著者は、哲学を、反自然主義と自然主義の対立によって捉える。
自然主義とは、あらゆるものが自然の事物であり、自然法則に従うという考え方であり、
反自然主義は、しかし人間*1の中には、自然的でないものがあるという考え方である。
著者は、哲学とは、第一には反自然主義である、とする。
しかし、反自然主義は、神話化してしまう。
例えば、自由意思。これは、人間が自然法則に反して行為することができることを説明してくれるが、それが一体何であるかは謎である。神様が与えてくれた、とかしか言いようがない。
哲学とは第二に、こうした神話を脱神話化する作用である。
反自然主義と自然主義の相互作用で、哲学が進んでいく、と捉えてもいいかもしれない。
その上で著者は、この両者の対立の主戦場として以下の3つを挙げる。
すなわち、知識、言語、行為である。
言語に関して言えば、現代哲学において特に見いだされた領域である。
基本的には、英米系、いわゆる分析哲学の知見をベースとしつつも、折りにつけ大陸哲学についても取り上げている。その点で、「現代哲学」というタイトルは相応しいかもしれない。
「知識」においては、「知識とは正当化された真なる信念である」という定義から始まり、アプリオリ、アポステリオリの区別、実在論と観念論、基礎付け主義と整合説を取り上げたのち、外在主義、ローティ、フーコーを最後に持ってきている。
「言語」においては、フレーゲ、フッサール、ソシュールの言語観を最初に紹介し、前期ウィトゲンシュタインと論理実証主義、後期ウィトゲンシュタインとオースティンをそれぞれ取り上げたのち、クワインとデリダを最後に持ってきている。
「行為」においては、いわゆる心の哲学、心身問題についての流れに触れ、ライル、アンスコム、デイヴィドソンを取り上げたのち、ハイデガーを最後に持ってきている。
産業図書の哲学教科書シリーズを読むのは、これで3冊目。
戸田山和久『知識の哲学』
西村清和『現代アートの哲学』
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*1:人間が作り上げたものや活動も含む