キム・スタンリー・ロビンスン『レッド・マーズ』上下

マーズ三部作の第一弾
200年間に及ぶ火星植民の歴史を描く大河SF作品
『レッド・マーズ』原作1992年、邦訳1998年
『グリーン・マーズ』原作1993年、邦訳2001年
と出ていたところ、第三部の『ブルー・マーズ』は原作1996年に対して、邦訳が2017年と随分と間が空いてしまっているのだが、自分の場合、それのおかげで本作を知ることができた。
ちなみに、同じ著者によるキム・スタンリー・ロビンスン『2312 太陽系動乱』 - logical cypher scape2という作品もある。


『レッド・マーズ』では、2026年から2061年までが描かれる。
まず、100人からなる科学者集団が最初に火星への植民を行うところから始まる。彼らは後に「最初の100人」と呼ばれるようになる。
この100人の中の5,6名程を主人公に据えて、物語は展開していく。
前半は、「最初の100人」の中での考え方の違いなどによる対立などが描かれていく。その中でも特に大きな対立は、火星をテラフォーミングするべきか否か、である。
その後、次々と植民者が増えていき、火星にいくつもの都市が作られていく。
火星植民は国連を中心に行われているが、その背後にはいくつもの超国籍企業体がおり、火星はこうした企業体の経済的支配を受けることになる。
「最初の100人」はそれぞれバラバラに活動しているようになっているが、それぞれ火星におけるキーパーソンとなっていて、もはや科学者というよりは事業家、政治家、フィクサー的な立ち位置にいる者たちも多い。
火星には次々と労働者が送られてきて不満が蓄積していく一方、地球も政治的な混乱が続き火星への関心が薄れていく。
そんな中、革命が勃発するところまでが描かれている。


上下巻で、第一部から第八部まであるが、それぞれ、視点人物を交替させながら展開していく。
(ただしすべて三人称。また、ゴシック体で書かれた断章が時々挟まれており、そうした章は基本的に誰の視点でもない)
中心人物たちがおおむねみんなクセが強く、もっと言うと、素直な好意を抱きにくい人が多いのだが、火星の歴史を俯瞰した年代記というよりは、そうした個々人の視点に寄った感じで語られていくものとなっている。
(ひたすら人間関係のいざこざばかりで進んでいく箇所とかもあるw)

第一部 祭りの夜
第二部 出航
第三部 坩堝
第四部 懐かしき故郷
第五部 歴史への転落
第六部 テーブルの下の銃
第七部 いつか来た道
第八部 シカタ・ガ・ナイ

第一部 祭りの夜

火星に、ニコシアという新しい都市ができる。
フランク・チャーマーズとジョン・ブーンの演説シーンから始まる。
この2人が、この物語の主要人物であり、第一部は、フランクの視点から進められていく。
フランクとジョンは古くからの友人なのだが、この時期はお互いに距離を置くようになっている。
フランクは、火星に入植してきたアラブ人たちと近しくなり、ジョンが近く迫った条約改定からアラブ人を閉め出そうとしているという話をアラブ人に対してしている。
フランクがお膳立てして、アラブ人にジョンを暗殺させる。


第二部 出航

時は遡り2026年、後に「最初の100人」と呼ばれることになる100人の科学者・技術者を乗せた宇宙船〈アレス〉が、地球から火星へ向かうまで。
視点人物は、マヤ・トイトヴナ。
この100人というのは、もちろん優秀な科学者・技術者が集められているのだが、男性と女性が50人ずつ、アメリカ人とロシア人が同数ずつ、他の国も米露の勢力バランスが均衡するように調整された人数で構成されている。
と、まあかなり政治的に慎重を期して選ばれた人員となっている。
また、様々な基準の性格テストも受けているのだが、これについては、地球には二度と帰れない旅に出てもいいと思える狂気と、それでいて、科学のためと言いつくろえるだけの正気とを、家族や友人たちと離れても構わないという孤独への志向を持ちながら、共同生活を営む社会性をも持ち合わせなければならないという、ダブル・バインドが前提とされていた。
このテストを作った精神科医のミシェルは、結局、自らも乗船することとなる。
そんなわけで、一筋縄ではいかない人々が集まっているのである。
ちなみに平均年齢は46歳。下は33歳、上は58歳まで。
植民団のアメリカ側リーダーは、フランク
ロシア側リーダーが、マヤ
第二部では、マヤの視点から進んでいくが、マヤ側から見るとフランクは何事も卒なくこなしつつも決して本心を明かさない人物である。
アメリカにはもう一人、ジョン・ブーンというキーパーソンがいる。
彼は、初めての火星着陸をして、すでに多大なる名声を獲得しており、「最初の100人」の中で間違いなく最も有名な人物であり、また同時に、弁舌をふるうのが得意で、人々を惹きつけるものをもっている人物である。
というわけで、フランクよりジョンのほうが、表向きリーダーっぽいし、実は、この後もフランクはあまりリーダーっぽいところは出てこない。というか、あまり性格のいい奴ではない。
一方、ロシア側リーダーのマヤも、なんというかなんでリーダーに選ばれたのかよくわからない。
50人ずつの男女が閉鎖空間で過ごすのだから、カップルやら夫婦やらが誕生するのも自然であり、さらにいうと〈アレス〉はプライベートな空間も十分に確保されており、秘密を作るのも容易な環境になっている。
で、マヤは、ジョンに惹かれながらもフランクと関係を持つ、という三角関係を作る。
この三角関係は、火星到着後も続き、マヤのひどく情緒不安定な面がわりと延々描き続けられることになる。
もう一人、重要な人物として、ロシア側のアルカディイがいる。
彼は、〈アレス〉内で行われる訓練を担当しているのだが、非常に確率の低い事態を想定して、絶対に生存不可能な結果に陥るような訓練をよく行う。
火星を独立させることを目指すかのような発言を繰り返し、一種の問題児扱いされている。
ある時、大規模な太陽嵐に遭遇し、宇宙船最奥部の部屋に全員で避難しておいた折、件の性格テストで嘘をついたことをおおっぴらに発表した。彼もまたある種のリーダーシップを持っている人物である。
(ちなみに、この計画は当然ながら多くの人たちから関心をもたれていて、船内の様子は地球に中継されている。アルカディイは、地球と切り離された瞬間を狙って、地球側に明かすことができない彼らの本音を爆発させたと。地球とテレビによってつながっていることは、前半では地球から見られていることや、逆に番組を地球に発信して自分たちのグループの支持を集めたりすることとして描かれている)
他にさらに、ヒロコという日本人女性がいて、彼女は閉鎖型環境システム、船内や火星での農園を作る際のエキスパートである。彼女は非常に謎めいていて、ヒロコ・グループを形成して、農園からほとんど出てこなくなる。
また、第一部では、マヤが密航者らしき人影を目撃する。


90年代初頭の作品だなーという時代を感じたのは、国連主導でありつつ、米露で二分しているかのような情勢になっていること
今なら、米露がなおも大国なのは変わらないとしても、中国がもっと登場するだろう。
「最初の100人」の中に中国人はいないし、もっというと、アジア人はヒロコしかいない。
一方で、ヒロコの影響で「シカタ・ガ・ナイ」という日本語が広まるという描写が描かれたりしている。ロビンスンは、『太陽系動乱』でも水星の地名に広重とか使ってたし、なんか日本語とかが好きなのかもしれない。


〈アレス〉は軌道上で組み立てられた巨大な宇宙船
火星着陸の際には、着陸船に分乗していたっぽいけど、着陸シーンそのものは描かれていなかったので、着陸方法はわからなかった。

第三部 坩堝

火星に着陸し、のちに「アンダーヒル」と呼ばれることになる街の建設過程が描かれる。
第三部の視点人物はナディア
ナディアは、マヤの親友というポジションで、技術者である。
火星に着陸後は、居住棟の建設に励みながら、一方でほかの様々なセクションから技術的なトラブルシューターとして呼ばれ、多忙な日々を送る。
それでいながら、しょっちゅうマヤから泣きながら愚痴を聞かされ、うんざりしている。
結果的に、指を切断する怪我を負ってしまったナディアは、地質学者のアン・クレイボーンに誘われて、調査旅行に同行する。
この調査旅行に赴いた地質学者は5名で、アン派とフィリス派に分かれている。
アンは純粋な科学者で火星の調査を最優先に考える一方、フィリスは希少金属の採掘を支持している。
アンとフィリスの対立が深まる一方、ナディアは、アンにより火星の美しい風景を目の当たりにする。
これまで、火星もシベリアと同じだと考えていたナディアは、今までに一度もどこでも見たことのない火星の風景とその美しさにふれ、自らが変化していくことに気づく。
北極の極冠までたどり着いたところで、水を探すことが目的だったフィリスと北極点を目指すアンとで再び対立し、フィリス派を残して、アンとサイモン、ナディアは火星の北極点を踏破する。
この旅行が終わったのち、〈アレス〉から直接フォボスへ行っていたアルカディイがアンダーヒルへとやってくる。
アルカディイが彼なりの火星の将来を語り始めたことで、アンダーヒルにいた者たちも、目の前の作業に追われるだけだった日々から、今後どうするかを考え始める。
すなわち、火星の緑化である。
これには、アンが火星に原住生命がいる可能性をあげて、反対した。
そもそもアンは、火星そのものにほれ込んでしまっており、心情的には、火星の環境を変えてしまうこと全てに反対なのである。
緑化反対グループは、レッズと呼ばれるようになり、地球でも、火星を緑化するべきかどうかの議論が起きていた。
一方、「最初の100人」の中ではそもそもレッズは少数派で、何より今後定住を考えるのであれば緑化は必要であり、問題はそれをどのように行っていくかだった。
緑化推進論者の中心人物はサックス・ラッセルで、アンと論戦を展開する。
また、火星独立を考えているアルカディイも緑化推進派である。
一方で、アンと親しいナディアはレッズなのだが、ナディアとアルカディイは親しい間柄であったため、この関係を通じて、緑化推進自体は規定事項としても、急進的な動きは抑えられていた。
緑化のための最初の計画として、発熱風車が作られ、飛行船で火星各地に散布することとなった。
アルカディイとナディアは、二人で飛行船に乗ってまわることになった。
飛行船でエリシウムの山脈の脇を進む。
ある時、発熱風車の中に、遺伝子改造された藻が隠されているところを発見する。
そして、オリンポス山の近くで、巨大な嵐に巻き込まれてしまう。


このマーズ三部作は、科学的に正確な云々といわれているのだけど、当時の火星有人探査計画がどのようなものだったのかよく知らないので、Wikipediaを見てみた。
「1980年代までの有人火星探査構想は、地球低軌道の宇宙ステーションや月面基地で建造される巨大宇宙船を前提としたものがほとんど」とあり、これはある程度〈アレス〉にも当てはまる。
一方、1990年に、このような構想に反発する形で「マーズ・ダイレクト」という計画が提案されたらしいが、同じくWikipediaによると「まず化学工場と小型の原子炉、水素を積んだ無人の地球帰還船 (ERV) を、大型のブースター(スペースシャトルのエンジンやブースターを流用したもので、アポロ計画で使用されたサターンVに匹敵する輸送力を持つ)で打ち上げ、火星に送り込む。」「少量の水素と火星大気の二酸化炭素を反応させて、112tのメタンと酸素を生産する(サバティエ反応)。」とあり、このあたりは本作にも出てくる。〈アレス〉はスペースシャトルの外部燃料タンクをユニット化して組み立てられているほか、無人で様々な道具や材料、酸素供給装置などが事前に火星に送らている。サバティエ反応という言葉も出てきた。

第四部 懐かしき故郷

精神科医ミシェル・デュヴァルを視点人物とした章
ホームシックになり、自らも精神を病んでしまった精神科医ミシェル
性格理論を組み立て、主要なメンバーをあてはめていく
ある夜、ミシェルの部屋に密航者が訪れ、ヒロコの農園へと連れていかれる。
そこでは子供たちが生まれており、また、ヒロコによって、火星信仰の宗教儀式が作られていた。
ヒロコたちは、密かにアンダーヒルを離れることを決め、ミシェルもついていく

第五部 歴史への転落

時代は下り、2047年(火星紀元10年)、最初の100人に続く多くの人々が火星に住み始め、街も増えている。
ジョン・ブーンは、自らの命を狙う者を探すため、探偵となって火星を旅してまわる。
第五部は、ジョン・ブーンが、蓬莱という街に作られた、モホール(モホロビチッチ連続面を貫く穴)という巨大な穴の工事現場を訪れたところから始まる。
重機が落ちてきて、ジョンは死にかけ、ジョンは「火星最初の探偵」になることにする。ちなみに、すでに齢64歳である。
ジョンは、AIのポーリーンを相棒にしている。ところで『太陽系動乱』に出てきた主人公の量子AIの名前もポーリーンだった
アンのもとを訪ね、コヨーテと呼ばれる謎の男のことを教えられる。一方、ジョンは、惑星をテラフォーミングするだけでなく、火星によって人間がアレオフォーミング(火星化)されるんだと語り、アンに気に入られる。また、アンが妊娠していることを知る。
その後、ジョンは、放浪スイス人の集団、UNOMA(国連火星事業局)のもとで緑化計画を導くサックスのところや、UNOMAの本部が置かれ火星最大の都市となったバロゥズ、鉱山の町ブレッドベリ・ポイント、アラブ人キャラヴァン(偶然にもフランクと居合わす)を次々と訪れていく。
最初の100人のメンバーでもあるヴラドとウルズラのいるアケロンの生体工学研究所では、マヤと再会し、2人でともに、アケロン・グループの開発した長命化処置をうける。
この長命化処置は、最初の100人に施され、彼らは数百年の命を得ることになるが、このことがその後、公になると、地球では大混乱が起きる引き金となった。
ジョンは再び火星中を回り、以前とはべつのアラブ人の集団と出会う。それはスーフィーの集団で、ジョンは彼らと一緒に踊りながら、世界各国の火星の呼び名を詠唱にあわせてつぶやきはじめ、スーフィーたちもそれにあわせはじめる。イスラム神秘主義と火星信仰の結びつき。
様々な集団から、宇宙エレベーターの話を聞く。
コヨーテたちがジョンのもとに訪れ、移民の速度を遅らせるように言ってくる。
UNOMAが捜査官を派遣してくる。連続する破壊工作の背後にいるのはジョンではないかと疑う、この捜査官らは、ジョンを殺人犯に仕立てあげようと罠をしかけ、ジョンは間一髪でそれを逃れる。
長年続いていた〈大砂嵐〉が終わったことを記念して、オリンポス山でパーティを開くことにする。「最初の100人」からも40人超が集まり、その中には、姿を消して以来ずっと消息をたっていたヒロコの姿もあった。
そのパーティの日は、火星の大気を厚くするために火星へと軌道を変えられた小惑星が落下してくる日でもあった。
ジョンは、コヨーテとともにいた少年カセイが、自分とヒロコとの子であることをヒロコに確認する。ヒロコは、最初の100人の男性から密かに採取していた遺伝子を使って、自分との子を作っていた。ヒロコ集団にいる子どもはみなヒロコを母か祖母にもつ。

第六部 テーブルの下の銃

ジョンが暗殺された後から
冒頭、ゴシック体で書かれた断章が置かれる(これはどの部にもある)が、第六部のそれは、ジョンが暗殺された時に何をしていたかということについての、市井の人からの聞き書きという体裁をとっている。一段落ごとに、人が変わっていく形になっていて、日本語で読むと主語と文末の助詞が変わる(ぼく→わたし→おれなど)のでそれが分かるのだけど、英語だとどうやってやってたんだろうか


フランクを視点人物として進む章
フランクは、いまだアメリカの代表者であることを任じており、条約改定に向けた会議では、超国籍企業体の動きを抑えるため、各国への根回しを進め、従来通りの条約をかろうじて維持する
その後、フランクは、アラブのキャラバンで2年ほど生活する。
しかし、超国籍企業体から火星へと送り込まれてくる若い労働者たちの、一種奴隷的な待遇と、それに反抗して、姿を消している者たちがいることを知る(アルカディイの支持者たち)
フランクは、再び自らの執務室へと戻ってくる
宇宙エレベーターが、ついに赤道にあるパヴォニス山に建設され、エレベーターの街シェフィールドは、バロゥズを超える。余談だが、シェフィールドにはレンタルビデオ屋があるらしい。未来予測って難しい。
あと、カーボンナノチューブという単語が、出てきてない、気がする(ちなみに、続刊の『グリーンマーズ』では出てくる)。炭素で作られてはいるけど。
フィリスは、エレベーターの責任者たる地位についており、超国籍企業体とべったりとなっている。
(ちなみに「最初の100人」の側では、緑化計画推進派のラッセルも超国籍企業体と近しく、彼は緑化のための投資を受けているが、所属は国連で、まだ距離がある)
エレベーターの建設による人口流入は、火星の収容能力を超えており、住環境が悪化していた。超国籍企業体は、巧みに条約違反のことをやっている。この問題を解決すべく、フランクはフィリスとも会談するが、話があわない。彼女は、軌道上で生活しており、火星の実態を見ようとしていないのである。
火星の地位は、いわば南極基地のようなものであったころから変わらぬまま、人口だけが急増しており、つまり自治権などは持っていないので警察組織などもできておらず、超国籍企業体が保安部隊などを送り込んでいるような状態。そのため、治安も悪化している。
暴発しそうな労働者たちを、フランクとマヤが説得する。アメリカのような独立運動を目指そうとする者たちに、火星と地球は環境が違う(ドームを出て生きていくことができない)からそんなことはできないというが、結局、「革命」が勃発する。

第七部 いつか来た道

「革命」をけん引したのはアルカディイだが、複数のグループが同時多発的に活動し、アルカディイにもコントロール不可能になっており、アルカディイはそんな状況を望んでいた。
そうしたグループの中には、小惑星ネメシスを火星へと落下させる者たちもいた。
アルカディイがいた街は、ドーム内の酸素濃度を意図的に上げられ、住民全員が自然発火するという方法で虐殺される。
第七部は、再びナディアが視点人物となり、革命後の混乱した火星で再び「最初の100人」が少しずつ集まってくる過程を描く。
反乱者たちにより帯水層が破られ、洪水が起こり始める。
ナディアは、街の修復などを行うため、軽量飛行機に乗り込み各地を回り始める。そんな中で、アンやサックスなどとも合流し、「最初の100人」のうち6人で飛行機の旅を始める。
途中で出会ったアルカディイのもとにいたという若者が、宇宙エレベーターのケーブルを、クラーク(軌道上のポイント)から外したという。
宇宙エレベーター崩壊シーンは、おそらく本作の中で最も圧巻のスペクタクルシーンで、ケーブルが火星の赤道上に次々と落下していく。しかも速度を増した2週目まである。むろん、その時にエレベーターに乗っていた人も、赤道上にいた人たちもみな死ぬ。ナディアたちは、少し離れた場所にいて、各地から送られてくる情報をなすすべもなく見守るしかなかった。
(アンとサイモンの子どもがエレベータにいたが連絡とれず生死不明)
ナディアたちはその後、アルカディイの最後の地にも訪れることになり、ナディアはそこでアルカディイの死を知る。
その後、UNOMAの支配下にあるカイロへ到着する。そこで、フランクとマヤと合流する。フランクは停戦のため奮起していた。
ナディアは、生前のアルカディイから渡されていたスイッチを押す。そして、フォボスが落下を始める。
国連の治安部隊がやってくる。地球側は、この反乱の首謀者を「最初の100人」だと考えるようになっていた。追われる身となったナディアたち。
カイロで爆発騒ぎが起こり混乱が生じるが、これはコヨーテによる陽動で、ナディアたちの前に元精神科医のミシェルが現れ、彼らはカイロを離れる

第八部 シカタ・ガ・ナイ

アンの子供ピーターが生き残っていたことが冒頭に示されたのち(ただしアンたちはまだ知らない)、アン視点で話が展開される。
ミシェルとカセイが運転するローヴァーに乗って、アン、サイモン、ナディア、フランク、マヤは、南極にあるヒロコの隠れコロニーを目指す。
追っ手から隠れながら進む行程だが、途中からはマリネリス峡谷の大洪水によって、危険度の増したルートを極度の疲労と緊張の中進むことになった。
火星の大洪水なので、流れては凍っていくという、非常に壮絶な光景
アンは道半ばまでずっと鬱状態になっていて、ただただ車内から洪水の様子を眺めていて、他のメンバーを手伝っていなかったが、ある時、こんな状況の中でも穏やかな食事の瞬間があるということに気づいて、その状態から抜け出す。
その後は、それまでを取り返すように、積極的に運転を替わったりすることになるのだが、ある時、ほんの一瞬だけ集中力を欠いたために、フランクが流され、そのまま亡くなってしまう。

追記(20221029)

1908年に、火星を舞台としたユートピア小説『赤い星』を出版。
(中略)
『赤い星』は、キム・スタンリー・ロビンソンのネビュラ賞受賞作『レッド・マーズ』の発想源の一つであった。登場人物のアルカディは姓をボグダノフといい、設定上のボグダーノフの子孫ということになっている(ちなみにアルカディという名は、明言されていないものの、おそらくストルガツキー兄弟の弟アルカディの名を貰い受けているのだろう)。
アレクサンドル・ボグダーノフ - Wikipedia

ひい、『ストーカー』積読なんだよな、読まないと