石川博品『耳刈ネルリと奪われた七人の花嫁』

石川博品『耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳』 - logical cypher scapeの続刊。


前作は、作品世界の中ではシリアスな話が展開しているはずで、主人公もシリアスなことを喋っているはずなのに、主人公の語りが謎のハイテンションでそれに覆われている、というわけわからんラノベだったのに対して、
世界も語りも、ギャグもあるけど、シリアスなところはシリアスになるという意味で、かなり落ち着いてしまっている。
一カ所だけ妙だなあと思ったのは、エピローグで時間軸が飛ぶこと。もちろん、そういうタイプの物語は非常にありふれている。エピローグで時間が飛んで回想になるというのは非常によくあるもので、奇妙でもなんでもないのだが、時間軸飛んでいるのがほんの4ページだけで、前作がああいう妙な語りだったこともあって、多少気になってしまった。将来的に、ネルリが王になっていることと、レイチが実家で家族と暮らしていることをそんなあっさり書いちゃっていいのかなあとか。いや、別にいいんだけど。
それから、もうひとつ、今度は単純に技術的な話だけれど。
今回は演劇祭でミュージカルをやるという話なのだが、劇中劇での役名を、元の名前の漢字名にしているのはうまいなあと思った。例えば、レイチは麗智役を演じている。人数が少ないので、一人何役もこなしている芝居と、芝居外での動きを読ませるに際して、「麗智は○○した」と「レイチは○○した」で書き分けていて読みやすかった。


現代学園異能の神に祈った」


ナラー
ナナイがかわいい


あ、あらすじ書いていないな。
演劇祭に、1年11組も出ることになったよ。演劇祭は普通は3年生しか出ないし、国中からOBとか偉い人とか集まってくるから、レベル高くないと無理だよ。でも、なんか偉そうな先輩にバカにされたし、これは鼻を明かしてやらないとね。大ネルリ(ネルリのご先祖)の話を色々アレンジした話でやることになったよ。演劇祭の審査委員には、ネルリの話の原作者で文化英雄であるコーチキンが来るよ。11組のクラスメイトの家族も来たり来なかったりするよ。レイチの兄も来るけど、父は相変わらずわからんよ。ってか、レイチの父親はいわゆる諜報機関の人らしいよ。コーチキンは実は亡命計画のために学校に来ることが分かって、レイチたちは芝居もしつつ、コーチキンの亡命計画も助けてあげっちゃたりして、最後の最後になってレイチがネルリへの恋心に気付いちゃった。終わり。

耳刈ネルリと奪われた七人の花婿 (ファミ通文庫)

耳刈ネルリと奪われた七人の花婿 (ファミ通文庫)