2008-01-01から1年間の記事一覧

斎藤環『文学の断層 セカイ・震災・キャラクター』

小説トリッパーでの連載をまとめて、加筆したもの。 トリッパーの連載もほぼ読んでいた。というか、自分がトリッパーを読んでいたのは、ほとんどこの斎藤環の連載を読むのが目的だった。トリッパーをチェックしていた時期と、これが連載されていた時期はちょ…

野矢茂樹『ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む』

今、『論理哲学論考』そのものも途中まで読んでいる。 いずれ、最後まで読む。 ウィトゲンシュタインは面白い。 『論考』でも『探求』でもそうだが、とにかく現実に成立していること(あるいは日常言語)から始めるという態度は、いいなあと思う。 言語観に…

伊藤計劃『METAL GEAR SOLID GUNS OF THE PATRIOTS』

メタルギアソリッドは何一つやっていないのだが、ゲームやってない人でも読める、という言葉につられて買った。 実際、読める。読めるんだが、やはりゲームやってない人にはお勧めしない。 登場人物や前作までに起こったこともちゃんと説明してくれるし、そ…

『エクス・ポVol.4』

入間人間インタビュー メールによるインタビューなので、あんまり突っ込んだ話にはなっていないが、ちょっと読んでみたいかなと思った。 出たときは、なんか西尾維新劣化コピー臭がして*1、パスしてたんだけど。 鈴木謙介「うろ覚えのJポップ時評」 冒頭で書…

椹木野衣『増補シミュレーショニズム』

91年に書かれた『シミュレーショニズム』に、講義編を加えたもの。 講義編は01年に書かれたもので、文章が全く異なっている。 講義編は、ですます体で書かれていて、80年代から90年代にかけての作家と作品が、分かりやすく順を追って紹介されている…

『新潮』『群像』『文學界』『すばる』8月号

楊逸が芥川賞をとったとか。 あ、あと、『論座』休刊とかが、今日の文壇・論壇関係ニュースか。 『新潮8月号』 間宮緑「実験動物」 ワセブンのを読もうと思っていて結局読んでないや。 面白いような、つまらないような。 「私」と「吸血博士」の共同生活っ…

青春のロシア・アヴァンギャルド――シャガールからマレーヴィチまで

今年、20世紀の美術とか音楽とかについての授業をとっていて、 この前行ったバウハウス展も、今回行ったロシア・アヴァンギャルド展も、その授業で教えてもらったもの。 ロシア・アヴァンギャルドに関していえば、その授業で聞くまで、ほとんど何も知らな…

今橋映子『フォト・リテラシー』

アートタグをつけたけれど、この本は、写真という表現が、アートとも報道ともいえる(あるいはいえない)ものであることを示す*1。 カルティエ・ブレッソン、ドアノー、アジェといった写真家は、テレビ東京の『美の巨人たち』で見たことがあって知っていた。…

文学とは何か(夏目・秋山往復書簡をうけて)

夏目陽さんと秋山真琴さんの間で、文学と小説を巡って往復書簡が始まった。 秋山真琴(id:sinden)さんへ 第一信(世界の果てのクロエの祈り) 夏目陽さんへ、第1信(雲上四季) この往復書簡は、無論この二人の対話ではあるが、「実際にはトラバの送りあい…

『現代文学理論』

筆者が3人いて、タグもいっぱいつけてタイトルが長くなるので、筆者名をタイトルでは省略した。筆者は土田知則、青柳悦子*1、伊藤直哉である。 いわゆる、批評理論についての概説書である。 「はじめに」と「おわりに」で、筆者ら自身が、単なる入門書には…

門脇俊介『現代哲学』

著者は、哲学を、反自然主義と自然主義の対立によって捉える。 自然主義とは、あらゆるものが自然の事物であり、自然法則に従うという考え方であり、 反自然主義は、しかし人間*1の中には、自然的でないものがあるという考え方である。 著者は、哲学とは、第…

熊野純彦『西洋哲学史』

「古代から中世へ」と「近代から現代へ」の2巻本である。 この本が一体どういう本であるかは、著者によるまえがきにはっきりと書かれている。 やや長くなるが、この本のコンセプトや特長が分かりやすくまとめてあるので、引用する。 この本は、三つのことに…

森毅『数学の歴史』

古代ギリシアから戦後までの数学史を200頁ちょっとにおさめてある、コンパクトな本で、ぐいぐい読ませる筆致で、一気に読めてしまった。 数学の歴史とあるが、同時に世界史でもあるし哲学・思想史でもあるし科学史でもある。 というわけで、数学の門外漢…

アガンベン『アウシュビッツの残りのもの』

人間とは、言葉を話すことが出来る生きものである。 しかし、言葉を話すことと生きものであることは、いかにして両立しているのだろうか。 「人間」は、二つの位相に分けられるのである。 つまり、生物としての「ヒト」の部分と、他の生物とは区別される、人…

池上永一『シャングリ・ラ』

不死身の、女子高生と天才と変態*1が、霊的なものを巡って戦う、ということで、『レキオス』と同じ。 『レキオス』と違うのは、幼女が出てくること。 いや、幼女っていうか、小学校高学年くらいだけど。 美邦と香凛がかわいい。 あまりにも無茶苦茶で眩暈が…

「公共性とエリート主義」@新宿紀伊国屋サザンシアター

なんか、筑波批評メンバー総出(6人)で行ってきたw 会場に着くなり、「会場限定、東先生と北田先生のダブルサイン入り思想地図!」が売られていた。 客席には、思想地図関係の有名な人たちが結構いた感じ。 司会者が時間通りに始まらないことを詫びる。ま…

集合体のアイデンティファイについて

twitterで真面目な話をつぶやくと、klovくんがたんぶらってくれて便利*1 そこで、まとめてくれた話というのが、2006年頃にこのブログで書いていたことと非常によく関わっているので、まとめてリンクをはっておく。 まずは、今日呟いたことのまとめはこち…

『群像』『新潮』『文學界』7月号

昨日書いた記事が、深夜にアップしたために日付をまたいでいて、今日の記事と同じ日付になってしまった。 『群像』 絲山秋子「ラジ&ピース」 この人の作品を読むのはまだこれで2度目だけれど、じんわりと面白い。 主人公は、ラジオパーソナリティの女性。…

秋葉原無差別殺傷事件について

この事件について、僕は僕の意見をブログで書く気はない。 ただ、この事件はあまりにもトピックが多すぎるので、ちょっとメモしてみようかと思う。 無差別殺人ないし通り魔というものについて そもそも「人を殺す」って何だろ、という一種、哲学的な問いを喚…

スピリチュアルと専門知

昨日のクローズアップ現代が、スピリチュアルブームについて取り上げていた。 それを見て、少し考えたことをつらつら。 今、30代を中心に、スピリチュアルブームが起こっているらしい。 占い師に相談を持ちかける人が、男女問わず増えているらしい。 会社…

『レキオス』池上永一

読みたい本、読まなきゃいけない本をさしおいて、何故か読んでしまった。 沖縄を舞台にして、謎の秘密結社と米軍のパイロットと天才科学者とCIAエージェントとシャーマンの血筋の女子高生が、古代より封印されてきた霊的なエネルギー(?)「レキオス」を…

今日買ったCD

PLANET PIMPアーティスト: SOIL&“PIMP”SESSIONS出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント発売日: 2008/05/21メディア: CD購入: 1人 クリック: 17回この商品を含むブログ (35件) を見るTerra Incognitaアーティスト: 旅団出版社/メーカー: PENGUINMARKET …

『モンキービジネス』Vol.1野球号

野球の話が冒頭に続く。 野球に興味がないから微妙。 でも、ファレル「僕はブラックソックスを覚えている」は面白かった。 シェリー・ジャクソン「血」 岸本佐和子「あかずの日記1 二月−三月 分数アパート」 ハーマン・メルヴィル「書写人バートルビー」 ダ…

メールマガジン「αシノドス」

シノドスは月に2回送られてくるし、それをいちいちレポートするのはちょっと大変すぎるな、と思ったので、ブログに書いていなかったのだが、Vol.4の編集後記で、お前らちょっとはブログとかに書けよって書いてあったので、ちょっと書く。 Vol.1 座談会は鈴…

『InterCommunicationNo.65』

最終号。 横書きなので左綴じ。 山本貴光「コミュニケーションの思想――バベルの塔からバベルの図書館へ」 対談長沼毅・佐々木晶「宇宙生命の可能性と、人類と宇宙生命のコミュニケーションの(不)可能性をめぐって」 西川アサキ「なぜ、モップと語り合えな…

『ユリイカ6月号』特集「マンガ批評の新展開」

鼎談「マンガにおける視点と主体をめぐって」 夏目房之介、宮本大人、泉信行による鼎談。 『漫画をめくる冒険』の解説といった感じ。 タイトル通りマンガにおける視点と主体についての話だが、『漫画をめくる冒険』という本そのものの語り手は一体誰か、とい…

失効した弔い・償い・赦し

上のエントリ「罪を償う/赦す」の続きである。 sakstyle: そうか、 @SuzuTamaki は罪と罰の物語を好むのか。 俺は、罪と罰が失効してしまうような物語の方が好き。 http://twitter.com/sakstyle/statuses/825245279 欠落を抱え込んでなお生活するための手続…

罪を償う/赦す

取り返しのつかない欠落を抱え込んだ者であっても、その欠落を抱えつつ、その後も生き続けなければならない。 欠落のあとの生活を可能にするための手続が、弔い・償い・赦しである。 このエントリは、id:SuzuTamakiによる以下の記述に対して、twitter上でSuz…

『コードギアス反逆のルルーシュR2』

第8話「百万のキセキ」まで見た。 どうも賛否両論飛び交っているらしいのだが、僕はとても面白いなあと思いながら見た。 S.A.C.や太陽の黙示録的なところまで辿り着いたなあという感じ。 あるいは前回のエントリで、メディア的な状況としてマスメディアは沢…

『コードギアス反逆のルルーシュ』

この時期にコードギアスの感想を書くと、今やっているさいちゅうのR2の感想かと思われそうだが、R2はまだ見ていない*1。 最初にこんなこと書くのも何だか逃げみたいだが、僕はアニメには詳しくない。詳しくないので、アニメとしてどうのこうのということ…