土屋健『ジュラ紀の生物』

生物ミステリーPROシリーズ第6弾は、いよいよ本格的な恐竜時代を迎えたジュラ紀
土屋健『エディアカラ紀・カンブリア紀の生物』 - logical cypher scape
土屋健『オルドビス紀・シルル紀の生物』 - logical cypher scape
土屋健『デボン紀の生物』 - logical cypher scape
土屋健『石炭紀・ペルム紀の生物』 - logical cypher scape
土屋健『三畳紀の生物』 - logical cypher scape

表紙からして、ステゴサウルスとアロサウルスの格闘シーンでかっこいい

1.“真の恐竜時代”の始まり
 魚竜とクビナガリュウと翼竜を発見した「化石婦人」
 大絶滅を生き抜いていた“イカ
 ジュラ紀という時代
2.ドイツに開いた“第一の窓”
 海から酸素が消えた日
 ホルツマーデン
 魚竜の出産シーン
 バラバラ胎児のミステリー
 わずかなクビナガリュウ
 ワニ、翼竜、恐竜、魚類……吐いたのはだれだ?
 旅をするウミユリ
3.躍進する爬虫類。そして、カエル
 巨大な眼をもつ魚竜
 クビナガリュウ類、繁栄す
 最古のワニ、登場
 ワニ形類、水辺に進出す
 ワニ形類、水中に進出す
 カエル、跳躍す
4.アジアの恐竜王
 ジュンガル盆地
 巨大恐竜の戦い
 死の足跡
 恐竜の色
 翼竜の“ミッシング・リンク
 哺乳類、水中を泳ぐ
 哺乳類、空を飛ぶ
 最古の真獣類、登場
 そして、寄生虫
5.伝統的恐竜産地
 モリソン
 化石争奪戦
 巨大恐竜たち
 なぜ、彼らはここまで大きくなったのか?
 アロサウルス ――ジュラ紀の王者
 剣竜類「ステゴサウルス」
 ステゴサウルスの感染症
 挿話:剣竜類の系譜
 哺乳類、穴を掘る
6.大西洋の向こう側
 ジュラ紀のヨーロッパ
 最大の魚類?
 トルボサウルス ――アメリカとヨーロッパをつなぐ
 小さな島の小さな竜脚類
 ギラッファティタン――アフリカの似て非なる竜脚類
7.世界で最も有名な化石産地
 ゾルンホーフェン
 始祖鳥――始まりの鳥
 始祖鳥は飛べたのか?
 始祖鳥の翼は何色か
 始祖鳥の標本たち
 新たな標本が意味すること
 最小級の恐竜と、鱗のある恐竜、そしてリスもどき
 2タイプの翼竜
 死の行進化石
 最も出会いやすい、“クモ化石”
エピローグ
 何度も入れ替わっていたアンモナイト
 現れた“異常巻き”アンモナイト

1.“真の恐竜時代”の始まり

メアリー・アニングの話から始まり、外見はイカのようだがイカではないベレムナイト類の話など

2.ドイツに開いた“第一の窓”

ドイツには、「ホルツマーデン」と「ゾルンホーフェン」というジュラ紀の2大化石産地があり、まずはホルツマーデンの話から
ジュラ紀前期に、トアルシアン海洋無酸素事変というのがあって絶滅が起きている。ホルツマーデンはその時に堆積したもの。無酸素ないし貧酸素だったため有機物を分解するバクテリアがいなくて、きれいな化石が残っている
魚竜のステノプテリギウスの標本は、背びれや尾びれの跡がきれいに残っている
出産途中の化石なども
一方、クビナガリュウは化石が少なく、完全体の数はわずか12体といわれているが、ホルツマーデンからは完全体の化石も産出
クビナガリュウのプレシオサウルスは主に魚を、魚竜のステノプテリギウスは主に頭足類を食しており、棲み分けがなされていた
ホルツマーデンからはさらに、ワニ、翼竜、魚類やウミユリも発見されている。このウミユリは、大量に流木にくっついて漂流していた

3.躍進する爬虫類。そして、カエル

魚竜の強膜輪の化石から、開放絞り値を調べた研究がある
この数が小さいと暗闇でも見える。魚竜のオフタルモサウルスはネコ並の値をしており、深海でも活動可能だったのではないか、と。
また、首の短いクビナガリュウ=プリオサウルス類、彼らは頭がでかい
三畳期末で多くのクルロタルシ類が絶滅し、ワニ形類だけが生き残る。もともと直立型で内陸に住んでいたが、ジュラ紀後期になって、這い歩き型で水陸に生息する現生のワニ類そっくりの姿をもったワニ形類が現れる
また、完全に水棲となって、尾びれをもち、足も鰭脚と化した種も
三畳紀に現れたカエル類は、いよいよ現生のカエルらしい姿となり、「跳躍を始めたと断言できる最古のカエル」も現れる

4.アジアの恐竜王

アロサウルスの近縁とされるシンラプトル
最大級の首の長さのマメンキサウルス
マメンキサウルスの足跡は、深さ1〜2mほどの泥沼と化し、そこにはまって死んだ恐竜も発見されている。そこには、植物食性の獣脚類リムサウルスや、ティラノサウルス類のグアンロンがいた

メラソームをつくる小器官が発見され、初めて色が科学的に分かる恐竜となったアンキロウニス
ランフォリンクス類(首が短く尾が長い)とプテロダクティルス類(首が長く尾が短い)とをつなぐミッシング・リンクを埋める存在ともいうべき、ダーウィノプテルス(首が長く尾も長い)

まるでビーバーのような哺乳類カストロカウダや、まるでモモンガのような哺乳類ヴィラティコテリウム。どちらも現生のビーバーやモモンガとのつながりはないが、哺乳類が恐竜の陰でこそこそ暮らしているだけでなく、多様性を持っていたことが明らかになった。どちらも2006年の発見。
寄生虫

現生の哺乳類の多くは真獣類で、最古の真獣類であるジュラマイアは2011年に発見されており、「生命大躍進」展で見られるらしい

5.伝統的恐竜産地

かの有名な、アメリカのモリソン層
コープとマーシュのいわゆる骨戦争が行われたところ
二人あわせて130種を発見したが、後の研究で重複が明らかになり、現在も有効とされているのは28種らしい


モリソンから発見された史上最大の恐竜はなんといってもスーパーサウルス
ただし、ディプロドクスの特に大きな個体なのではないか、という指摘もある
スーパーサウルスもアパトサウルスもディプロドクス類
一方、ディプロドクス類とは別の竜脚類としてカマラサウルスがいる。雨季と乾季で「渡り」をしていたのではないかと言われている(歯の酸素同位体の分析による)


モリソン層のクリーブランド・ロイド採掘場は、発見された恐竜の化石のうち70%、個体数46個体という大量のアロサウルスが発見されている。沼地だったのではないかとか、小さな水飲み場だったのではないかなどの説があるが、まだその謎は解明されていない


ステゴサウルスの骨板について、2010年、12年にCTスキャンを撮ったり薄切りを顕微鏡で観察したりするなどして、その構造が分析され、血液を通して体温調整に使っていたという説が有力となってきた
また、スパイクが頑丈であることも明らかになっている。
一方、噛む力は非常に弱かった。2010年にコンピュータ・モデルを使って噛む力を解析し、最大でも275Nだったという研究結果が出た。ちなみにヒトの噛む力は749N
さらに、2014年には骨に感染症の痕跡が発見されている


鎧竜について
皮骨を持っているが、あれはどの骨とも関節しておらず、皮膚の中に浮いているような状態らしい


剣竜のフアヤンゴサウルス、肩にもスパイクがついてる


ツチブタのような哺乳類フルイタフォッソル

6.大西洋の向こう側

ジュラ紀のヨーロッパは、大部分がテチス海の浅い海の底だった
リードシクティスは史上最大の魚類
尾びれだけで2.9mある。ただし、全身骨格は見つかっていないので正確な大きさは分かっていない。27mという推定があり、これであれば史上最大の魚類である。別の推定では、16.5mというものがあり、これだとジンベイザメが最大18mなのでわずかに及ばないが、それでも巨大
トルボサウルス:ヨーロッパとアメリカ双方で発見されていて、当時両大陸には陸橋があったかも
エウロパサウルス:竜脚類だが、現在のアジアゾウ程度のサイズしかない。当時のヨーロッパは島嶼部であったため、小型化したと考えられる


ギラッファティタン
ブラキオサウルスがギラッファティタンになった話、以前も別の本で読んでいたけど、忘れていた。改めて。
ギラッファティタンになった、といっても、ブロントサウルスがアパトサウルスになったみたいな先取権の話ではない。ブラキオサウルスという名前もちゃんと残っている。
ブラキオサウルスには、アメリカ・モリソンで発見された「ブラキオサウルス・アルティソラックス」と、タンザニア・テンダグルで発見された「ブラキオサウルスブランカイ」がいたのだが、研究が進むうちに、この2種が同属ではなく別属であることが分かってきて、ブランカイの方が、「ギラッファティタン・ブランカイ」となった、と。
また、昔は頭の上に鼻の孔がある復元図もあったが、今は普通の位置にある

7.世界で最も有名な化石産地

最も有名な化石の産地、ドイツ・ゾルンホーフェン
ゾルンホーフェンは、石灰岩の産地で、石版印刷=リトグラフによく使われており、マネ、ドガロートレックゴーギャンドラクロワゴヤも使っていた、とか。現在でも、建材として利用され、JR柏駅にも使われている、とか。
ゾルンホーフェンは始祖鳥が発見されたことで有名
始祖鳥の化石は全部で11体しか発見されていないのだが、この章ではその全ての標本の写真が掲載されている。
ロンドン標本(1861年報告)、ベルリン標本(1876年発見)、マックスベルク標本(1956年報告、現在所在不明)、ハーレム標本(1855年発見、始祖鳥と同定されたのが1972年)、アイヒシュテット標本(1951年発見)、ゾルンホーフェン標本(発見年不明)、ミュンヘン標本(1992年発見)、ダイティンク標本(1990年発見、個人所有)、ブルガーマイスター・ミュラー標本(2004年発見)、第10標本(発見年不明、アメリカ・ワイオミング・ダイナソーセンター所蔵)、第11標本(2014年報告)
第12標本も発見されたという情報も未確認ながらある


2012年に発見されたスキウルミムスは全長70cmほどで、トップクラスの保存率をほこる恐竜化石で、尾の付け根や身体の一部に羽毛が残されている


ジュラ紀の生物 (生物ミステリー(生物ミステリー プロ))

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