イーガンの最初のころ、読んだやつ、もう内容も忘れてるし、いつか再読したいなあと思っていて、
そのいつかが来た気がしたので、読んだ。
全部じゃなくて、なんとなくピックアップしたものだけ読み返してみた。
どこがどう、とは言えないけど、まあやっぱもう30年近くたっていたりもするので、雰囲気が変わったなあと思わなくもない。
っていうか、イーガンはやはり面白いとは思うものの、しかし、何故こんなに人気あるんだろう、とも思う。
ボーダー・ガード
量子サッカーだけ印象に残っていて、後半がどういう話か全く忘れていた
人類みなアップロードされてて不死化している。
世界が複数あって、別の世界に移住する際には元の世界から後を追えなくしてしまうので、それが擬似的な死として扱われている。
主人公は、長年の友人との別離(上述の擬似的な死)を経験する。一方、同じ量子サッカー仲間に、全く自己開示しない人がいて、しかし、実はその人は、人類にまだ死があった時代から生きていた人だったことが分かる。
チェルノブイリの聖母
私立探偵物
とあるイコンを探してくれ、という依頼
ある富豪の遺産で、オークションで競り落としたのだが、輸送中に行方不明となり、輸送担当者が殺害されている。
謎なのは、その絵は、大量に作られた後世の複製品の1つで、そんな価値はなさそうなところ。
タイトルにある通り、チェルノブイリが絡んでいて、放射能を帯びていてそれが病を癒やすという都市伝説ないし信仰がついていた
しあわせの理由
主人公は、少年時代に脳腫瘍を患う。治療の結果、一命をとりとめるも、ポジティブな感情を全て失ってしまう。30歳頃になって、ある医者・研究者から、脳の神経細胞を復活させる新しい治療法の提案を受ける。
で、これによってポジティブな感情を感じる神経細胞が復活するのだけど、何に対してどう感じるかはリセットされていて、自分でチューニングしていくことになる。
神経細胞を復活させる際に、数千人の神経ネットワークから抽出したパターンが基礎に置かれている。
少年時代が2004年で、物語の主な時期は、2023年くらいだった。この作品自体は1997年の作品(邦訳出たのが2004年)
イーガン作品は、ほとんど現在に近い近未来から遙かな遠未来まで色々あるので、2023年が舞台になっている作品があっても不思議ではないし、SF作品ではよくあることだけれども、書かれた時にはそこそこの未来として書かれていた年代に追いつき追い越してしまっているのはやはり読んでてちょっとしか感慨が湧くところではあるよね。
適切な愛
夫が交通事故で瀕死に。助けるためには、クローンを作ってそこに脳を移植するのだが、そのクローンが成長する間、脳をどうやって生かしておくのか、という問題がある。
で、保険会社が提案してきたのが、主人公の子宮を使う方法。
保険金で賄えるのはこの方法だけですよっていうんで、かなり葛藤しながら、それを受け入れる。しかし、2年間、妊娠5ヶ月相当の状態でいなきゃいけないって……。『WOMBS』みもある話だ。
腹の中にいるのは、自分の子どもじゃなくて夫の脳みそなわけだけど、身体は妊娠状態の反応をするわけで、身体が生じさせてくる母性愛ないし「適切さ」を、どう裏切っていくか
愛撫
芸術SFだ
主人公の警官が、遺体があると通報を受けた家に踏み込むと、地下室に、頭が人間、胴体がヒョウの女性が昏睡状態になっていることを発見する。
19世紀ベルギーの画家フェルナン・クノップフによる「愛撫」という絵に描かれているスフィンクスとよく似ている、ということが判明する。それとともに、芸術作品を現実化することに執心している富豪の存在も。
そして、主人公はこの富豪に拉致され、この富豪の「愛撫」現実化計画の一部に組み込まれるのだった。
頭が人間、胴体がヒョウの女性はキメラ生物で、同じ家で遺体で発見された分子生物学者の女性により作られていた。もちろん、それは、当の富豪の依頼によるものである。
で、この富豪、実は自分のクローンを作って、そこに密かに自分の人格と記憶を移植したという存在(表向きは息子として振る舞っている)。
金と権力を用いて、美術作品の「現実化」を行っているのだけど、マジで、全く同じ情景を再現することのみが目的。主人公は、こいつが目的を達成したら自分は殺されるのではないか、と危惧するのだが、そういうこともなし。その情景の写真を撮ったりもしない。もう少しで影の角度が絵と同じになるから待ってて、うん、オッケー、同じになった、よし、解散、みたいな感じ。ただ、その瞬間のためだけに、手段は選ばず、という感じ。
