SF

グレッグ・イーガン『クロックワーク・ロケット』

直行三部作の1作目 1作目なので物語としては途中だが、女性物理学者ヤルダの生涯が1冊かけて描かれている。 『白熱光』は地球ではない星で物理学が発展していく話だったが、こちらは、我々の住んでいる宇宙とは別の宇宙での話。 我々の宇宙と、物理法則が…

大森望・日下三蔵編『年刊日本SF傑作選 アステロイド・ツリーの彼方へ』

2015年に発表されたSF短編のなから19作品+新人賞1作品 SFマガジンの隔月刊化に伴い、短編発表の機会は減るも、同人誌や企業PRあるいはtwitterなど様々な媒体での発表作品から広く集められている。 既読作品は1作のみで、去年は確かにSF短編全然読んでなか…

小川哲『ユートロニカのこちら側』

企業による個人情報収集が著しく進んだ結果、少しずつ自由の概念が変わっていった世界を舞台にした連作短編集 第3回ハヤカワSFコンテスト大賞作品 アメリカを主な舞台にしているからなのか、どこか翻訳小説のような文体で書かれている。 SFではあるのだが、…

冲方丁『マルドゥック・アノニマス1』

マルドゥック・アノニマス 1 (ハヤカワ文庫JA)作者: 冲方丁,寺田克也出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/03/24メディア: 文庫この商品を含むブログ (8件) を見るとりあえず、読んだという記録

ジョン・ヴァーリィ『へびつかい座ホットライン』

未来の太陽系を描く「八世界」シリーズの長編作品 同シリーズの短編集は読んだので、満を持して長編を手に取った。 発表順はよく知らないが、作品世界内の時間順序でいうと、この作品がシリーズ内では一番後の時代にあたる。 短編集とは雰囲気が違う感じなの…

オキシタケヒコ『筺底のエルピス4―廃棄未来―』

本来は3巻だったのだけどあまりにも長くなりすぎて4巻になってしまった「廃棄未来」 2冊に分かれた上に分厚い 分厚いのだけど、1冊でここまでやるのかーっていうくらい展開していく。 そして、見事に一区切りつく。 2巻から始まった門部とジ・アイとの抗争…

オキシタケヒコ『筺底のエルピス3―狩人のサーカス―』

ライトノベルの皮を被ったハードSFシリーズ第3弾 二分冊になってしまったうちの前半 1巻の時から絶望的な展開を見せる同シリーズだが、その傾向は益々加速している。というか、容赦なく死ぬ。 別に愛着あるキャラってわけじゃないんだけど、ちょ、お前ここで…

ジョン・ヴァーリィ『さようなら、ロビンソン・クルーソー(〈八世界〉全短編2)

ジョン・ヴァーリィ『汝、コンピュータの夢(〈八世界〉全短編1)』 - logical cypher scapeに続く第2巻 第1巻は、1974年から1976年までに発表された7編、第2巻は、1976年から1980年までに発表された6編を収録。 全体的には、1巻の方が好きだったかも。…

大森望編『NOVA+ 屍者たちの帝国』

伊藤計劃の遺した『屍者の帝国』の設定をもとに、いわゆるシェアード・ワールドものとして編まれたアンソロジー。 ここまでこういう作品ばかりが集まってると知らなかったので、「みんな好き勝手やりすぎww」と思いながら読んでた。 まあ、元々の伊藤計劃…

ブライアン・オールディス『寄港地のない船』

年末ギリギリに読み終わったので、とりあえず記録用に短めに 恒星間飛行するために、乗組員が何世代にも渡って乗船することになっている宇宙船を舞台に、文明が退化してしまった人類が、自分たちについての真実を知ることになるまでの物語 1958年に発表され…

円城塔『エピローグ』

多宇宙にわたって人類とOTCの戦いが展開される未来において、OTCの落とすスマートマテリアルを拾う任務に従事する朝戸とアラクネ、連続殺人事件の捜査を担当する刑事のクラビトのエピソードが交互に進行しながら、人類の興亡を賭けた戦争が物語についての物…

スタニスワフ・レム『短編ベスト10』

ポーランドの読者、編集者、レム自身によって選ばれた短編集。 本国では、15編選ばれているが、5編については既に邦訳があるため、未邦訳のものだけを選んだのがこの『短編ベスト10』 邦訳済みの作品は、『完全なる真空』と『泰平ヨンの未来学会議』に…

ジョン・ヴァーリィ『汝、コンピュータの夢(〈八世界〉全短編1)』

ヴァーリィの〈八世界〉シリーズに属する短編を集めた短編集の1巻。太陽系SFにしてサイバーパンク的なところもありジェンダーSFなところもある。でも、そういういかにもSFガジェットを押し出しているわけではなくて、プロットや人間関係にスポットが当てられ…

オキシタケヒコ『筺底のエルピス2 夏の終わり』

オキシタケヒコ『筺底のエルピス 絶滅前線』 - logical cypher scapeに引き続き、2巻 現在刊行されているのは2巻まで というか、これが8月に出たのを見かけたのがきっかけで手に取ったわけだけど*1 ちなみに3巻は年明け着手、来春刊行予定らしい→参照:h…

オキシタケヒコ『筺底のエルピス 絶滅前線』

伝奇異能バトルSFライトノベル 鬼を退治する宮内庁の組織に属する青年と女子高生の話だが、異性知性体とかワームホールとかが出てくるSF オキシタケヒコ『波の手紙が響くとき』 - logical cypher scapeのオキシタケヒコによる、ガガガ文庫から出た作品 ガガ…

クリストファー・プリースト『限りなき夏』

デビュー作や〈夢幻群島〉シリーズ収録した全8編の日本オリジナル短編集 手に取るまで気づいてなかったけど「未来の文学」シリーズだった 限りなき夏 以前に別のところでも読んだことある奴なので省略 青ざめた逍遙 時間SFかつラブロマンス 馬車と汽車が走…

グレッグ・イーガン『ゼンデギ』

タイトルは、ペルシア語で「life」の意味 舞台はほぼイラン マーティンとナシムという2人の主人公の話が交互に進む 2012年の第一部と2027-2028年の第二部の二部構成 第一部では、ジャーナリストのマーティンがイランの民主化革命を取材するパートと、10歳の…

大森望・日下三蔵『折り紙衛星の伝説 年刊日本SF傑作選』

去年から、漢字4文字タイトルから表題作タイトルに変わった創元の年刊日本SF傑作選 やっぱ、個人的には漢字4文字タイトルの方が好きだったかもしれないw 長谷敏司「10万人のテリー」 『BEATLESS』と同じ世界観、「アナログハック・オープンリソース」プロジ…

宮内悠介『エクソダス症候群』

『盤上の夜』『ヨハネスブルグの天使たち』の宮内悠介、長編第一作 火星を舞台にした精神医学SF 馬車を使う火星開拓地、セフィロトの樹を模した精神病院と、舞台装置はかなりいい ただ、何というかかなりあっさり目だったなという印象 チャーリーの演出した…

『テスタメント・シュピーゲル2』下巻

冲方丁『テスタメント・シュピーゲル2』上巻 - logical cypher scapeの続き あと、1巻の感想はこちらに少し これを読んで、1巻についてちゃんと読解できてなかった部分、誤解してた部分について、わかったところもあるので、もう一回読み直したい テスタ…

オキシタケヒコ『波の手紙が響くとき』

4編の連作中短編からなる、SFミステリ風音響SF 武佐音研に持ち込まれる事件を、音響工学を駆使して解決するというのが、それぞれの話のフォーマットになっているが、最終話に至って、それまでの話が伏線として回収されていき、さらに話は音響工学にとどまら…

冲方丁『テスタメント・シュピーゲル2』上巻

とりあえず、読んだということでメモ まだ上巻なので感想はのちほど 事前に1巻読み直していたとはいえ、全然、全体像を把握できないでいる なんか、タイムテーブルほしい…… それはそれとして、乙の成長っぷりがすごくいい 雛の方は雛の方で、そうなるかあと…

中村融編『宇宙生命SF傑作選 黒い破壊者』

主に、5〜60年代の「宇宙生命SF」を集めたアンソロジー。 古き良きSF的な雰囲気というか? 「おじいちゃん」「キリエ」「妖精の棲む樹」は、謎解き的なオチの面白さのある話 リチャード・マッケナ「狩人よ、故郷に帰れ」(中村融訳) 1963年発表(初訳) …

柴田勝家『ニルヤの島』

第2回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作 著者の名前と風貌で話題を読んだが、それは作品とは関係なし、作者についての情報で作品と関係しているのは、民族学専攻の大学院生ということ というわけで、文化人類学南洋SF 文化人類学南洋SFというと、『ナチュン』…

アンディ・ウィアー『火星の人』

火星版ゼロ・グラビティあるいはアポロ13 火星に置いてきぼりをくらった主人公が、次々に襲いかかる困難に立ち向かいサヴァイバルしていく物語だが、主人公が絶えずユーモアを忘れず次々にジョークを繰り出してくるので、読んでいて思わず笑ってしまう小説…

キム・スタンリー・ロビンスン『2312 太陽系動乱』

そのタイトル通り、2312年の太陽系を舞台にしたSF 水星、金星、温暖化した地球、火星、小惑星を改造したテラリウム、木星、土星、冥王星といった様々な星を巡り、描かれる風景がどれも作品 SFを読んでいるなあっていう気分に浸れたw メインプロットは、実は…

宮内悠介「薄ければ薄いほど」(『小説現代』)/オキシタケヒコ「サイレンの呪文」(『SFマガジン』)/『日経サイエンス』

宮内悠介「薄ければ薄いほど」(『小説現代』9月号) 終末医療と代替医療を扱った作品 宮内作品ではおなじみの、男性ジャーナリストによる一人称視点 舞台は、北海道にある白樺荘というホスピス そこでは代表の意向で、写真も含む一切の記録がなされておらず…

ロラン・ジュヌフォール 『オマル――導きの惑星』

フランスSF オマルというのは惑星の名前。表面積が地球の何千倍だかあって、そのために住人たちは世界が平らだと思っている。 オマルには、ヒト族の他に、9つの関節のある腕状突起をもつシレ族、関節がヒトとは逆向きのホドキン族の3種類の種族が暮らしてい…

仁木稔『ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち』

仁木稔『グアルディア』 - logical cypher scape、仁木稔『ラ・イストリア』 - logical cypher scape、仁木稔『ミカイールの階梯』 - logical cypher scapeに続くHISTORIAシリーズの短篇集 「ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち」「はじまりと終わりの世界樹…

仁木稔『ミカイールの階梯』

仁木稔『グアルディア』 - logical cypher scape、仁木稔『ラ・イストリア』 - logical cypher scapeに続く、HISTORIAシリーズの第3作 『グアルディア』が27世紀の中南米、『ラ・イストリア』が23世紀のメキシコを舞台にしていたのに対して、こちらは25世紀…