オキシタケヒコ『筺底のエルピス2 夏の終わり』

オキシタケヒコ『筺底のエルピス 絶滅前線』 - logical cypher scapeに引き続き、2巻
現在刊行されているのは2巻まで
というか、これが8月に出たのを見かけたのがきっかけで手に取ったわけだけど*1
ちなみに3巻は年明け着手、来春刊行予定らしい→参照:https://twitter.com/TakeOxi/status/658503168028987392


1巻に引き続き、面白い!
ライトノベルの皮を被ったSF!
表紙はいかにもラノベっぽい(?)水着女子、ページをひらいて挟まっているカラーイラストは夏の夜空を見上げる少女達
でもまあ、そんなキャッキャした雰囲気は、そう長くは続かないのである!w


「鬼」こと殺戮因果憑依体と戦うための技術を地球人類にもたらした異星知性体はすべてで3体、ワームホールゲートも地球上には3つある。
1つは門部、1つはゲオルギウス会、そしてもう一つは、THE EYEと呼ばれる組織のもとにある。
門部は日本を、ゲオルギウス会は世界の3分の1を、そして残り3分の2をTHE EYEが管轄しているが、それぞれに考え方が違っており、大きな目的としては殺戮因果憑依体の数を減らし人類を守ることだが、その手段はそれぞれに違う。
そして、門部の上層部は、彼らについての情報を構成員には伝えていない。
THE EYEから、白鬼を宿した結を受け渡すように、さもなければ門部を制圧するという脅迫が届く。
THE EYEはあまりの強力な組織であり、門部の優秀な封伐員が彼らに殺されたこともある。逆らっても勝ち目はないが、門部は結を守ることを選ぶ。


一方、結はそのことを聞かされて、最後にやりたいこととして、友人の奥菜伊吹と朱鷺川ひかえを仲直りさせたいという。
門部の合宿所がある山間部へと向かうことになった。
ここはいわば青春ゾーンなんだけど、新キャラが何人か出てくるんだけど、わりとみんな重要人物というか後半戦の展開に関わってくる。


新登場人物として重要なのは、まず1巻では名前だけでてきて実際の登場はまだだった、姥山と霧島がいる。門部封伐員の中でも実力者の2人である。
姥山は、眼帯にリーゼントという風貌で、以前は圭とコンビを組んでいた。
霧島は、青鬼専門の封伐員で、正体は秘されている。
鬼は、基本的に赤鬼と青鬼がいて、青鬼は謀殺を行う鬼で、赤鬼よりも厄介。
それから、奥菜伊吹。彼女はかつてモデルの仕事をしていた金髪美人女子高生なのだが、彼の父親が門部の封伐員だった。そして、彼女の父親に封伐員として育てられたのが姥山。が、門部が以前THE EYEと相対したときに殺されている。しかし、娘の伊吹は門部については一切知らされておらず、父親も身勝手に失踪したのだと思っている。姥山が父親の部下であったことは知っていて、幼い頃から恋心を抱いている。姥山も伊吹のことを慕ってはいるが、尊敬する人の娘ということで距離を置いて接している。


前半は、結の、伊吹・ひかえに対する友情や、伊吹と姥山の関係などの青春的な人間関係が織りなされる。それに、叶と圭の関係もある。圭は、そもそも学校生活をいっさい送らずに成人を迎えているので、青春そのものに対する憧れがあって、そういう視点で彼らを見つめている。
が、後半から一転。
彼らの中に、青鬼に憑依された者が混ざっていることが判明する。
そして、次々と彼らの中に、青鬼だけではなく、他にも正体を隠していた者がいたことが判明していく。
霧島による対青鬼バトルから始まって、後半はとにかく異能バトル・バトル・バトル
相手は一枚も二枚も上手なTHE EYE
彼らは、天眼と停時フィールドだけでなく、異星知性体からのテクノロジーで身体能力を向上させているばかりではなく、鬼を個人兵装として利用する。彼らは、鬼に憑依された人間を停時フィールドで封印しておき、利用する際に殺して、自らの身体に鬼を憑依させて戦うのである。
柩使いとしての能力も高い上に、鬼の能力まで持ち合わせている相手とのバトル


一方で、門部本部にもTHE EYEの制圧部隊が入ってくる。
柩殺しの能力を持つ奴の能力がすごい。
副作用で放射線がでまくる、という設定がすごくSFしてる。
そいつをどう倒すのか、というのも、単純にバトルして倒すというわけではなくて、一種のトリックめいた仕掛けをした上での心理戦になっている。
『エルピス』で出てくる異能バトルは、これまで出てきた設定をどのように利用していくか、というところがあって、その設定をそうやって使うことができるのか、というのがあって面白い。


THE EYEが攻め込んできたら門部は勝てない。では、負けないようにするにはどうするか、ということで作戦が組まれていて
ぎりぎり負けはしないのだけど、被害甚大で、2巻でもうこんなに、という追い込まれっぷり
そして、THE EYEの正体というか思想が、なるほどという感じで、すごく陰謀論めいた世界観が広がって、「夏の終わり」ってそういうことなのっていうのもあって、1巻の白鬼の設定以上の歴史的な広がりを見せるあたりも、SF的。


3巻楽しみ

*1:存在は知ってた