ロラン・ジュヌフォール 『オマル――導きの惑星』

フランスSF
オマルというのは惑星の名前。表面積が地球の何千倍だかあって、そのために住人たちは世界が平らだと思っている。
オマルには、ヒト族の他に、9つの関節のある腕状突起をもつシレ族、関節がヒトとは逆向きのホドキン族の3種類の種族が暮らしている。何百年と互いに戦争をしていた3種族だが、60年程前に和平条約が結ばれた。という世界が舞台。
技術レベルがどのくらいなのかはいまいちよく分からなかった。飛行船とか列車とかは出てくる。コンピュータとかそういうのはないっぽいけど、飛行船を制御する人工頭脳というのは出てくる。ただ、飛行船はそもそもシレ族しか運用する技術を持ち合わせていないらしい。


それぞれ種族も出自も異なる6人が、22年前に発行された乗船券と卵の殻の破片を持って、飛行船イャルテル号へと集まってくる。
彼らが全員揃うまでが前半
後半は、彼らがシレ族のゲームをしながら、負けた者から自らの出自を語っていくというもの
この下りがとても面白い
オマルという世界の、3種族それぞれの様々な習俗などが描かれて、異世界探訪として楽しめると同時に、おのおのの波瀾万丈の半生の物語が面白い。
特に、シレ族のハンロンファイルのエピソードは個人的には好き。科学的真理を探求しようとする(がうまくいかない)話。
彼らの誰もが、自分が元々属していたコミュニティから迫害なりなんなりをされていて、アイデンティティに悩まされている。
そんな彼らに乗船券を送ったのは一体誰なのか、彼らを集めた目的は一体何なのか
最後には、オマルという星の謎とともに明かされる。



アメス(ホドキン族の男性)
シェタン(ヒト族の女性)
アレサンドル(ヒト族の男性、家畜人(エレラク))
カジュル(ヒト族の男性、作家)
ハンロンファイル(シレ族の男性、医者)
シカンダイルル(シレ族の女性、独り子(ロシル))


シカンダイルルだけは、正規の方法で飛行船には乗らず、海賊としてイャルテル号に襲撃してくる。
その時の戦闘で、イャルテル号は大幅に破損して、かろうじて浮かんでいる状態になり、乗客のほとんどは亡くなるか落下する。
卵の殻の破片を持った6人だけが残る。
6人の破片はつなぎ合わせられるようになっていて、内側が、フェジイというゲームの駒の鋳型となっていた。というわけで、フェジイをすることになる。
フェジイは、シレ族のゲームで、単なるゲームであることを越えて、宗教的な意味合いをもっている。シレ族は、フェジイに世界の意味とか運命とかを見出している。
ヒト族のシェタンは、フェジイをやったこともなく、シレ族のそういう思い入れは最初は理解できなくて、ゲームはゲームと割り切っているのだが、そんな彼女も最終的には思い入れを強めることとなる。
勝者はこのグループのリーダーになる、敗者は自分について語るという取り決めがなされる。


オマル-導きの惑星- (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

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