フィルカルVol.4 No.3

まだ、Vol.4 No.1とNo.2を読めてないのだが、ウィトゲンシュタイン特集とかだったので、手に取った
とりあえず読んだ分だけ。
妖怪論の奴も読みたいと思っているのだが、長いので後回し。すみません。
後半、書評および筆者・訳者自身による著作の紹介が続く。書評をさらにまとめる、というのも変な話なので、最低限の言及にとどめるが、読みたい本がどんどん増えて大変、ということだけ言っておきたいw

特別寄稿 「谷賢一『従軍中のウィトゲンシュタイン』(工作舎、2019)を巡る哲学的随想」(鬼界 彰夫)
特集1:『論理哲学論考』と文化をつなぐ 古田徹也『ウィトゲンシュタイン論理哲学論考』出版記念誌上ブックフェア
特集2:山口尚『幸福と人生の意味の哲学』
「神・分析的・実存的―『幸福と人生の意味の哲学』を継続して」(山口 尚)
「山口尚の方法」(長門 裕介)
「何が人生を形づくるのか」(八重樫 徹)
「遠くまで旅する人たちに」(高村 夏輝)
シリーズ:ポピュラー哲学の現在
超訳 ニーチェの言葉』ベストセラーの仕掛け人に聞く 藤田浩芳さん(ディスカヴァー・トゥエンティワン)インタビュー
対談「哲学と自己啓発の対話」第二回(玉田 龍太郎/企画:稲岡 大志)
文化の分析哲学
「新しい民俗学のための妖怪弁神論—妖怪の存在意義、そして伝承の可能性の条件に関する形而上学的考察—」(根無 一信)
「無数の理想を収集する鶴見俊輔—他愛ない夢、想像的変身、感性的横ずれ—」(谷川 嘉浩)
「批評の新しい地図―目的、理由、推論― 」(難波 優輝)
イベント
トークイベント「ネタバレのデザイン」@代官山蔦屋書店(2019年6月26日)(登壇者:森 功次、松本 大輝、仲山ひふみ)
ワークショップ「ビデオゲームの世界はどのように作られているのか?—松永伸司『ビデオゲームの美学』をヒントに—」@大阪成蹊大学(2 0 1 9 年8 月3 1 日)(登壇者:松永 伸司、三木那由他、難波 優輝)
報告
ベオグラードでの国際美学会に参加して」(青田 麻未)
コラム、レビュー、新刊紹介
「コンピュータで世界を再多義化せよ! ミゲル・シカール『プレイ・マターズ』(フィルムアート社)」(吉田 寛)
「倉田剛『日常世界を哲学する:存在論からのアプローチ』」(岩切 啓人)
「古田徹也『不道徳的倫理学講義―人生にとって運とは何か』(ちくま新書、 2019 年)」(酒井 健太朗)
「社会科学の哲学が提起する問い:社会科学は自然科学と同じ営みを目指すべきなのか?そもそも違う営みなのか?」(伊藤 克彦)
シェリル・ミサック『プラグマティズムの歩き方』(上・下)訳者による紹介」(加藤隆文)
「源河亨『悲しい曲の何が悲しいのか:音楽美学と心の哲学』著者による紹介」(源河 亨)
「リサ・ボルトロッティ『現代哲学のキーコンセプト 非合理性』訳者による紹介」(鴻 浩介)

特別寄稿「谷賢一『従軍中のウィトゲンシュタイン』(工作舎、2019)を巡る哲学的随想」(鬼界 彰夫)

『従軍中のウィトゲンシュタイン』という舞台・戯曲の存在は知っていたけれど、自分は未見・未読
広い意味では書評ということになるが、哲学と演劇の関係について考察するというものになっている。
まず、この作品は、『論考』の考察となっていると述べる。
演劇なので、創作部分があり事実とは異なる部分があるのではないかという問題に対して、理解をもたらすためのモデルであると考えれば、事実とは必ずしも一致していなくてもよい(というか、モデルは事実とは一致しない部分を普通持つものである)、とする
その上で、そもそも哲学というのは論文形式で書かれるものだと考えられているけれど、その関係は必然か、と問う。アリストテレスによってその二つは結び付けられていたのであって、ソクラテスプラトンは論文は書いていない。哲学と論文形式は必然的な結びつきではない、と。
また、谷が『探求』でも同様のことをしようとしており、鬼界は、谷による「―」と「……」の使い分けが、『探求』におけるハイフンの用法を読解するヒントになるのではないかという目論見を述べている。
鬼界彰夫『『哲学探究』とはいかなる書物か――理想と哲学』 - logical cypher scape2でも「文体論」ということを述べており、ここでも文体について着目している。

特集1:『論理哲学論考』と文化をつなぐ 古田徹也『ウィトゲンシュタイン論理哲学論考』出版記念誌上ブックフェア

古田徹也、大谷弘、入江俊夫、菅崎香乃、諸隈元、新野安、佐藤暁(フィルカル編集部)、谷田雄毅(フィルカル編集部)が、『論考』と関連するような諸作品を挙げている。
哲学書以外」で、マンガや映画なども含む作品リストとなっている。
例えば、大谷が『カール・クラウス著作集』を挙げていて、入江が、ウィトゲンシュタインが財産の一部を寄贈した表現主義詩人ゲオルグ・トラークルの詩集を挙げている。ところで、全然全く関係ないんだけど、シュピーゲルシリーズにでてくる、リヒャルト・トラクルってもしかしてこの人が元ネタなのか、と思わせる順序*1
諸隈の選書がすごくて、ウィトゲンシュタインが気に入っていたというハードボイルド小説、また、イギリス文化を毛嫌いしていたとされるウィトゲンシュタインが例外的に好きだったというディケンズウィトゲンシュタインが宗教の可能性に開眼したきっかけになったと言われる芝居などのチョイス。最後にマンガも一作紹介されているが、それは、ウィトゲンシュタインの母校であるベルリン工科大学が出てくるから、というチョイス
谷田は、ウィトゲンシュタインやその家族、アンスコムなどの写真を集めた写真集を挙げている

特集2:山口尚『幸福と人生の意味の哲学』

「神・分析的・実存的―『幸福と人生の意味の哲学』を継続して」(山口 尚)

分析的であり、また実存的でもある、ということ

「山口尚の方法」(長門 裕介)

山口が理想とする、「生の現場へ帰還する」分析哲学者についてなど
ところで、今ちょっと自分の頭のなかでごっちゃになっていたのだけど、古田徹也が、個人の問題を倫理学の「故郷」というのと、もしかしてちょっと似てる?

「何が人生を形づくるのか」(八重樫 徹)

あれ、これ読んだと思ったけど、まだ読んでなかった

「遠くまで旅する人たちに」(高村 夏輝)

二人称で書かれた文章

シリーズ:ポピュラー哲学の現在

超訳 ニーチェの言葉』ベストセラーの仕掛け人に聞く 藤田浩芳さん(ディスカヴァー・トゥエンティワン)インタビュー

稲岡さん、長田さん、佐藤さんによるインタビュー
出版の企画、編集に関わる話で、話の内容そのものだけでなく、むしろこういう話が哲学の雑誌に載っているのが面白い

対談「哲学と自己啓発の対話」第二回(玉田 龍太郎/企画:稲岡 大志)

第2回で、話の途中からなので、最初何の話しているのかよくわからなかったが
高校教師をしながら哲学研究をしている玉田龍太郎と、自己啓発の著作がある百川怜央の対談

「無数の理想を収集する鶴見俊輔—他愛ない夢、想像的変身、感性的横ずれ—」(谷川 嘉浩)

鶴見俊輔の文章論から、探偵・忍者論

「批評の新しい地図―目的、理由、推論― 」(難波 優輝)

批評とはこういうものだ、というのではなく、4つの目的、2つの理由、2つの推論の組み合わせによって、様々なタイプの批評を分類するという多元主義的立場

トークイベント「ネタバレのデザイン」@代官山蔦屋書店(2019年6月26日)(登壇者:森 功次、松本 大輝、仲山ひふみ)

webに載ってた記事の再録かな
レポート:代官山蔦屋書店トークイベント「ネタバレのデザイン」(2019年6月26日) | フィルカル

ワークショップ「ビデオゲームの世界はどのように作られているのか?—松永伸司『ビデオゲームの美学』をヒントに—」@大阪成蹊大学(2 0 1 9 年8 月3 1 日)(登壇者:松永 伸司、三木那由他、難波 優輝)

上に同じく
レポート:大阪成蹊大学トークイベント「ビデオゲームの世界はどのように作られているのか?――松永伸司『ビデオゲームの美学』をヒントに」(2019年8月31日) | フィルカル

ベオグラードでの国際美学会に参加して」(青田 麻未)

これ、タイトルそのままの内容

「コンピュータで世界を再多義化せよ! ミゲル・シカール『プレイ・マターズ』(フィルムアート社)」(吉田 寛)

この本の他の書評でも触れられていたが、おもちゃ論が展開されているらしく、気になっている。
キーワードは「流用」

「倉田剛『日常世界を哲学する:存在論からのアプローチ』」(岩切 啓人)

社会存在論の入門書となっているらしい。新書だし、これもとても気になる。
この書評では、いわゆるスタンダードな書評を行った後、さらにつっこんで、美学における関係した論点が紹介されていて、そこだけでも読み応えがある

「古田徹也『不道徳的倫理学講義―人生にとって運とは何か』(ちくま新書、 2019 年)」(酒井 健太朗)

アリストテレス研究者による書評で、後半はその観点から論じられている。

「社会科学の哲学が提起する問い:社会科学は自然科学と同じ営みを目指すべきなのか?そもそも違う営みなのか?」(伊藤 克彦)

アレクサンダー・ローゼンバーグによる社会科学の哲学の入門書*2についての書評。なお、英語で書かれた原著についての書評で、翻訳書があるわけではなさそう。
自然主義と解釈主義の対立、という観点に着目して、本書の内容が紹介されている

シェリル・ミサック『プラグマティズムの歩き方』(上・下)訳者による紹介」(加藤隆文)

訳者による紹介
フィロソフィーのダンスの「ヒューリスティック・シティ」という曲の歌詞と絡めて、紹介されている
ところで、グルーって色が変わるの2029年なんすね。あと10年か。

「源河亨『悲しい曲の何が悲しいのか:音楽美学と心の哲学』著者による紹介」(源河 亨)

心の哲学を用いた美学の本ですよ、という筆者による紹介
1~5章は音楽以外の芸術鑑賞にも当てはまる議論であり、第6章以降はより音楽に焦点を合わせた議論をしている、とのこと

「リサ・ボルトロッティ『現代哲学のキーコンセプト 非合理性』訳者による紹介」(鴻 浩介)

「非合理性」と一言で言っても、実際にはいろいろな非合理性がある。この本では、そうした様々な非合理性の統一理論を作ろうというよりは、まずはそうした様々な「非合理性」の分類、といったことがなされている、と
あと、この本を貫くもう一つのキーワードは「行為者性」であるとのこと

*1:カール・クラウスと同名のキャラクターがシュピーゲルシリーズには登場する。なお、シュピーゲルシリーズの「シュピーゲル」は言語ゲームとは特に関係ないはずだけど、この並びで並べるとあたかも関係しているかのように見えてきてしまうw

*2:ローゼンバーグは、科学哲学の入門書もある。 アレックス・ローゼンバーグ『科学哲学』 - logical cypher scape2