土屋健『三畳紀の生物』

生物ミステリーPROシリーズも第5弾となり、ついに中生代
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中生代といえば恐竜の時代
そして、三畳紀中生代の一番最初にあたる時代
しかし、三畳紀はまだ本格的な恐竜の時代到来とはならない
ペルム紀末大絶滅と三畳紀末大絶滅の、ビッグ・ファイブのうち2つの大絶滅に挟まれた時代が三畳紀で、様々な爬虫類が繁栄し、クルロタルシ類(後のワニ類)、恐竜類、単弓類(後の哺乳類)が三つ巴となっていた。
表紙の写真も恐竜ではない


三畳紀の恐竜というと、自分が子どもの頃に知っていたのは、プロコンプソグナトゥス、プラテオサウルス、コエロフィシスくらいなもので、またどれも三畳紀後期であって、じゃあ三畳紀の前期や中期はどうだったんだよ、とうっすら思っていたような気がする
現在、最古の恐竜とされるエオラプトルやエオドロマエウス、ヘレラサウルスも三畳紀後期
本書は全7章の構成となっているが、恐竜が出てくるのはなんと6章である。


魚竜やクビナガリュウなどの海棲爬虫類
カエルやカメ、そして滑空能力をもったトカゲや翼竜
クルロタルシ類などが、恐竜より先に紹介されている。
個人的には、滑空能力をもったトカゲやクルロタルシ類の多様性が印象的だった

1.大絶滅から一夜明けて
 姿を消したものたち
 三畳紀という時代
 カルー盆地の生き残り
 ウラル山脈域の事情
 各地で固有の陸上生態系が築かれる
2.再構築された海洋生態系
 復活をとげたアンモナイト
 糞化石が語る,生態系の回復
 魚竜,出現する
 発見された“魚竜の祖先”
 魚竜,きわめる
 ずんぐり型の海棲爬虫類
 「奇妙な歯」をもつ海棲爬虫類
 クビナガリュウ類に似た海棲爬虫類たち
 「羅平」―期待される新たな発掘地
3.水際の攻防
 尾をもつ“最古のカエル”
 フィッシュ・トラップ!?
 謎に満ちた「長い首」
 腹側だけに甲羅をもつカメ
 カメの起源は海か陸か
4.テイク・オフ!
 肋骨で飛ぶ
 後翼
 奇妙な“鱗”のもち主
 翼竜の登場
 高さによる「棲み分け」が始まった?
5.クルロタルシ類,黄金期を築く
 ワニのようでワニでないものたち
 帆をもつ先駆者
 装甲をもつもの
 走るもの
 そして,頂点に立つ
 イスチグアラストに見る「三つ巴の時代」
 挿話:最古の“共同トイレ”
6.大繁栄の先駆け
 恐竜形類の登場
 最初の恐竜は,どのような姿だったのか?
 すでに始まっていた恐竜の多様化
 そして登場した大型恐竜
 アメリカにいた数百体の小型恐竜
 ひっそりと登場していた我らが祖先
7.第4の大量絶滅事件
 再び発生した「ビッグ・ファイブ」
 溶岩の大量噴出があった?
 隕石衝突があった!?
エピローグ
 なぜ,恐竜は生き残ることができたのか

2 再構築された海洋生態系

三畳紀初期に出現した魚竜
宮城県三陸町から産出したウタツサウルスなど
魚竜の祖先種であるカートリンカスは、復元図がなかなか可愛らしい
カメではないのだけど、カメに似て甲羅をもっているプラコドン類は、しかし平べったい甲羅だったり、2枚にわかれた甲羅だったり、なかなか奇妙な形をしている
アトポデンタトゥスは、上顎の形がかなり変
中国雲南省の羅平(ルオピン)というところが、2008年に発見され、近年注目を浴びている有力な三畳紀の発掘地らしい。

3 水際の攻防

最古のカエル
首が長い(全長6mのうち半分以上が首)の爬虫類。骨自体が長い
カメの歴史
カメの起源は海か、陸か。最古のカメとされるオドントケリスは、海棲だったっぽいが、他の原始的な亀は全て陸上種

4 テイク・オフ!

空飛ぶ爬虫類、といってもまだ翼竜ではない
肋骨から骨が伸びて皮膜がはって、滑空するトカゲ、クエネオサウルス類
そして、かなり特徴的なシャロビプテリクス
後ろ足の方に皮膜がはってあって、デルタ翼機のようになっている。本書では、「震電」や「クフィル」「グリペン」でググれと書いてあった。
それから、ロンギスクアマ。背中にスティック状の鱗が伸びているのだが、何だったのか全然よくわかっていない。そもそも上半身しか見つかっていない
そして三畳紀後期には翼竜も登場
翼竜について書かれた本は少ないらしい。

5 クルロタルシ類、黄金期を築く

三畳紀初期から登場したクルロタルシ類
ワニに似ているがワニとは違う
ワニと違って直立歩行している
帆をもつアリゾナサウルス
装甲をもつアエトサウルス
表紙になっているのは、アエトサウルスの仲間のデスマトクス。肩のトゲが特徴
二足歩行するエフィギア
ティラノサウルスかと見まがう頭部をもつサウロスクス
全長10mの巨体をもつファソラスクス
恐竜もかくやと思わせる多様性を誇っている


アルゼンチンのイスチグアラスト自然公園からは、クルロタルシ類、恐竜類、単弓類が産出して、三畳紀の三つ巴の生存競争が窺える

6 大繁栄の先駆け

三畳紀前期の地層から、恐竜形類のプロロトダクティルスの足跡化石が発見されている。
恐竜形類は、恐竜の祖先
恐竜形類は、1〜2m程度。肉食性のものも植物食性のものも二足歩行のものも四足歩行のものも
最古の恐竜は、三畳紀後期(2億2800万年前)のアルゼンチンで発見されたエオラプトル、パンフォギア、エオドロマエウス。いずれも1m程度の大きさ
ヘルレラサウルスは3〜6m
さらに2億2300万年前の地層から、ピサノサウルスという鳥盤類恐竜が発見されている(上にあげたのは全て竜盤類)
2億年前になり、大型化したものがあらわれる。18mのレッセムサウルス

7 第4の大量絶滅事件

三畳期末にも、ビッグ・ファイブの1つである大量絶滅が起きている
海棲生物ではコノドント類が姿を消し、アンモナイト類のうちセラタイト類が姿を消す
陸上では、単弓類の中で哺乳類に繋がる系譜以外、クルロタルシ類でワニ類に繋がる系譜以外が絶滅
理由はまだ分かってない
隕石衝突説もあって、2012年や2013年に、日本で隕石衝突の証拠になるようなもの(白金族元素やオスミウム)が発見されているらしい

エピローグ

なぜクルロタルシ類は絶滅し、恐竜は生き残ったのか
理由は不明
2008年、イギリスのブルサッテは、種の多様性や進化速度の違いを調べたが、特に違いは見いだせず、恐竜は「運」がよかったのではないかと述べている
一方、2012年、久保らの発表では、恐竜の方が「足が速い」という特徴があり、これが理由だったのではないか、とも。

三畳紀の生物 (生物ミステリー(生物ミステリー プロ))

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