冲方丁『テスタメントシュピーゲル』3上

「前へ進み続けろ!! 真っ直ぐ前へ――!!」
いよいよ完結目前の同シリーズ3巻の上巻
1巻及び2巻において、チームから離れそれぞれ単独行動を余儀なくされたMPB、MSSの特甲児童たちが、ついに再集結を果たし、反撃を開始する。
涼月が進む先が作戦となり、情報となる。蒸気機関車は、彼女達の、そしてミネアポリスを守る者たち全ての反撃の狼煙をあげて驀進する。

ここまで分断され劣勢に立たされてきたのが、再集結していくのはそれだけで痛快
「夕霧は信じてましたよ」のセリフが泣ける。
MPBの3人は完全に3人チームとしての復活を遂げる。
一方、MSSの3人はいまだ再集結ならず、なのではあるが、雛は〈太公望〉とともに、皇・螢と共闘することになり、乙のもとには一時的ながら彼が現れ、決して孤独な戦いはしていない。


シャーリーンとサードアイも追い詰められはじめ、未来党にも捜査の手が届き、〈キャラバン〉が恐慌をきたし、いよいよリヒャルト・トラクル包囲網もしまりつつある。
エゴン・ポリが、その怠惰の罪をまさに怠惰によって償う、というのなかなかよかった。このシリーズ、大人たちについていうと、完全に善の人はいないから。多かれ少なかれ自らも悪に手を染めつつ、しかし世界から悪をなくそうとするという困難をなしている。そういう意味で、この人は味方か敵かというのを分かりにくく描いたりもしていて、エゴン・ポリもまたその1人だったから。


あとは、鳳を取り戻すこと、特甲猟兵をどうにかすることが最終決戦か?


涼月が、今までにもまして、全ての鍵となってきている。
皇・螢からもあいつはよくわからないと言われ、特甲児童たちをつなぐハブとなっている。