石川博品『耳刈ネルリと十一人の一年十一組』

ネルリシリーズの最終巻
石川博品『耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳』 - logical cypher scape
石川博品『耳刈ネルリと奪われた七人の花嫁』 - logical cypher scape


もともとLianさんが一巻について

どう見てもポストモダン文学。こんな傑作がラノベ畑から出てくるとは思ってもみなかった。素晴らしい。
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/8918547

書いてたのを見て読み始めたのだが、同じくLianさんは3巻について

連続して読んだ所為で単に慣れてしまっただけかもしれないが、結局ずば抜けていたのは1巻だけだなぁという印象。良くも悪くも普通の物語になってしまった。
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/8927308

と書いているように、3巻は普通の小説であった。
これは良くも悪くもで、実際普通によい話で、最後は泣いた。この手の話に弱いので。まるでサンガさんのごとく。


今回の話はおおむね、7年後からの回想という形になっていて、地の文の文体がいわば「普通」になっているのは、語り手であるレイチがバカテンションで語ることができなくなってしまっているから、かもしれない。
だが、あまりにも普通っぽいので、どこか装っているような感じがしなくもなかったのだが、そこらへんはよくわからない


ネルリが十六歳となって成人を迎え、本国から「未来記」を継承する。そこには未来に起こることが全て書いてあるとされ、ネルリは占いのようなことを始める。
で、ネルリとレイチのそれぞれの誤解をもとにした恋愛話で話が進んでいく。
まあネルリとレイチは一応結ばれるわけだが、ネルリは将来の国王であり、レイチは一般庶民。未来のことに思いを馳せると、前途多難であることは二人とも分かっている。
一方で、十一組の面々もそれぞれ将来に思いを馳せ始めたりしている。というか、この十一組全員で一緒に夜を明かしながら、将来の話や恋バナに花を咲かせるあたりとかで、もうすでにちょっとうるっときてしまう自分w
で、最終章が7年後の再会となっている。
過ぎ去ってしまった青春、挫折を伴った恋愛、そういうよくあるセンチメンタルなお話に弱いですね、自分w
終わりなき日常としての学園モノもまあ楽しいけれど、やはり青春学園モノは既に終わったものへの回想形式がいいんじゃないかと思うわけです。
ラノベだと長期連載になっちゃうとなかなかそういうこともできなくなっちゃうだろうし、その点、ネルリは、いい話だったんじゃないかと思う。


パンツとか腐女子とか時事的オタクネタと、連邦における宗教とか政変とか民族問題とかをごった煮にしてカオスにする、というのは3冊に共通してやっていて、それはそれで面白いところはあったけれど、もうひとつ物足りないところで終わってしまったかもしれない。


ナラー!


耳刈ネルリと十一人の一年十一組 (ファミ通文庫)

耳刈ネルリと十一人の一年十一組 (ファミ通文庫)