『日経サイエンス2014年1月号』

特集:量子世界の弱値

「光子の裁判」再び  波乃光子は本当に無罪か  細谷曉夫
 量子テレポーテーションと時間の矢  井元信之
 光子は未来を知っている  語り:Y. アハラノフ/聞き手:古田 彩

「光子の裁判」というのは朝永振一郎が、ダブルスリット実験について解説したエッセイ(?)で、光子(コウシ)を波乃光子(ナミノ・ミツコ)と擬人化して公判風に描いているもの。
スリットを観測してなかったら、壁に着いた(?)光子が、左右どちらのスリットを通ってきたかは分からない。
だが、実は測定できるんじゃないかというのが「再び」
弱測定。影響を与えないようにちょっとだけ観測する。それだと情報量が少ないので何度も行う。それで得られるのが、弱値。
弱値というのは、ある地点xに着いた光子が(例えば)右側のスリットを通ってきたという条件付き確率
ただ、計算するとマイナスの値が出てくることがある。なので、弱値のことを確率と呼ぶことについて異論もある模様。
量子力学は今まで、インプットを入れたらアウトプットがどうなるのかということだけを問うて、その過程についてはブラックボックスにしてきた。弱測定は、その過程について問う。こういうアウトプットが出てきたときに、どういう過程を辿ってきたのかということ。
量子テレポーテーションについて、テレポーテーションしているように見えるけど、実は過去改変なんじゃないか、みたいなことを言ってたけど、よく分からなかった。
光子Xを移動させたいとき、まず量子もつれ状態にある光子Aと光子Bを用意する。光子Aと光子Xをベル測定する。その測定結果を、光子Bの方に伝えると光子Xの状態が光子Bの方に移動することになる。とかなんとかが量子テレポーテーションの説明だったような気がするけど、詳しいことはよく分からない。
で、光子Xがテレポートしたように見えるんだけど、弱測定しながらやると、むしろ光子Bの過去が変化したと考えた方がいいんじゃないか的な話だった、と思う。
弱値とか弱測定とかは、量子力学にとって新しい理論を加えたというものではなくて、今まで知られていたことを別の見方で捉えたもの、なんだとか。
実際に測定された値だし。
弱測定は、実は普通の測定(マクロ的な現象であれば)。強測定の方が特殊な測定、とか。


ダブルスリット実験については、このtogetterまとめが誌面で参照されてた
谷村省吾教授(@tani6s)による,お家でできるダブルスリット実験 - Togetter


特集:ムーク 台頭するウェブ大学

ムーク
 オンライン教育への期待と限界  J. バートレット
適応技術
 コンピューターが親身に指導?  S. フレッチャー

量子力学目当てで読んだけど、MOOCの記事の方が(当たり前だけど)読みやすかった
ルワンダやインドなどの途上国におけるMOOCの導入についての記事と、アメリカの大学における適応型学習というコンピュータを用いた授業についての記事が載っていた。
MOOCは、Massive open online courseの略。最初、MMOのMOと同じかと思ったけど、MMOはMassively Multiplayer Online の略で、微妙に違った
途上国への高等教育の普及に関して、MOOCは役に立っているところもあるようだけど、そう言ってるのはMOOC会社の営業トークで、現地側からするとまだ色々と課題もあるっつう話(そもそもネットがまだないぞとか、PC使えないぞとか)。
オンライン授業+現地スタッフによるサポート、という形をとる。
MOOC会社は、授業は無料で提供し、学位認定で金を取るビジネスモデル。その認定をどうやるか(要するにカンニングさせずにテスト受けさせる方法)。カメラで予め部屋を映させるとか、キーストロークで個人認証するとか色々方法はあるみたいだけど。


適応型学習の話の方が多分面白い。
MOOCとかって講義をただ映像で流すだけかと思ってたんだけど、そうでなくて(そういうのがまだ多いようだけど)、5〜6分の映像流した後、練習問題やってみたいにして、学習者に能動的に参加させる方式もあるらしい。
で、適応型っていうのは、その問題演習の時の学習者の反応とか回答とかを全部データベース化して、それを用いて、個々の学習者に応じて授業を行うコンピュータ授業のこと。
ビッグデータ的な話と心理学を用いる的な話があった。後者だと、どのタイミングで復習問題やらせると定着しやすいか、とか。
教員側も、学習者の回答状況とかがすぐに分かるので、教材の効果が分かるというメリットがある。
これについても、そういうメリットは業者の営業トークで、全然うまくいってないという反対論もある。
この話で面白かったのは、とあるアメリカの州立大学かなんかでの導入の過程で
「教育の成果は上げろ、予算は下げる」という大学の置かれた状況から、ある時一挙に、数千人の数学受講者を全部、これに切り替えたってこと。


アメリカで起きたことは10年後に日本でも起きるっていうけど
こういう授業形態の良し悪しとは別に、予算とかグローバル化()とかのアレで不可避的にこういうの、がーって入ってきそうねと思った。
個人的には、こういうので授業受けてみたいかもな、とは思った。


糖蜜災害気になる
ググったらあった
ボストン糖蜜災害 - Wikipedia