『日経サイエンス2013年3月号』

特集に、量子ゲーム理論という怪しげな言葉が踊っていたのでw 思わずチラ見

特集:量子ゲーム理論

何となく分かったような分からないような
まあそれは量子うんちゃらというものに必ずつきものなんですが、今回記事が2つで、片方がサイエンティフィック・アメリカンの記者、もう片方が高エネ研の人だったのも要因なのではないかと思わないこともない。日経サイエンスって、わりと専門にしている科学者自身が書いている(記事の訳)というイメージがあるのだが。


一つ目の記事では、コンドルセパラドックス、アローの不可能性定理、センの自由主義パラドックス囚人のジレンマがまずは紹介される。
センの自由主義パラドックスっていうのだけ知らなかったんだけど、個々人の選好の順序を優先して決めると、個々人の選好の順序を最適に組み合わせた順序(?)にならない、みたいな話?
囚人のジレンマを実際に実験してみると、相手の戦略が分からない時、合理的に考えるのであれば(自分の利得を最大にするには)裏切り(自白)を選ぶはずなのに、協力(黙秘)を選ぶ確率が、相手の戦略が分かっている時よりも上がる。これをもって、人間は合理的に行動しないみたいなことも言われるが、量子的なモデルを使って計算してみると、実際に実験して得られた結果と一致する。
最近の経済学では、人間の行動は合理的ではないという主張がよく見られるけど、量子論の枠組みを導入して、合理的という意味を拡張をすれば、人間の行動は合理的であるといえるのではないか、みたいな内容の記事だった。
ちなみに、これは決して人間の脳が量子コンピュータ的であるというような主張ではないと注意書きがされていた。
量子力学で使われている数学を用いて、「量子認知」みたいなことができるんじゃないのーみたいな話だったのではないかと思う。
ところで、この記事では、囚人のジレンマ以外にもいくつか事例が紹介されていたのだけど
ある数学者が、量子もつれを使った投票が可能になれば、上述したような投票を巡るパラドックスを回避できる、という研究をしているらしい。
内容は難しすぎてどうも他の研究者による検証が進んでいないようで、記事中でも内容についての説明はされていなかったけど
これはなんかすごくSFマインドを刺激されるねw
「賛成」か「反対」かではなく賛成と反対が重ねあわせた状態で投票する。集計されるときには、互いに相殺されたりして結果が出るらしい。
「クォンタム・ボート」とか名づけたら、こう一部のクラスタとかがすごい盛り上がりそうw


二つ目の記事は、さらに囚人のジレンマに絞った話。
筆者の高エネ研の人は、量子暗号、量子情報理論とかの研究をしている関係でここらへんにも携わっているっぽい。
囚人のジレンマには「黙秘(協力)」と「自白(裏切り)」の二つの戦略(古典的戦略)があるけれど、これにさらに両方が重ね合わされた「量子戦略」を選択肢に増やすことで、ジレンマが解決できる、とか。
参加者AとBがそれぞれにとる戦略と利得をグラフに表すと、両者が自分たちの利得を最大化しようとして互いに同じ選択をする(共に裏切る)ナッシュ均衡と、それぞれが相手の利得を害することなく両者の利得が最大になる(共に協力する)パレート効率とが、不一致を起こすのが囚人のジレンマ
ところが、量子戦略という選択肢を入れると、両者が量子戦略をとる、というのがナッシュ均衡かつパレート効率になる、らしい。
これは、量子力学の数学的モデルを単にあてはめてみただけなのか。
これに対して筆者は、量子戦略が有効なのは、相手の戦略が分からない時であることに注目し*1観測問題であるとか、確率とは主観的なものであるという考えだとかと色々関わっているんじゃないか、という。
「主観的な確率論」というのがまずあって、それの具体例が量子力学だったりゲーム理論だったりするのではないか、と。


戦略の重ねあわせと、量子もつれによる投票とか、全くイメージがうまくつかめないので
分かったような分からないような感じになるんだけど、
まあ、量子○○っていうのは、イメージで理解しようというのが間違いで、数学で理解しないとだめなんだろうなあ……
確率の主観的解釈っていうのもいまいちよくつかめてない。
あと、今回経済学者や数学者が書いている記事がなかったので、そっちの方で量子ゲーム理論ってどう思われてるんだろうなあというのが気になった。

政治家に見る反科学主義

アメリカの話。政治家が反科学的な発言をするようになっててどうしよう、という話。
最近、民主党共和党も反科学的。だけど、「○○は健康に悪い」系*2の単に誤った知識を言ってる民主党に比べて、「進化論は誤り」系の科学そのものを否定してくる共和党がよりたち悪い。
戦後すぐぐらいの頃から、科学重視政策で政府の予算が科学研究にちゃんとつくようになったりして、科学者が民衆と直接向き合わなくてもいいような制度になっていった。そして、『沈黙の春』あたりから公害問題とかで科学による害悪が注目を集めるようになる。そして、様々な規制が産業にかけられるようになっていく。で、産業側がそういう規制に抵抗して、「温暖化は間違っている」等の反科学的主張を展開するようになる。これと宗教的保守主義の反科学の二つが、共和党の支持基盤。
(「海面上昇」という言葉は「左翼的」なので、法案に使うな、みたいなことを言っている州議会もあるらしい)
政治的保守の反科学的主張をサポートしてしまっているのが、左翼であったはずのポストモダン思想。
事実と意見を同じものにしてしまって、悪しき相対主義を蔓延させてしまったのがよくない、と。


民主党がロバで共和党がゾウって知らなかった

自閉症と理系思考

これはまとめ部分だけさらっと眺めただけ
シリコンバレーには、自閉症の発症率が高いとか。
自閉症の遺伝子群と理系思考の遺伝子群に関係があるのではないか。
物事を整理して考えるような思考の遺伝子群が分かるようになるのではないか、とかそんな感じだったような。


2013年3月号 | 日経サイエンス

日経 サイエンス 2013年 03月号 [雑誌]

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*1:っていうか相手の戦略が分かってんならこっちの戦略は古典戦略の範囲で普通に決まる

*2:二酸化炭素は発がん物質とかそういうのまであるらしい