エリクソン『Xのアーチ』

エリクソン二作目。
面白かったのだけど、分からなさが面白さをさらに上回ってしまっていて、何だか当惑したまま読み終わった感じ。
あらすじすらもうまくまとめられない。
最初は、トマス・ジェファーソンとその奴隷であり愛人でもあるサリー・ヘミングスの話。
アメリカからパリへと舞台が移ることで物語が動き始める。
その後、永劫都市という架空の都市に舞台が変わる。殺人現場にナイフを持ったサリーが居合わせる。その捜査を受け持ったウェイドと、ストリッパー、モナの話が展開される。
ウェイドが行方をくらました後、物語の主役はエッチャーという男に変わる。エッチャーとサリーの話。
ミレニアムの終わりに、ベルリンを訪れたアメリカ人作家、エリクソンの話が、チンピラ(?)の元締めのような青年ゲオルギーの話へと引き継がれる。ゲオルギーがアメリカへと渡り、西へと向かう。
最後に再び舞台は永劫都市へと戻り、年老いたエッチャーとサリーの娘、ポリーの話となる。
それぞれのエピソードは、色々な形で繋がりあっていて、それは文字の書かれた石というアイテムであったり、サリーであったり、はたまた別世界・別の時間であるのにもかかわらず、地続きで直接繋がっていたりもする。
エリクソンの「幻視力」によって紡ぎ出される物語や世界のイメージに浸っているのは面白いのだけど、そうしたイメージがどのように繋がりあっているのかということを考えると、複雑でよく分からなくなってしまう。そういうのも含めて「幻視」なのかもしれないけれど。
テーマは、愛か自由か。
ここでいう愛には、隷属という意味合いが込められている。だからこその、この二者択一。
幸福の追求(石の落書き、ゲオルギー)
黒さと白さ(サリー、トマス、ウェイド、モナ、ゲオルギーの夢想する女王)
歴史の書き換え(エッチャー)
女性の美しさに惑わされる者たち


ウェイドがかっこいい。
エッチャーも、眼鏡を割るところとかがかっこいい。