『ラブ、デス&ロボット』

ここ数日TLを騒がせているこの作品。
この間ようやく見終わったところなので、ちょっと感想とか


Netflixのオリジナル作品で、全18本の短編アニメーションオムニバスシリーズである。
デビッド・フィンチャーがプロデューサーの一人であり、また『スパイダーバース』のデザインを担当した人が監督した作品などもあって、そのあたりも話題。
SFやホラーの短編小説を原作としており(オリジナル脚本作品もあるようだが)、SFクラスタも俄然盛り上がっているところ。
原作となっている短編小説は日本語未訳のものが多いが、日本でも大ヒットしたケン・リュウ『紙の動物園』に収録されている「よい狩りを」を原作とした作品もあり、日本のSF読者は(というか自分がそうなのだが)、とりあえずその回からこのシリーズを見始めたという人が多いだろう。


1本あたり大体10~15分程度の短編であり、オムニバスのため、どの回から見ても問題ないということもあって、非常に見やすいというのも特徴
さらに最大の特徴は、作風がすべて異なるということで、実写と見まがうほどのフォトリアルな3DCGアニメもあれば、カートゥーン風の作品もあるし、やや実験的・前衛的な感じのものもある。
監督や制作スタジオがそれぞれ異なっている(18本全部がそれぞれ異なるというわけではないが、いくつかの制作スタジオが参加しているのは確か)


「大人向け」というレイティングがなされており、またタイトルに「ラブ」「デス」と入っていることからも推し量れるところだが、性器やゴア描写が無修正で描かれている。
ただ、物語やテーマ的にはいろいろあって、必ずしも愛や死をテーマにしているというわけではなく、色々な短編SFが見れるというのに尽きる。
狭義のSFだけでなく、『世にも奇妙な物語』テイストの話もあったりする。
SF小説を原作とした映像化って、劇場版だったりTVドラマシリーズで、長編のものが多い気がして、短編で映像化されるのは珍しい気がするけれど、SFって短編小説が結構多いので、短編が短編として映像化されてオムニバスで色々見れるというのは、非常によいなあと思う。
不気味系、モンスター系、ミリタリー系、コミカル系など、いくつかの傾向があって、これが好きな人ならこれとこれも好きで、あれが好きな人ならあれとあれも好きかなみたいな感じがある。
個人的に好きなのは「ロボット・トリオ」「スーツ」「わし座領域のかなた」「シェイプ・シフター」「秘密戦争」かなー



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ソニーの切り札

「おまえら、怪獣ボクシングと女性同士のイチャコラとゴアシーン好きだろ、あん?」と言わんばかりで、のっけから、参りましたってなるような作品w
フォトリアル系3DCGアニメ

ロボット・トリオ

人類滅亡後の世界を3体のロボットが見て回るコミカルな作品。
でもって、ネコSF
これもまた、フォトリアル系3DCGだと思うんだけど、ロボットがおもちゃっぽくて、というか、最初、人形アニメーションかなと思ったくらいで、また質感が違う感じがする
原作はスコルジー

目撃者

殺人現場を目撃してしまったストリッパーと犯人の追いかけっこ。『世にも奇妙な物語』テイストなオチが待っている。
『スパイダーバース』のデザイン担当の人が監督した作品らしいのだが、線と塗りがバチバチと切り替わったり、効果音がマンガのように文字で入ったりと、実験的な演出が入れられている

スーツ

いかにもアメリカンな農場に、『スターシップ・トゥルーパーズ』ばりのエイリアンが襲撃してきて、主人公の農夫(CV:大塚明夫)は、いかにもアメリカンなロボットに乗り込んで、撃退する。
しかし、今回の襲撃は普段と違う大襲撃。ご近所さんをシェルターに避難させつつ、同じくご近所さんでロボットを持っている者同士でおさえにいくが、圧倒的に不利な状況。
機関砲だ、ミサイルだ、自爆だと持ち出して、バリバリ戦うの好きだろみたいな奴で、「あ、はい好きです」って降参してしまう奴
いやー、でも人類の方が侵略者なのではとも思わせるオチもよい。フロンティア・スピリッツなのかもしれないけど。

魂をむさぼる魔物

遺跡を発掘しに行った博士が、怪物のヴラド公を目覚めさせてしまう
傭兵は全体的にかっこよかったが、話自体はいまいちよくわからん感じだった。

ヨーグルトの世界征服

突如、ヨーグルトに知性が生まれて、人類を人類よりも優れた統治によって支配しはじめたという話
頭身低めのキャラクター
原作はこれまたスコルジー

わし座領域のかなた

ワープ航法の途中、何かのエラーでスリープモードから目覚めさせられた宇宙船の船長
想定外に遠い位置のステーションについていて、そこには以前逢瀬をかわした女性が待っていた。しかし、どこか様子がおかしい。真実を教えてほしいと迫るが……。
宇宙女郎蜘蛛的な何か。
これほぼ実写じゃんみたいな3DCGで、宇宙船やステーションのビジュアルがかっこいい。ワープ航法らしきものはあるが、おそらく超光速は無理っぽいのと、クリーチャーがでてくるのとかが、原作レナルズの短編なんだけど、すごくレナルズっぽい
レヴェレーション・スペースの短編も映像化してほしい

グッド・ハンティング

ケン・リュウの短編「よい狩りを」が原作。
本シリーズの原作になっている作品で、おそらく唯一日本語訳がある作品。
中華風妖怪サイバーパンク
90年代のディズニーアニメっぽい感じの絵柄なんだけど、それでいて性器無修正(男女ともに)のシーンがあったりして、「この絵柄でこんなのもありなんだ」という感じはあった。

ゴミ捨て場

土地全体がごみ屋敷と化している爺さんのところに、立ち退きを要求する検査官がやってくる
爺さんは、ちょっと話を聞いてくれたらハンコ押してやるよと言って、友人が目撃したものについて話し出す

シェイプ・シフター

アフガニスタンタリバンと戦っているアメリ海兵隊の中に、周囲とは少し雰囲気の異なる2人の兵士
彼らは実は狼男
そして、タリバン側にも狼男がいることが分かる。
ミリタリー系モンスターアクションというか、狼男同士の殺し合いアクションがとにかく見せ場、という作品
原作はマルコ・クロウスという人で、知らなかったけど、ミリタリーSFの長篇が邦訳されている。

救いの手

宇宙が普通の労働の場になりつつある未来、人工衛星の修理に来た宇宙飛行士が、スペースデブリと衝突してしまう。
酸素も残りわずか、救出が来る時間は間に合わない。土壇場で彼女がとった方法とは
という話で、これがまあ、タイトルともうまくかかっていて、とてもよくできた話だなあとは思うのだけど、グロいっていうか痛い系なので、個人的にはちょっと苦手
でもまあ、これが好きな人がいるのも分かることは分かる

フィッシュ・ナイト

アリゾナの砂漠で立ち往生した2人のセールスマン。夜中に目を覚ますと、太古の海の風景が広がっていた。
非常に幻想的な絵

ラッキー・サーティー

いわくつきの兵員輸送機で、機体番号に13がついていることから「ラッキー・サーティーン」と呼ばれる機体
新入りのパイロットは、機体を選ぶことができず、ラッキー・サーティーンに乗ることになったのだが、危機を乗り切り生還。その後、次々とともにピンチを乗り越えていく。
おそらく舞台は地球じゃないんだけど、そのあたりの設定の説明はない。パイロットと機体との間の信頼関係みたいな話。機体にAIがあるとかそういう話でもないけれど、機体が意志を持っているように見える、というミリタリーSF
原作はマルコ・クロウス

ジーマ・ブルー

稀代の芸術家ジーマは、作品に必ず特徴的な青=ジーマ・ブルーを使うことで知られる。
とあるジャーナリストが、ジーマの取材に成功し、彼の来歴を知らされる。
芸術SFなのかなーと思ったら、ちょっと違う路線で、ロボットにとって目的とは何かみたいな話だった
これもレナルズ原作らしく、レナルズってこんな作品もあるのかーとちょっと驚いた

ブラインド・スポット

サイボーグ盗賊団による、車両強盗

氷河時代

引っ越し先においてあった古い冷蔵庫。それを開けると、なんと中には小さなミニチュア世界があった。
見る見るうちに発展し、中世から近代、そして未来へと移り変わっていく
という、いかにもショートショートSFっぽい感じの作品。オチがちょっと弱いかなという感じはしたけど
この作品は、冷蔵庫の中はCGアニメーションだけど、他はたぶん実写
このシリーズ、あまりにも実写と見紛うCGアニメーションが多いで、これも一瞬「?!」ってなるんだけど、たぶん実写

歴史改変

もしもヒトラーがありえない死に方をしていたら、どんなありえない未来が待っていたか
という、基本的にはバカSFというか、コメディ作品
なんとまたもスコルジー

秘密戦争

シベリア森林地帯を進む、ソ連軍の小隊
かつての幹部がオカルトにはまって召喚してしまった怪物たちと、戦闘する。
めちゃくちゃアメリカンだった「スーツ」の、陰鬱なネガ版といった趣きがある。
まさか最後に、ソビエトミリタリーオカルトモンスターものがあるとは思わなかった

それ以外の感想

あと、日本のTVアニメばかり見ているせいで、Netflixに驚かされるのは、その配信の仕方で
つまり、18本の作品が一気に公開されているという点。
TVシリーズって当然ながら、毎週1話ずつ放送されるもので、完全にそのスタイルに慣れてしまっているけれど、ネット配信の場合、1話ずつ出すという必要性はないわけで
(確か、Netflixオリジナル作品で、日本の作品でも一気に公開された奴があったと思うけどタイトル忘れた)
このシリーズは、1話あたりの尺が短いし、それぞれ別のスタッフが作っているというのもあるけど、クオリティが驚異的
加えて、全世界同時配信で、各国語の吹き替えが用意されていること。ちゃんと数えてないけど7カ国語くらいは用意されているのではないか、と。
日本語吹き替えキャスト、有名どころだと、大塚明夫高木渉小野大輔釘宮理恵石田彰田中敦子井上喜久子とかが参加している。
もちろんこれも、1話だけだし、何度もいうけど1話あたりの尺も短いから、声優の確保自体はそこまで難しくはないと思うんだけど、各国語の吹き替え版も用意した上で配信始めるのが当然だよね、みたいなところがすげーなと思う