グレッグ・イーガン『宇宙消失』

イーガンっぽいようなイーガンっぽくないような作品。
イデアはイーガンだけど、話の作り方とかはイーガンっぽくないような気がする。まあ初期の作品だからだと思う。
しかし、面白かった。
イデアの破天荒ぶりとか、サイバーパンクっぽいところとか。


(追記071018)
話の作り方がイーガンっぽくない、というのがどういうことかというと
元警官で今は探偵みたいなことやってる主人公が人捜しを依頼される、という形式をとっていること。
こういうベタなパターンは、SFに限らずよくあるものだけど、あんまりイーガンは使わない気がする。イーガン作品の主人公って、もう少し普通の人が多い気がする。
ベタだからダメ、というわけではなくて、ベタゆえに面白いんだけど、多分最近のイーガンはもう、こういうベタな形式を使わなくても面白いものが書けるようになった、ということだと思う。
あと、映話器とか、モッドが出てくるたびにメーカー名と値段が出てくるところとか、あんまりイーガンっぽくないように感じたけど、サイバーパンクSFっぽい感じはした。
ネタは、量子力学観測問題
それを使って、超能力としか思えないようなことができるようになったり、地球外知的生命体と絡めたりしているあたりは、あまりにも破天荒ですごい面白い。
でも、やっぱり根本にあるのは、量子力学や地球外知的生命体ではない。
人間の心的状態とは神経系の状態である、という考えをベースにおきつつも、それに耐えられない「人間」の部分を表現するために、観測問題を持ってきている気がする。
というか、観測問題を持ってこないと、もう「人間(自由意志)」を描くことができないようなことになっている。

宇宙消失 (創元SF文庫)

宇宙消失 (創元SF文庫)