草野原々『最後にして最初のアイドル』

ラブライブ!の二次創作(として発表後、固有名詞が変更されたもの)が、ハヤカワSFコンテスト特別賞を受賞したと話題になった本作
とにかく、事態があれよあれよとスケールアップしていき、次々と開陳されていくSFネタを楽しんでいるうちに、アイドルとはそういうことだったのかというオチに達する。
Amazonレビューを見ると、元ネタは知らないが面白かった、というものが多く見られるが、まあ実際のところ、ごくごく普通の感覚でいえば、あまりラブライブ!関係ないのでは、という話ではある。
もちろん、ラブライブ!を知っていれば、登場人物の名前が古月みかと新園眞織になっているものの、完全ににこまきで脳内再生されるし、冒頭の展開は、にこまきSSとかでそこそこありそうな話ではある。
うちのブログを読んで、これを読んでみようと思うラブライバーはあまりいないと思うが
ある程度SFに親しんでいないとよく分からない部分が多いと思うが、一方で、ラブライブ!を知らないと分からないという部分はほとんどなかったと思うので、「SF知らないけどラブライブだから読んでみるか」という人にはあまりお勧めしない。逆は、いける。


それと一応注意書きを付しておくと、結構グロい、というか、異形の生き物が出てくるので、そういうの苦手な人は手を出さないほうがいいかもしれない。自分も、全くそのあたりは予想していなかったので、そこは面食らった。
結構バカっぽいデザインだったりもするけど。
マチェーテカラシニコフでヒャッハーした集団と、重武装した内蔵ぐちょぐちょしたクリーチャーとが殺し合うという絵が、バカっぽくて楽しいと思えるかどうか


現在、kindleをはじめとして、各電子書籍サービスにて配信されているみたい(kindle以外でも配信されているらしいが、自分はkindleで読んだので、他にどこでやってるかは調べてない)。
創元SF短編賞も、受賞作を電子書籍で配信しており、いずれにせよ100円とか200円とかで読むことができる。


なんか『伊藤計劃トリビュート2』に収録されることになったらしいが、うん、まあ確かに引用はあったw
あとはまあ、意識のあたりの話が、ハーモニーっぽいところがあるっちゃある


ネタバレ気味だが、出てきたSFネタを列挙してみる。
こういうのがずらずらと出てきて、わーっとこれらのネタの設定が説明されていく。
スーパーフレア発生からの気候変動のあたりが一番詳しく書かれていたような気が。
多宇宙からの展開はめちゃくちゃ壮大だが、とにかく勢いで乗り切れって感じになってる(それいったら全編そうだが)
スーパーフレアモノポール、CNTを組み込んだ人工生物、地球サイズのネットワークによる人工脳、アフターマン的生態系、対消滅エンジン、ダイソン球、熱的死と多宇宙、決定論と自由意志の調和、タイムパラドックスなき時間操作


二人称の使い方が上手いかどうかはともかく、大ネタに組み込んでたのは面白かった


最後にして最初のアイドル【短篇版】

最後にして最初のアイドル【短篇版】