月村了衛『機龍警察 火宅』

機龍警察シリーズの短編集
これまで発表された短編8本を収録したもの
どの短編も、機龍警察らしい、重たい読後感をもたらすものが多い中、宮近理事官を主人公とした「勤行」が癒し
宮近は尊い

火宅

由起谷が昔の上司を見舞う話
由起谷が警察になったときの最初の上司で、刑事の心得を教えてくれた人で、刑事として優秀だったが出世とは長らく無縁だった
この話は、読後感のヘビーさが特にきつい
今は病床に伏せって長くない上司が携わった、過去の未解決事件について、由起谷が達してしまう結論。
でも、結局、上司が一体何を思っているかにはたどり着けないという話でもある
【火宅】煩悩と苦しみに満ちて安らぎを得ない状態

焼相

暴走シャブ太郎をレンチン
四号装備の話

輪廻

ウガンダ武装勢力のリーダーが、日本に少年兵の機甲兵装用オプションを買い付けにきている話
まさに、少年兵をめぐる輪廻じみた話

済度

ライザの過去話
IRFを抜けて世界を逃亡中の頃、舞台はベネズエラ
武装勢力から妹を助けた女性兵士と、ライザが間違われる
【済度】菩薩が迷いの境界にいる衆生を教え導き、悟りの彼岸へ救い渡すこと

雪娘

ユーリの話。日本で起きた事件と、過去にユーリがロシアで遭遇した事件との〈相似〉
短編タイトルは、ロシアの民話にでてくる少女の精霊スネグラーチカから。唯一、仏教用語じゃないタイトル。
あと、スペツナズ・ナイフ

沙弥

由起谷の高校時代
母が死に、唯一の友人から警察になりたいという夢を打ち明けられた頃の話

勤行

【勤行】おつとめ
参議院の委員会質問での答弁作成が、特捜部に回ってきて、宮近と城木が必死になってそれを果たす
少し、夏川視点の話でもある。
最近では、多忙でなかなか約束を果たすことができず、小二の愛娘から嘘つきと呼ばれるようになってしまった宮近は、答弁作成という急務を無事果たして、家族サービスをすることができるのか
「この答弁を作成したのはー?」「浩二ー!」
機龍警察はプリリズ

化生

疑獄事件の参考人である経産省の課長補佐が謎の死を遂げる
捜一からも捜二からも妨害される特捜部だったが、公安からの情報で、フォンコーポレーションの人間が関わっていることを突き止める
如月電工が研究をすすめる量子コンピュータ、沖津は、いつもは見せない焦りの色を顔に浮かべ、押収を急がせる
特捜部と龍機兵のアドバンテージが、アドバンテージでなくなる日も近いのか