土屋健『白亜紀の生物』

生物ミステリーPROシリーズ第7、8弾は、白亜紀
しかも上下巻!!
土屋健『エディアカラ紀・カンブリア紀の生物』 - logical cypher scape
土屋健『オルドビス紀・シルル紀の生物』 - logical cypher scape
土屋健『デボン紀の生物』 - logical cypher scape
土屋健『石炭紀・ペルム紀の生物』 - logical cypher scape
土屋健『三畳紀の生物』 - logical cypher scape
土屋健『ジュラ紀の生物』 - logical cypher scape


上巻の表紙はアンモナイト
下巻の表紙はティラノサウルス
と、古生物の王様が揃い踏みという感じ
もちろんメインは恐竜の話だが、それ以外の生物についてもページがさかれている。
恐竜でかいなーさすがだなーと思うのだが、意外と恐竜の子ども食われてるぞってのもあって、恐竜以外の生物も意外と繁栄していたことがわかる。

(上巻)
1. 羽毛恐竜の“聖地”
2. 広大な恐竜化石産地「モンゴル」
3. 「レバノン」,温かく浅い海の記録
4. “名脇役”たち
5. 日本の恐竜たちと,その他の爬虫類
6. 繁栄を極める爬虫類と,生き残りの動物たち


(下巻)
7. 翼竜大産地,「ブラジル」
8. The Western Interior Sea !!
9. 恐竜たちの楽園「ララミディア」
10. ティランノサウルス
11. 世界の恐竜たち
12. 第5の大量絶滅事件

1. 羽毛恐竜の“聖地”

中国、熱河層群
ポンペイのように火砕流に巻き込まれたと見られる
1996年に発見されたシノサウロプテリクスに始まり、プロトアーケオプテリクス、カウディプテリクスなど羽毛恐竜が多く発見されている
ミクロラプトル・グイ:四肢に翼がある→後肢を前肢と並行にして「複葉機」のようにして飛んだ説がある一方、位置などはあまり関係ない説も
羽毛を持ったティランノサウルス類=ディロング、ユティランヌ
これまで羽毛恐竜は小型のものが多かったが、ユティランヌスは9mと大型(タルボサウルスに近いサイズ)
当時、熱河層群のあった場所は寒かった、とも


哺乳類レペノマムス
胴体長80cmと、筆者の家のラブラトール・レトリバーと同じくらいのサイズ
恐竜の幼体を食べたと考えられている
現生の哺乳類との直接的な繋がりはない


現生の哺乳類の直接の祖先:真獣類のエオマイア
樹上性でネズミのような姿
絶滅を免れたのは、樹上性のおかげだったかもしれないし、そうでなかったかもしれない


被子植物登場
古生代中生代新生代という動物をもとにした時代区分とは別に、古植代、中植代、新植代という時代区分があり、中植代はペルム紀から、新植代は白亜紀から、と動物のそれよりも早く始まる
被子植物と昆虫の共進化が起こり、それぞれ植物界、動物界で最大の多様性を持つに至る

2. 広大な恐竜化石産地「モンゴル」

最初から、ヴェロキラプトルとプロトケラトプスの「格闘恐竜」標本が見開きでばーんと載っている
これ、神流町恐竜センターに所蔵されているらしいが、自分は去年科博でやっていた「大恐竜展―ゴビ砂漠の驚異」 - logical cypher scapeで見た。これほんと、写真でも迫力あるが、実物見ると「すげー」ってなる。これがこのままの姿で発見されたっていうんだからほんとすごい
イカニアも同じ恐竜展で見た
オヴィラプトルとキティパティ
タルボサウルス
ここらへんも神流町恐竜センター所蔵の標本写真が載っている
タルボサウルスは、生態系の上位者だったわりに個体数が多くて謎らしい
謎といえば、デイノケイルスとテリジノサウルス
デイノケイルスは、でかい腕だけ見つかってあとは謎、という恐竜だったが、2006年以降の調査で全貌が明らかに。2014年にイ・ユンナムと小林快次が論文を発表している。しかし、全貌もかなり不思議な恐竜で、スピノサウルスのような帆、背骨は竜脚類に、足の骨はハドロサウルスに似て、分類場はオルニトミモサウルス類、大きさは11mとタルボサウルスを上回る。オルニトミモサウルス類は普通俊足だが、デイノケイルスはむしろ鈍足で、また、胃の中から胃石と魚の骨が確認されことから、雑食だと分かっている。
テリジノサウルスも、7.5mと大型の獣脚類で、こちらはしかも植物食。前足の長い爪を持つが、肉を切り裂くようなタイプのものではなく、役割はいまだ謎

デイノケイルスもテリジノサウルスも、20世紀までは「謎の恐竜」の代名詞だった。しかし、研究の進展は、かつて「謎」といわれていたその姿や生態を解き明かしつつある。(p.63)

3. 「レバノン」,温かく浅い海の記録

こちら、恐竜から離れて魚類などの話
レバノンにおける化石の歴史は古く、文章で言及されたのは12世紀ないし15世紀といわれ、図入りの記載も18世紀から、科学的な研究は1816年から行われているという。
こちらの章は、城西大学の大石コレクションからの写真が多く掲載されている。
どれも保存状態がよくて、化石というか、魚拓か! ってくらいに鰭の形状がはっきりわかる。場合によって鱗のあとが残っているものもある。
さらにレバノンから発見された化石ですごいのは、タコの化石
むろん、タコというのは普通なら化石には残りにくい。イカやタコの化石として多く発見されるのはカラストンビの化石らしい。ところが、こちらは、確かにはっきりと「あ、タコだ」って分かる形で残っているのである。しかも、タコスミ付きで。
化石って本当に色んな種類があるんだなーっていうのは、この「生物ミステリーシリーズPRO」全体を通じて思うところだけど、骨以外にも色々残っているものである

4. “名脇役”たち

アンモナイトをはじめとする海棲無脊椎動物について
アンモナイトでは、特に異常巻きアンモナイトがたくさん紹介される。上巻の表紙もそう。
異常巻き、というのは、アンモナイトと言われて一般に想像する普通の巻き方以外の総称ということで、別に障害・病気などによる異常ということではない
アンモナイトの産地としては北海道が有名。三笠のアンモナイトは小さい頃に見にいった記憶がある。
あと、淡路島もアンモナイト産地らしい。淡路島って、なんか北海道に似てるね、あそこ、牛乳とタマネギも有名だし。
表紙右側のアンモナイトは、ニッポニテル・ミラビリス
これ、日本古生物学会のシンボルマークでもあるらしい。
発見当初、奇形と思われたのもむべなるかなと感じられる、かなり奇妙なねじくれた形をしているが、1980年代に愛媛大の岡本隆がコンピュータシミュレーションによる研究を導入。規則性のある成長パターンが示された。また、パラメータを少し変えると、全然違う形になることも判明。見た目の上では全然違うユーボストリコセラス(バネのような形)が実は近いのではないか、という示唆が得られている。
ユーボストリコセラスには、右巻きと左巻きがある。性的二型説もあるが、時期が下るにつれて右巻きが増えているので、これは否定されている。いまだ理由は不明。
アンモナイトについては、これだけ有名ながら、生態は謎に包まれている


ベレムナイト
中生代を代表する頭足類。見た目はイカだが、体内に石灰質の殻を持つ。
世界中から産出するが、太平洋のベレムナイト類は、他の海域よりも3000万年以上早く、白亜紀の半ばころに姿を消す。北大の伊庭靖弘によれば、ベーリング陸橋の出現が何か影響したのではないかと指摘する。また、現生のイカ・タコ類は太平洋から生まれ来たのではないか、とも。
さて、イカといえばダイオウイカブームは記憶に新しいが、白亜紀にも巨大イカはいた。2014年、北海道羽幌町で発見されたハボロテウティスは、推定10〜12m(ちなみにダイオウイカは最大14.5m)。ちなみに、さきほどのタコの化石と違い、全体の姿が分かるような化石ではなくて、発見されているのはカラストンビ(顎)の化石
また、タコについても、同じく2014年羽幌町から、2.4mと推測されるナナイモテウティスが発見されている。


白亜期末の絶滅は有名だが、白亜紀半ばにも中規模の絶滅があったらしい
詳しくは『絶滅古生物学』と


この章では、二枚貝についても紹介されている
巻き貝型二枚貝とか、もうわけわからんねw
厚歯二枚貝というのが、現代のサンゴ礁があるようなところに、サンゴの代わりに繁栄していたとか。これは白亜紀だけ。それまではやっぱりサンゴ



熱水環境には化学合成生態系というのがあるけど、実は熱水環境だけでなく、鯨の遺骸の周りにも成立するらしい(鯨骨群集と呼ぶ)
で、白亜紀には、クビナガリュウの遺骸の周囲に同様の生態系があったと見られる。2008年に、ポーランドアンドレイ・カイムらが報告している。竜骨群集。

5. 日本の恐竜たちと,その他の爬虫類

まずは、恐竜じゃないけど、フタバスズキリュウことフタバサウルス・スズキイから。発見されたのは1968年だけども学名がついたのは2006年。ちなみに、「クビナガリュウ」という訳語も、フタバスズキリュウの発見を契機につくられたらしい。
日本の恐竜産地といえば手取層群
ここから恐竜が発見されたのは1982年。やはり高校生の松田亜規が獣脚類の歯化石を発見、長谷川善和がこれを鑑定し、勝山で発掘調査を開始した。ちなみに、長谷川はフタバスズキリュウの際にも発掘調査を行っている。
勝山市北谷層からは、2000年にアロサウルスの仲間、フクイラプトル・キタダニエンシスが、2003年にイグアノドンの仲間、フイクサウルス・テトリエンシスが、2010年には竜脚類、フクティタン・ニッポネンシスが報告されている。
また、手取層群の石川県側からは、角脚類、アルバロフォサウルス・ヤマグチオラムが2009年に報告されている。角脚類は鳥盤類の原始的なグループ
また、兵庫県丹波市からは、2006年に発見され2014ン年に新種認定された、タンバティタニス・アミキティアエ
さらに、2003年に発見され、現在発掘調査が進められている、むかわ町(当時穂別町)のハドロサウルス類がある。こちらは、日本で初めての「全身骨格」の可能性が高く、また新種の可能性ある。海で堆積した地層にあたり、死んだ後海に流されてきて化石化した(つまり他の動物に食べられなかった)と見られる。
恐竜ではないが、カガイナイアス、クワジマーラという爬虫類の新種も石川県で発見されている。クワジマーラは、トカゲとしては最古の植物食の記録


6. 繁栄を極める爬虫類と,生き残りの動物たち

まずはケツァルコアトルスを代表とする翼竜のアズダルコ類
しかし、謎が多く、体重も食性も不明。2008年には、マーク・ウィットンとダレン・ナイシュ*1が、空を飛ばずに地上を歩いていたという説を発表している


中生代の3大海棲爬虫類
=クビナガリュウ類、魚竜類、モササウルス類
魚竜は、この中では最も古いが、白亜紀に入ってから多様性が減り白亜紀前期には多くが姿を消し、プラティプテリギウスのみがかろうじて白亜紀後期まで生き延びていた、と言われていた。
が、2014年、イギリスとフランスの白亜紀後期の地層からプラティプテリギウス以外の魚竜類が発見される。テチス海は、魚竜の避難場所となり、多様性が保持されていた。また、ここから発見された魚竜類はそれぞれ異なるニッチをもっていた、とも。
モササウルス類は、白亜紀のなかばになって登場し、海洋生態系の頂点となった
モササウルス類モササウルスの発見は古く、1780年マーストリヒトの鉱山から発見されている


ワニ形類サルコスクス
なんと全長12m
現生のワニとは少し違うグループで、直立歩行する
ワニやヘビの進化史についても色々と書いてある(ヘビは地上で進化したか水中で進化したかなど)が、面白かったのは、恐竜の卵を狙うヘビがいたという話
また、両生類に目を向けると、41cmの巨大カエル、ベルゼブフォというのがいて、こいつは孵化したばかりの恐竜も喰ったと考えられている。
両生類については、イクチオステガのグループの生き残りもいたらしい

7. 翼竜大産地,「ブラジル」

レバノンの化石もやばかったけど、ブラジルの化石はさらにやばい!
「立体化石」!
もともと汽水域であったが、突如として塩分濃度が上昇して大量死が発生、そして死後1時間以内に化石化が始まる「メドゥーサ・エフェクト」があったという
何これ、魚のミイラ? とでも思うような、完全に立体的に魚の姿が保存されている。
これまた、城西大学大石コレクション


こちらの章のメインは翼竜
ツパンダクティルス、タペジャラ、タラッソドロメウス、トゥプスアラ、カイウアジャラなど、トサカが非常に特徴的な奴らが多い
その他、最古の海ガメ、シーラカンス、昆虫他節足動物など

8. The Western Interior Sea !!

白亜紀の当時の北アメリカは、西部に海が入り込んでいて、2つの大陸に分断されていた
西をララミディア大陸、東をアパラチア大陸といい、分断していた海が「ウエスタン・インテリア・シー(西部内陸海道)」である。


シファクティヌス
5.5m以上の魚
丸々魚一匹を飲み込んだ状態で発見された化石もある捕食者
シファクティヌス、飲み込まれた方であるギリクス、さらにイクチオデクテスをあわせて「イクチオデクテス類」
ギリクスはこの3種の中では一番小さいがそれでも2m、歯が非常に小さく濾過食者ではないかとの指摘もあるが、この大きさなら歯がなくとも小魚を丸呑みできる、とも。


サウロドン
1〜2mほどで、メカジキのように吻部が鋭くとがっているが、メカジキとは違い下顎が伸びている


最強のサメ・クレトキシリナ
サメは軟骨魚類なので歯以外の部分が化石に残りにくいが、例外的に全身化石が残っている
全長5〜6m、推定で最大9.8mとも言われている。
前述のシファクティヌスはおろか、モササウルス類、クビナガリュウ類、海に流れ着いてきた恐竜をも襲っていた
エスタン・インテリア・シーには、他に、スクアリコラックス、クレトダスといったサメも
スクアリコラックスは、鋸歯を持っていた
クレトダスは、北海道でも発見されている


また、巨大カメ・アーケロンや、クビナガリュウ類の代表格エラスモサウルスも
エラスモサウルスには胃石が発見されているが、バラストと言われている
首の短いクビナガリュウ、メガケファロサウルス
胎生が確認されたポリコティルス


モササウルス類
クレトキシリナが絶滅後、大型化したと言われている
従来、モササウルスの尻尾はしだいに細くなる形状で書かれていたが、2010年に報告されたプラテカルプスには尾びれの証拠があった
プログソナドンは、アンモナイトやウミガメを食した


翼竜
プテラノドン
翼開長7.25mにもなる大型の翼竜
ただし、トカサも身体の大きさも小さい個体も発見されており、性的二型と考えられている
スクアリコラックスの噛み跡の残っている化石もある
ニクトサウルス
プテラノドンより小型だが、非常に長いトサカを持つ。睡眠と出産時以外はずっと空を飛び続けることが可能だった


ヘスペロルニス
翼を失った鳥

9. 恐竜たちの楽園「ララミディア」

イネ科がないだけでほぼ現在の植生と同じ森林が広がっていた


トリケラトプス
2006年、ホーナーとグッドウィンが成長段階についての研究を報告
幼体から成体まで5段階に分け、角の長さ、ソリ具合、フリルの縁の形状が変化していくことを示した。
角は次第に長くなっていくが、青年期には後ろに反るけれど、大人になってくると前方向に倒れていき相対的に短くなる


パキケファロサウルス
本当に頭突きをしていたのか?
2004年、ホーナーとグッドウィンが頭蓋骨を調査し、ショックを逃がすスポンジ構造があるか調べた。幼体にはあったが成体にはなかった
2011年、ステゴケラスの頭骨をCTスキャンして、頭突きを行う現生哺乳類(シロハラタイガー、ジャコウウシなど)と比較したところ、成体にもクッション性があることがわかった


鳥脚類
形状的には地味だが、ララミディアでもっとも繁栄した恐竜
デンタルバッテリー
歯の構造が複雑(6種類の組織からなる、現生のウマやウシでも4種類)


オルニトミムス
翼の起源についての仮説→土屋健『そして恐竜は鳥になった』(小林快次・監修) - logical cypher scapeに同様の話があった


他、アンキロサウルス、トロオドンとディノサウロイド、ディノニクス


巨大ワニ・デイノスクス
12mとサルコスクと同じ大きさ
ティランノサウルスとも同じ大きさ
50歳と長寿で、顎の噛む力は1万7000ニュートン
アパラチアにも生息していたが、アパラチアのデイノスクスは8mと小さい

10. ティランノサウルス

1902年、ヘンリー・オズボーンに雇われた化石ハンター、バーナム・ブラウンがモンタナ州で骨盤や大腿骨を発見
1905年、オズボーン、ティランノサウルス・レックスの論文を発表
その後、1946年に1標本発見されたのみで発見は続かなかったが、
1960年代に3標本、80年代に7標本、90年代に19標本が発見
特に保存率がよいのが、90年に発見された、通称「スー」
スーは、所有権争いでも有名になった


12m、6t
この大きさは、ティランノサウルス類の中でも最大、獣脚類の中でも屈指の大きさ
ライオン24等分の体重
ジュラ紀最強のアロサウルスも、8.5m、1.7t
そして、噛む力が破格
3万5000ニュートン
奥歯にいたっては5万7000ニュートン!!
他の動物の噛む力と比較すると
デイノスクス(前述のワニ):1万7000N
アロサウルス:6000N
ダンクレオステウス(デボン紀最強の肉食魚):4400N、奥歯で5300N以上
アリゲーター:4000N
ホオジロザメ:3100N
オオカミ:1500N
人間:1000N未満
「私の噛む力は57000です」とでもいったところか
歯も極太で、大きいものでは25cm、鋸歯といわれるギザギザとした構造があった


脳函の形状をCTスキャンする研究で、嗅覚が鋭かったことがわかっている


糞の化石が発見されており、そこから骨の欠片が見つかっており、骨ごとバリバリ喰ったのだということがわかる


骨には年輪があり、そこを調べると成長率がわかる
1年間で767kg、1日かたり2.1kgという驚異的な速度で成長していた、という2004年の報告がある


ララミディアのもともとの覇者は、アロサウルス類のシアッツ
9800万年前の地層から発見されている
ララミディア最古のティランノサウルス類は、8800万年前の地層から発見されたリトロナクス
ティランノサウルス類自体は、ジュラ紀のアジアやヨーロッパで確認されており、ベーリング陸橋を渡ってきたと考えられている
大きさは7.5mとティランノサウルス類のなかでは大きい方ではないが、幅広の頭蓋骨をもち「進化型のティランノサウルス類」とされる
アジアのティランノサウルス類について
ディロングやユティランヌスは、リトロナクスより古く原始的なティランノサウルス類
タルボサウルスは、リトロナクスよりも新しく進化的なティランノサウルス類で、ララミディアで生まれたティランノサウルス類がベーリング陸橋を再び戻ったのではないか、と指摘されている。
カナダで発見されたアルバートサウルスは、リトロナクスより新しいが、原始的なティランノサウルス類


11. 世界の恐竜たち

ここまでで紹介しきれなかった、他の地域から発見されている変わり種の恐竜たち


アルゼンチノサウルス
全長30m以上、体重は50tとも70tとも言われている
ただし、この体重から体温を見積もると、48℃とあまりにも高すぎるものになってしまって謎


ピノサウルス
1912年エジプトで初めて発見されるも、1944年第二次大戦の空爆で焼失
その後も部分的な骨しか発見されて来なかったが、2009年の恐竜博で、長谷川、小林、マット・ラマンナによって世界初の全身骨格が復元
全長は14〜18mとティランノサウルス・レックス以上の巨体で、魚を食べていた。
2014年、ニザール・イブラヒムによるコンピュータ・シミュレーションと3Dプリンタを使った復元骨格模型による研究で、獣脚類としては珍しい四足歩行と水中生活の可能性が高いとう説が発表された。


カルカロドントサウルス
アフリカ北部から発見された12mのアロサウルスの仲間
ギガノトサウルス
同じくアロサウルスの仲間で、アルゼンチンに生息、13〜14mと推測。ティランノサウルス・レックスと比較するとスリムだが、サイズが大きいので体重も8tと推測。しかし、2001年の研究によれば、時速50kmで走れたとか。


変わり種の竜脚類として、アマルガサウルスニジェールサウルス


白亜紀のあいだ、独立した大陸だったインド
研究は進んでいないが、2003年に9mの獣脚類、ラジャサウルスが報告されている
また、糞化石から、イネ科のものと思われる「プラント・オパール」が確認されており、イネ科の植物=草を食べていた恐竜がいたことがわかっている。ただし、「草原」があったのか、常に草を食べる「草食」恐竜だったのかなどは分かっていない


南極大陸からも恐竜は発見されている
鎧竜のアンタークトペルタの歯化石

12. 第5の大量絶滅事件

恐竜絶滅は後藤和久『決着!恐竜絶滅論争』 - logical cypher scapeが詳しい
チチュルブクレーターは1991年に発見されたけれど、「重力異常」調査とか関連しているらしい
あと、2014年に発表された酸性雨仮説についても載っている

エピローグ

白亜期末には恐竜だけでなく、三大海棲爬虫類(魚類はそれ以前だが)、アンモナイト、ベレムナイト、厚歯二枚貝も絶滅している
生き延びた哺乳類と鳥類も、実は多くのグループがこの時期に絶滅している。
爬虫類は、体重25kgが境になったらしい
逆に、昆虫は無傷
アンモナイトとよく似た生物にオウムガイがいる。アンモナイトは絶滅し、オウムガイは生き残った。卵の大きさの違いが関係していたかも知れない。アンモナイトの卵は小さく、浮遊性だったが、オウムガイの卵は大きく、浮かばない。

白亜紀の生物 上巻 (生物ミステリー(生物ミステリー プロ))

白亜紀の生物 上巻 (生物ミステリー(生物ミステリー プロ))

白亜紀の生物 下巻 (生物ミステリー(生物ミステリー プロ))

白亜紀の生物 下巻 (生物ミステリー(生物ミステリー プロ))