶり。 まあそんな人間が何故この本を手に取ることが出来たのかというと 『アイドライジング!』文章はテンポ良くてすっきりしてるし、マジかエンタメかというアイドル批評的な視点もある平…

冲方丁『ばいばい、アース』

冲方丁のデビュー後第一作、なのだがそれがあまりにもでかくて高い本だったので、当時は一部を除いて見向きもされなかった本、らしい。現在は、角川文庫から4分冊で出ているが、最初はハードカバー上下本二段組み、あわせて6090円だったらしい。スニーカー…

マイケル・シェイボン『ユダヤ警官同盟』

帯を見ると、「このミステリーがすごい!3位!」「ヒューゴー賞/ネビュラ賞/ローカス賞3冠!」とあり、ミステリなのかSFなのかという感じがするが、まあたぶんハードボイルド*1 訳者あとがきには、「改変歴史SF+ハードボイルド・ミステリ+純文学という、…

佐藤亜紀『ミノタウロス』

赤軍と白軍のあいだで内戦が起こり、混沌とした情勢下にあるウクライナを舞台に、獣のように生きた青年の物語。 主人公の青年はもとは地主の息子であり、頭は良いのだが、学校のくだらなさに早々に見切りを付けて地元に戻ってくる。そんな中戦争が始まり、チ…

元長柾木『全死大戦』

いや、素晴らしいネーミングセンスの嵐で素晴らしかった そして、たかだか神戸市内におさまる話なのに、登場人物が絶えず世界を語ってるとことか。 甲介という殺人鬼がナチュラルに混じってるっていうか、そいつが一番まともでなおかつ語り手やってるのがい…