SF

早瀬耕『プラネタリウムの外側』

AIと現実・記憶・死などを扱ったSF小説 5本の短編から構成された連作短編集であるが、世界・登場人物・時系列はつながっていて、1本の長編小説としても読める。 扱われているテーマ的には、ベタなものなので、SFとしては読みやすい部類の作品だと思うが、と…

『ゲームSF傑作選 スタートボタンを押してください』

D.H.ウィルソン&J.J.アダムズ編 中原尚哉・古沢嘉通訳 タイトル通り、ゲームをテーマにした作品を扱った短編集で、意外と(?)ビターな後味の作品が多かったような印象 「1アップ」「キャラクター選択」がわりと好き 「救助よろ」「猫の王権」「リコイル…

冲方丁『マルドゥック・アノニマス3』

冲方丁『マルドゥック・アノニマス1』 - logical cypher scape 冲方丁『マルドゥック・アノニマス2』 - logical cypher scape シリーズ第3巻 スクランブルとヴェロシティは全3巻だったけど、アノニマスはまだ続くーマルドゥック・アノニマス3 (ハヤカワ…

ケン・リュウ『紙の動物園』

ケン・リュウについてようやく読めた。 すでに高い評価を得ているとおり、全般的に面白い短編集で、個人的にも面白かったものはあるのだが、一方で、表題作である「紙の動物園」や「もののあはれ」はあまりあわなかった(なお、分冊された文庫ではなく単行本…

ウィル・ワイルズ『時間のないホテル』

原著タイトルは"THE WAY INN” その名の通り、世界最大級のホテルチェーン「ウェイ・イン」を舞台にした物語 映画で見てみたい作品かもしれない、と読みながら思った。 いわゆるSFというよりは、どちらかといえば、世にも奇妙なテイストな感じから始まって、…

アーカイブ騎士団『流通小説集』

アーカイブ騎士団第9作目は、「流通小説」というかなり聞き慣れないジャンル 過去作の感想は以下 第15回文フリ感想 - logical cypher scape(004『ロボット小説集』) 第17回感想 - logical cypher scape(005『ゾンビ小説集』) 第19回文学フリマ感想 - …

グレッグ・イーガン『シルトの梯子』

イーガンの長編 新刊であるが、原著の刊行は2002年で、『ディアスポラ』よりあとで、『白熱光』や直交三部作より前に書かれた作品 『白熱光』や直交三部作は、主人公がもはや人類ではなく、彼らの物理学がどのように発展していくのかを見ていくみたいなとこ…

キム・スタンリー・ロビンスン『ブルー・マーズ』上下

キム・スタンリー・ロビンスン『レッド・マーズ』上下 - logical cypher scape キム・スタンリー・ロビンスン『グリーン・マーズ』上下 - logical cypher scape に続く、マーズ三部作完結編 1巻につき600ページとすれば、全部で文庫本およそ3600ページの大長…

キム・スタンリー・ロビンスン『グリーン・マーズ』上下

キム・スタンリー・ロビンスン『レッド・マーズ』上下 - logical cypher scapeの続編 2020年代〜2061年までを描いた前作に引き続き、2100年代初頭の火星を描く。 タイトルにあるとおり、火星の緑化が少しずつ進行している。人為的な温暖化が進行し、大気も厚…

キム・スタンリー・ロビンスン『レッド・マーズ』上下

マーズ三部作の第一弾 200年間に及ぶ火星植民の歴史を描く大河SF作品 『レッド・マーズ』原作1992年、邦訳1998年 『グリーン・マーズ』原作1993年、邦訳2001年 と出ていたところ、第三部の『ブルー・マーズ』は原作1996年に対して、邦訳が2017年と随分と間が…

オキシタケヒコ『筺底のエルピス5-迷い子たちの一歩-』

壮絶なる幕引きを迎えた4巻からおよそ1年あまりを経て刊行された、続刊たる5巻 絶望的な状況からの再起を描く 筆者曰く、ここから後半が始まるとのこと。今後、物語の根幹に関わる謎へと迫っていくことになるのかもしれない。 それにしても、毎度のこと思…

冲方丁『テスタメントシュピーゲル』3下

堂々の完結! 帯によれば、「10年がかり」とある。 自分は2009年からの読者なので、この物語との付き合いは8年ということになる。 これまでの感想 冲方丁『スプライトシュピーゲル』『オイレンシュピーゲル』 - logical cypher scape あんまりちゃんと感想メ…

グレッグ・イーガン『アロウズ・オブ・タイム』

グレッグ・イーガン『クロックワーク・ロケット』 - logical cypher scape、グレッグ・イーガン『エターナル・フレイム』 - logical cypher scapeに続く直交三部作完結編我々の宇宙とは物理学上のパラメータが異なる宇宙を舞台にした世代宇宙船SF 1巻の主人…

チャイナ・ミエヴィル『爆発の三つの欠片』

28編もの短編が収録されている短編集 いわゆる「サイエンス」なSFというよりはむしろ、奇妙な話、不思議な話というテイスト わりと現代のロンドンを舞台にしたような作品が多い気がした 28編もあるので、面白いものもあればそうでもないものもある。というか…

人工知能学会編『AIと人類は共存できるか』

人工知能学会編となっているが、基本的にはSF短編集 5つの短編に、それぞれ研究者の解説がつく形式となっている 全体としてはAIが実社会に浸透した世界を描いており、5つの短編はそれぞれ「倫理」「社会」「政治」「信仰」「芸術」がテーマとして設定されて…

『BLAME! THE ANTHOLOGY』

弐瓶勉の傑作SFマンガ『BLAME!』が小説になった! なんだそれは! 小説とマンガの違いを感じさせるところもあり(例えば、登場する珪素生物の雰囲気の違い)、しかしそれでもBLAME!はBLAME!だなと感じさせるところもあり。BLAME! THE ANTHOLOGY (ハヤカワ文…

『SFマガジン2017年6月号』

アジア系SF特集と春アニメ特集の二本立て ざざーっと眺めただけSFマガジン 2017年 06 月号出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/04/25メディア: 雑誌この商品を含むブログ (3件) を見る 折りたたみ北京 カク 景芳/大谷真弓訳(カク=赤へんにおおざと) ざざ…

ジョン・ヴァーリィ『逆光の夏』

ジョン・ヴァーリィ『ブルー・シャンペン』 - logical cypher scapeに引き続きヴァーリィ 傑作短編集ということで、これまで読んだ奴が結構多かったので、とりあえず未読作品だけ アンナ=ルイーゼ・バッハシリーズ1作と、どのシリーズにも属していない1作…

ジョン・ヴァーリィ『ブルー・シャンペン』

ヴァーリィはジョン・ヴァーリィ『汝、コンピュータの夢(〈八世界〉全短編1)』 - logical cypher scape、ジョン・ヴァーリィ『さようなら、ロビンソン・クルーソー(〈八世界〉全短編2) - logical cypher scape、ジョン・ヴァーリィ『へびつかい座ホッ…

ガレス・L・パウエル『ガンメタル・ゴースト』

21世紀半ば、飛行船が飛び交い、没入型ゲームが人気を博し、中国と英仏との間で緊張が高まる未来世界を舞台にした、痛快冒険SF 国家的な陰謀に巻き込まれ、自分の人生がひっくり返されてしまった、元記者の女性、隻眼の猿、英皇太子の3人が、自分たちの人生…

奥泉光『ビビビ・ビ・バップ』

21世紀末の未来を舞台に、ジャズピアニストのフォギーが、世界的なロボット工学者からVR生前葬でのピアノ演奏を頼まれたことから始まる一大騒動。 VRとして精緻に再現された1960年代の新宿、往年のの名ジャズプレイヤー、棋士、落語家を模したアンドロイド…

『虐殺器官』

『屍者の帝国』も『ハーモニー』も見そびれたけど、『虐殺器官』は見にいってきたぞ! シーウィード、マジで海苔だ!w みたいな、映像化ならではの面白さ(?)もありつつ。 全翼機に感じるよさってなんなんでしょ 射出ポッドの着陸時の容赦のなさとかすご…

中村融編『ワイオミング生まれの宇宙飛行士』

SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー第1弾・宇宙開発SF傑作選 宇宙SFではなく、宇宙「開発」SFであることが肝で、もしアポロ計画が続いていたらなど現実と地続きの作品が多い。 ほとんどが90年代の作品で、宇宙開発へのノスタルジー的な情緒を感じられるの…

グレッグ・イーガン『エターナル・フレイム』

直交三部作の2巻 母星に迫った危機への対処法を探求するべく旅立った宇宙船〈孤絶〉 2巻では、その〈孤絶〉を打ち上げた者たちから4世代目にあたる人々の時代、物理学者カルラ、生物学者カルロ、天文学者タマラの3人を中心とした物語となっている。 直交…

上田早夕里『夢みる葦笛』

イメージ喚起力豊かで映像がありありと思い浮かぶ作品が並べられたSF短編集。 ホラー・アンソロジーが初出の作品も多いが、それらもSFとして読めるようになっている。 感覚拡張的なテーマが多かったような気がする。 「滑車の地」が好き あと、意外、という…

冲方丁『テスタメントシュピーゲル』3上

「前へ進み続けろ!! 真っ直ぐ前へ――!!」 いよいよ完結目前の同シリーズ3巻の上巻 1巻及び2巻において、チームから離れそれぞれ単独行動を余儀なくされたMPB、MSSの特甲児童たちが、ついに再集結を果たし、反撃を開始する。 涼月が進む先が作戦となり、情…

冲方丁『マルドゥック・アノニマス2』

冲方丁『マルドゥック・アノニマス1』 - logical cypher scapeの続き そして、3巻に続く感じ。マルドゥック・アノニマス 2 (ハヤカワ文庫JA)作者: 冲方丁,寺田克也出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/09/21メディア: 文庫この商品を含むブログ (4件) を…

『怪獣小説集』『ノーサンブリア物語』

アーカイブ騎士団『怪獣小説集』 怪獣小説集作者: アーカイブ騎士団出版社/メーカー: アーカイブ騎士団発売日: 2016/11/23メディア: Kindle版この商品を含むブログ (1件) を見る ニューヨークと朝霞の光線怪獣 (森川 真) 二次大戦末期、朝霞の怪獣研究所を…

草野原々『最後にして最初のアイドル』

ラブライブ!の二次創作(として発表後、固有名詞が変更されたもの)が、ハヤカワSFコンテスト特別賞を受賞したと話題になった本作 とにかく、事態があれよあれよとスケールアップしていき、次々と開陳されていくSFネタを楽しんでいるうちに、アイドルとはそ…

結城充考『躯体上の翼』

『BLAME!』と『ガルム・ウォーズ』と『ナウシカ』、そりゃ俺好きだわみたいな奴!! 読み始めてすぐに世界観に引き込まれていった。 出た当初からちょっと気になっていたのだけど、あとでいいかなと思っていたら、文庫化してた。単行本出たのがもう3年前でち…