『論理学』グレアム・プリースト

岩波の1冊でわかるシリーズから『論理学』。
既に、「1冊でわからない」という声も挙がっているが*1、確かにこの本で、論理学について学ぶことは難しいと思う。
この本はどちらかというと、論理学の哲学についての本である*2
最後の訳者解説にあってわかったのだが、真理値の割り当てについても、著者の立場が反映されていたりする。
そもそも、条件法を説明するのに、可能世界論を持ち出してくるのは、普通わけわからないと思うのだけど、どうだろう。
存在論的証明の話や、時制演算子を使ったマクタガードのパラドックスの話など、論理学を使った哲学の問題が、各章毎に紹介されている。
一通り紹介したところで、それに対する批判を挙げて、「あとは読者が考えてほしい」という感じで章が終わる。
確かに自分で考えるのが筋かもしれないし、いちいち様々な異論反論を書き上げていったらいくらページ数があっても足りない。とはいえ、結構唐突に突き放されるので、「えっ終わり?!」ってなることの方が多い。
論理学はやはり、自分で手を動かして考えないと、理解することはできない。
最後に載っている問題は一応解いたけれど、本文はただ読んだだけで書いたりしていないので、理解は不十分なままな気がする。
全14章のうち、2から10章までが演繹についてで、11から13章までが帰納についてである。残りの1章は、小史と読書案内ということになっている。
で、帰納に関しては、それぞれ確率(条件付確率)、逆確率、期待値の話がされており、数学の苦手な自分はついていくのに精一杯のところはあった。一応、分かることは分かるけど。とはいえ、応用できるかは怪しいかもしれない。
記号はあまり使わないといわれていて、確かに必要最低限しか記号は使われていないが、それでも章を追うごとに記号は増えていくので、馴れない人は本当に馴れないかもしれない。
ただ、記号化することによって、論理の穴が見えることもあり、〜的証明とかの誤謬が見つかったりするのは面白い。もちろん、逆に記号化することで、明らかにおかしいことが導かれてしまったりすることもある。

論理学 (〈一冊でわかる〉シリーズ)

論理学 (〈一冊でわかる〉シリーズ)

*1:http://d.hatena.ne.jp/shinimai/20080405/p1

*2:究極的には、論理学も論理学の哲学も変わらないのかもしれないが