青木淳悟『このあいだ東京でね』

読み方が分かってきたというか慣れてきたというか、青木淳悟が読めるようになってきた気がする。
縮尺というかカメラのポジションというか、そういうものがいつのまにかぐいぐいと動かされていく感覚がすごい。磯崎憲一郎にもちょっとあるかもしれないこの感覚。
小説とは一体何だろうか、と思う。
いわばこれは情報の再編集なんだろうなあと思う。
東京の不動産や家を買う際のあれこれ、都内の交通事情、新聞記事といったいわゆる情報を、いわゆる情報として触れる文脈ではなくて、もう少し違う文脈で再編集し直してみせる。その中で、そうした情報以外の個人の心情とか行動とかの描写も紛れ込んでくるけれども、それも再編集された文脈を構成する要素の一つに過ぎない。
グーグルストリートビューから始まって、ストリートビューを見ているのか実際に車に乗っているのか、衛星画像を見ているのか飛行機に乗っているのかどちから分からなくなっていくような、「TOKYO SMART DRIVER」が面白かった。都内の地理に疎いので場所はよく分からないけれど、交通なのも読みやすい一因だったのかも。スピード感とスケール感というか。
1999年9月の新聞記事を再配列した「ワンス・アポン・ア・タイム」も面白い


このあいだ東京でね

このあいだ東京でね