飯田隆『新哲学対話』

プラトンが書かなかったソクラテスの対話編、とでもいうか、まあ二次創作というか。
4本が収録されているが、例えばそのうちの「アガトン」は、『饗宴』のあとも残って話を続けていた4人の対話の記録、ということになっている。
ところで、フィルカルVol.4 No.3 - logical cypher scape2で鬼界が、哲学というのは論文形式で書かれる必然性はなくて、アリストテレスよりも前、つまりソクラテスプラトンは論文を書いてない哲学者だ、ということ書いていて、ある意味では、それの実践編みたいな本とも言えるのかもしれない。
今回、全部は読んでいなくて、ざくっとした軽い感想だけ書く


新哲学対話: ソクラテスならどう考える? (単行本)

新哲学対話: ソクラテスならどう考える? (単行本)

アガトン

よいワインとは何かということについての話
とりあえず、これだけでも読もうと思って、本書を手に取ったところがある。
ソクラテスとアガトン、パウサニアス、アリストファネスの4人が、このワインは美味しいワインだ、というところから、ワインの美味しさというのは人それぞれなのか、そうではないのかということについて話している
めっちゃ美学の話をしている
というか、理想的鑑賞者についての話をやっている感じで、実際、この話ってワインだけでなく芝居にも適用可能だよね、みたいな話もしている。
元々、森さんが、本書の「アガトン」を美学入門として読めるよと薦めていたのがきっかけで手に取ったので、まさに、まさにという感じで読んでいたのが、章末にある筆者コメントでは、もともと相対的真理・相対主義について書こうというところからスタートしていて、書いてみたら美学に近づいていた、書いてみたらヒュームと近い話になっていた驚いた、みたいなことが書かれていて、読んでいるこっちが驚いた


ところで、美学というのは伝統的にはあまり食については扱っていないはずなのだけど、まあでも、食だって美学の対象になるよねという話も現代美学では確かなされていたはずで(あまりよく知らないのでちょっとテキトーなこと言っている)、そういう意味で、ワインをテーマに理想的鑑賞者の話をして美学入門になっている、というのもなかなか面白いのかもしれない。
で、この前、『SFマガジン2019年12月号』 - logical cypher scape2で、暦本純一インタビューを読んだ際に、「食のSFが読みたいという話が、なんか面白そうだなと思った」のも、このあたりがちょっと念頭にあった。

ケベス

ソクラテスが現代世界に転生してきてしまったら、みたいな設定の話
よもや現パロ?
人工知能についての話してる

テアイテトス

言葉を理解するということにとって、「理解している」という感じはどれくらい関わっているのか、という話で
ウィトゲンシュタインの『哲学探究』でなされている議論を下敷きにしたもの
この話も結構面白いと思う

偽テアイテトス

知識のパラドックスについて
時間がなかったので未読