哲学

高橋昌一郎『理性の限界』

本書では、「理性の限界」と銘打った架空のシンポジウムが開催されている。 そこでは、大きく分けて3つのテーマについて話されている。 すなわち、「選択の限界(アロウの不可能性定理など)」「科学の限界(ハイゼンベルクの不確定性原理など)」「知識の…

哲学者を萌え擬人化しよう!

昨日の深夜、twitter上で批評理論や哲学者を萌え擬人化する祭りが勃発した。 様々な人を巻き込んで、混沌のうちに拡大を続けたその祭りの様子は、既にたんぶってあるので、以下よりご覧あれ。 批評・哲学の萌え擬人化 140ポストもあって、クソ長いけど。 …

イアン・ハッキング『表現と介入』

科学的実在論を扱った、科学哲学の本。 タイトルにあるとおり、本書は大きく分けて、表現についてと介入について扱っている。 この場合、表現というのは、科学の理論のことであり、介入というのは、実験や観察や測定のことである。 従来、哲学者があまり注目…

「わたし」とは何か

順列都市、パーフィット、人格の同一性(らいたーずのーと) 順列都市、パーフィット、恐怖の在り処(らいたーずのーと) 以上のエントリに加え、さらにその後も、SuzuTamakiとtwitter上で話したことを踏まえつつ、概念の整理としてエントリを起こす。 この…

堀田純司『人とロボットの秘密』

何となく衝動買い。 表紙をめくると、石黒教授の作ったアンドロイドの写真が出てくるのだけど、やっぱすごいなこれ。 全てではないけれど各章の前フリが、いちいちロボットアニメなのは、仕方がないといえば仕方がないけど、またかって感じもする。アトムや…

野矢茂樹『ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む』

今、『論理哲学論考』そのものも途中まで読んでいる。 いずれ、最後まで読む。 ウィトゲンシュタインは面白い。 『論考』でも『探求』でもそうだが、とにかく現実に成立していること(あるいは日常言語)から始めるという態度は、いいなあと思う。 言語観に…

『現代文学理論』

筆者が3人いて、タグもいっぱいつけてタイトルが長くなるので、筆者名をタイトルでは省略した。筆者は土田知則、青柳悦子*1、伊藤直哉である。 いわゆる、批評理論についての概説書である。 「はじめに」と「おわりに」で、筆者ら自身が、単なる入門書には…

門脇俊介『現代哲学』

著者は、哲学を、反自然主義と自然主義の対立によって捉える。 自然主義とは、あらゆるものが自然の事物であり、自然法則に従うという考え方であり、 反自然主義は、しかし人間*1の中には、自然的でないものがあるという考え方である。 著者は、哲学とは、第…

熊野純彦『西洋哲学史』

「古代から中世へ」と「近代から現代へ」の2巻本である。 この本が一体どういう本であるかは、著者によるまえがきにはっきりと書かれている。 やや長くなるが、この本のコンセプトや特長が分かりやすくまとめてあるので、引用する。 この本は、三つのことに…

スピリチュアルと専門知

昨日のクローズアップ現代が、スピリチュアルブームについて取り上げていた。 それを見て、少し考えたことをつらつら。 今、30代を中心に、スピリチュアルブームが起こっているらしい。 占い師に相談を持ちかける人が、男女問わず増えているらしい。 会社…

プラトン『メノン』

「大学で哲学やってます」とかいうくせに、実はプラトンとか一冊もまともに読んだことがなかった。だからこそ、さっきの文には「一応……」という但し書きがついてまわる。 いや、プラトンに限らず、哲学やるなら読んでおけよ、みたいな本を結構読んでいない。…

伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』

クリティカルシンキングについての入門書であると同時に、哲学の、特に懐疑論に関する(多分)最新の議論が紹介されているので、色々と読み甲斐のある本。 序にて『だめんず・うぉ〜か〜』から、西洋哲学を専攻している男と付き合っている女性に対する、「実…

『論理学』グレアム・プリースト

岩波の1冊でわかるシリーズから『論理学』。 既に、「1冊でわからない」という声も挙がっているが*1、確かにこの本で、論理学について学ぶことは難しいと思う。 この本はどちらかというと、論理学の哲学についての本である*2。 最後の訳者解説にあってわか…

「知っている」とはどういうことか

この前、twitter上でこんなことを書いた。 sakstyle: 信念というのは、心とか頭のなかで思ったり考えたりしている事柄。日本語で信念というと、もっと強い意味が込められているけど、哲学界隈ではその程度の意味で使われている。 http://twitter.com/sakstyl…

『科学哲学』サミール・オカーシャ

岩波から出ている「1冊でわかる」シリーズの新刊。 「1冊でわかる」というタイトルに名前負けせず、科学哲学が一体どういう営みであるかということが、コンパクトにまとめられている。 過度に抽象的にならず、具体的な例が適宜用いられているし、また何故…

『哲学者は何を考えているのか』ジュリアン・バジーニ、ジェレミー・スタンルーム

イギリスで発刊されている一般向け哲学雑誌『フィロソフィアーズマガジン』に収録されたインタビューを、加筆の上収録した本。 まず、インタビューされている人のラインナップが豪華。 しょっぱなからシンガーで始まり、ドーキンス、ソーカル、E.O.ウィルソ…

入不二基義『時間は実在するか』

マクタガートによる、時間の非実在性の証明について解説すると共に、筆者自身による時間論も展開される。 これが、滅茶苦茶面白い! それにしても、時間について考えるということはなんと困難であることか。それはつまり、どれだけ人間が時間の中にどっぷり…

橋元淳一郎『時間はどこで生まれるのか』

この本は熱い! 200ぺージもない、薄い本だが、哲学的熱意(?)がこもっている。 何が熱いかというと、物理学について語りながらも、自らの哲学的立場をかなり強調していること*1。 性質が実在するか、ということは、長らく哲学的議論の的となっていたわ…

脱中心化みたいな

僕がずっと一種のスローガンのようにしていた言葉に「metaからinterへ」というのがある。 「形而上学から郵便的脱構築へ」といってもいいかもしれない。完全に一致はしないかもしれないけれど、元ネタはそれだ。 metaというのはmetaphysicsのmetaである。 哲…

野家啓一『増補科学の解釈学』

論文集なので、章ごとの独立性が結構高いけれども、大きくは3つの部分に分けられている。 すなわち 第一部科学哲学の構造転換 第二部「知識の全体論」をめぐって 第三部ウィトゲンシュタインの問題圏 である。 第一部 新科学哲学、すなわち、論理実証主義的…

グッドマン『世界制作の方法』

訳者あとがきに従えば、グッドマン哲学は、「ヴァージョンの複数性」「非実在論」「根本的相対主義」ということになる。 ヴァージョン=世界である。 グッドマンは文字通り、世界は作られるものであり、そして多数の世界=ヴァージョンがあると考えている。…

野家啓一『言語行為の現象学』

タイトルのとおり、言語行為論(分析哲学)と現象学を架橋しようとする試みとしての論文集。 言語行為論と現象学・解釈学の共通点を描き出している。 英米哲学と大陸系哲学と、現代哲学は大きく二つに分かれてしまっているものの、そもそもの起源を辿れば、…

三中信宏『系統樹思考の世界』

久しぶりに新書を買って読んだ気がする。 06年の本で、既にある程度話題の本になっていたっぽいが、なかなかいいタイミングで読むことができたなあと思った。 著者は、進化生物学を専門にしている*1ので、この本はまずは進化論の本といえる。 だが、いわゆ…

野家啓一『物語の哲学』

面白かった。 オースティンの言語行為を少し変えて、物語行為論が展開されている。 「物語る」という行為を、オースティンの言語行為と区別し、経験を再構成し共同体で共有する行為と規定する。 そこから歴史についての考察がなされる。 後半では、虚構の存…

「説明」に関するメモ

「説明」と「感じ」*1 「三人称」と「一人称」*2 「研究」と「評論」*3 「アカデミズム」と「ジャーナリズム」(もしかすると英語と日本語)*4 これらは、それぞれ非常によく似ているのではないか、と思った。 「公共的言語」と「私的言語」って言っちゃうと…

『現代思想07年12月号』「特集量子力学の最前線」

まあ、ぶっちゃけた話、分からない部分の方が遙かに多い。 読みながら、分かんねえなあと思いながら読んだわけだけど、そのわからなさ具合がまた何となく面白い。 宇宙論 宇宙ヤバイw 宇宙論はやっぱり面白いなあと思う。 五次元宇宙の話とか。量子スケール…

J.L.オースティン『言語と行為』

オースティンについて 1911〜1960 48歳という若さで亡くなっている。 アリストテレスなどギリシア古典の研究から研究キャリアをスタートさせている。 戦中は、情報将校として従軍し、ノルマンディー作戦に関する情報収集、分析などをやっていたら…

あらゆるものが科学で説明することが出来るか

心の哲学についてちょっと勉強してみて思ったことは、 心については、もう自然科学の領域に任せてしまえばいい、ということ。 哲学者ないし人文系の人間が何か携わることが出来るとすれば、個々の研究を繋ぐようなロードマップを作ったりインタープリターに…

グッドマン『事実・虚構・予言』

タイトルがかっこいい 英語だと、fact,fiction,forecastになる。 帰納法に関する、グルーのパラドックスについての論文が載っている。 その論文だけは既に読んだ。 それもあって、あまりじっくりとは読まずに、スピード上げて読んだ。 なので細かいところま…

心の哲学について勉強した(『心は機械で作れるか』『心の現代哲学』『なぜ意識は実在しないのか』)

自分の中で心の哲学ブームが到来したので、とりあえず入門書二冊*1と、最近出た本を一冊。 実は今まで、同じジャンルは入門書を一冊読むとそれで満足していたことが多くて、同ジャンルの本を一度に何冊も読むのは自分としては珍しい。けど、ちゃんと勉強した…