文学フリマ感想その1

今日までに読み終わったものの感想。
今後も、読み終わり次第随時書いていく予定。
感想その2

CRITICA Vol.1

探偵小説研究会
友達用で、渡す前に瀬名秀明インタビューと千野帽子の文章を読んだ。
法月綸太郎による瀬名インタビューは、インタビューというよりはむしろ対談で、クイーン問題について語り合っていた。視点の話とか。

スポンジスター

ブルボン小林の個人誌
ブルボン小林カラスヤサトシ聖飢魔Ⅱについて語りまくる五万字対談が熱い。
聖飢魔Ⅱも彼らが話すそれ以外のバンドもほとんど知らないのだが、面白かった。
ブルボン小林による、藤子A論もよかった。

てん竺

てん竺ノマ堂
まだ読み終わっていないものが多いので分からないけど、もしかすると一番面白いのはこれなんじゃないかなあ、と思う。
6人の小説が、フィクションというテーマを浮かび上がらせている。
一応名付けるとすれば、ゲーム的リアリズムメタフィクション
マジックリアリズムだか半透明の文体だかいうのが何を指すのかはよく分からないのだけど、そういうメタライトノベルなリアリズムを用いて、可能性を指示するものとしてのフィクションの機構を物語として提示しているのだ。
あと、冊子の装丁、デザインがかっこいい。印刷もきれいで読みやすい。
「妄想許可証」id:nuff-kie
ある意味、こういうループ構造はベタかもしれないけど、文章がすごくうまい。この一作目で、すでにこの雑誌は成功している。
「偽☆委員長イズデッド」id:su2i
メタライトノベルなる言葉は、これを読んでいる最中に思い付いた*1。こういう道具立てでこういうふうに書けるのだなあと。
私小説id:extramegane
可能性の世界とフィクションの世界が繋がるというテーマが好きだ。
そこに到るまでの物語も面白い、というか、この長さに詰め込んじゃってるのがすごいかも。
「自販機に泥を塗る」id:murahito
これは、他の作品とは方向性が異なるかもしれない。家族の話と自販機の話の繋がりがよくわからなかったといえばよくわからなかった。でも、最後のシーンが好き。
「ウェイブAビット、豚くるえど」id:hey11pop
このセックスシーンがすごいいい。うちの文芸サークルで、ポルノをテーマに掌編を書く練習をするかという話があったけど、これを読ませたい。
ガリレイズ」id:yoghurt
これもいいなあ。
鯨の大脳が羽化して「鯨神」が出てくるっていうイメージが。
<追記>
「半透明の文体」とか「物語として提示」とか上述しているが、つまり、文学的比喩とか思弁とか内省とかを使わずに、ある種のイメージ、具体的なものによって表現されている、ということ。

異者の攻防―佐藤友哉「慾望」論

この精読すごい。
そして、自分の佐藤友哉論に『子供たち怒る怒る怒る』を組み込んでいない*2ことを後悔したし、それとは逆に、これを読んで納得もした。
雑誌でこの作品を読んだときはつまらなかったのだが、単行本で読み直したとき、とても面白かった。そして、『子供たち怒る怒る怒る』は「水没ピアノ浮上編だ!」などといってすごく興奮した
その理由が明確化された気がする。
それは、この論で示されている、「私」と「四人の生徒」の間の差異だ。彼らはお互いに異者である。このことは、僕が『物語の(無)根拠』で使った言葉で言い換えると、「物語の自律」ないし「メタ物語的状況」に相当する。
しかし、この論はさらに次のことが注目に値する。つまり、物語が「私」から「四人の生徒(僕たち)」へとドライブしていくことを指摘している点だ。おそらく、そこから「子供たち怒る怒る怒る」へと繋がっていくのだろうし、そこから自分の佐藤友哉論では論じることのできなかった佐藤友哉も論じることができるはず。
今、ブログを見に行って、Lエルトセブンの中の人だということに初めて気付く。この人の佐藤友哉の書評は大体ブクマしたような気がする。僕にとって、信頼できる佐藤友哉論の書き手なんだろう。

リブレリ

早稲田大学現代文学会の書評誌。
評されている本の大半が未読なので、特に何ともいえない。
ニコニコとハルヒの書評の内容に何か見覚えがあるな、と思ったら、読んだことのあるブログの中の人のようだ*3。このオタク観は理解できるけど、全面的に共感はしないかも。
『虚構世界の存在論』書評id:kugyo
評者は、三浦の一世界説を論駁して集合説を支持する。僕も別の理由で集合説を支持している。
それで、ここで言われている「原作もの」というのはメディアミックスもののことだと思うのだけど、可能世界を使った虚構論は確かにそこらへんが面白いんじゃないかと思う。レジュメのpdf落としたので、あとで読む。

アユラ

相関言論空間アミノユラク
鼎談はざっと読んだ。各論考は読んでない。
書かれていることに対してほとんど反論はない。
しかし、全般的に、何をしたい鼎談なのかがよく分からない。既にある結論を、3人でお互いに確認しあっているだけのような感じがする。
あと、他者とか近代的な政治とかの重要性を何故そこまで擁護するのか。とはいえ、自分自身、そういうものを擁護する立場に立つので、わかるんだけど。
何となく分かってしまうので、もう少し突っ込んで欲しくなる。
<追記>
トラックバックがうまくいっていないみたいなので、ブログURLを貼ってやりなおす。http://aminoyuraku.blog6.fc2.com/blog-entry-111.html

存在論的、郵便的(マンガ版)

分かりやすくまとまっていたと思う。
マンガだと思って読むと、絵がそれほどうまくないのでちょっと、という感じだが、図解だと思って読むと、読みやすいと思う。
友達が、描かれていたクリプキの顔を見て、「呉智英がいる」といったのが面白かった。クリプキと呉って顔が似てるのかなあ。
クリプキと言えば、東のクリプキ理解がよくわからない。固有名を一般名と区別して特別扱いしてたっけ、クリプキって。確定指示子と不確定指示子の区別をしてるけど、それは名辞と記述の区別であって固有名と一般名の区別ではないと思うのだが。

存在論的、郵便的(マンガ版)

存在論的、郵便的(マンガ版)

*1:ハルヒに対して使われることがあるけど、ハルヒとはまた別の方向で

*2:組み込まなかった理由は、自分の怠惰にある

*3:id:OTAtory