2009-01-01から1年間の記事一覧

内井惣七『ダーウィンの思想』

ダーウィンが如何にして進化論を考えるに至ったのか、ということがまとめられている。 進化論そのものの解説としてもコンパクトにまとまっているけれど、それが実際にダーウィンがどのように考えていったのかがわかる。 まずはビーグル号の話と、地質学者ラ…

イタロ・カルヴィーノ『柔らかい月』

おお、SFだなあ。 カルヴィーノはこれで2冊目。前は、『見えない都市』を読んだのだけど、それは非常にファンタジーであった*1。 想像力豊かで幻想的なヴィジョンを見せてくれる作品でもあると同時に、小説って面白いなあということを感じさせてもくれる。 …

小島寛之『無限を読みとく数学入門』

やっぱり、数学は全然分からないけど面白いなあ 一章が結構圧巻 ゼノン、ユークリッド、マクタガード、ケインズってそんな風にして繋がっちゃうのか、みたいな この本の主役は圧倒的にカントールですけど。 しかし、数が存在するって一体どういうことなんだ…

冲方丁『スプライトシュピーゲル』『オイレンシュピーゲル』

何でこれを今まで読んでなかったんだ、自分! と後悔すると共に、何はともあれ完結する前に追いつくことができて良かったと思う。 ラノベの到達点 『ガンスリンガーガール』と『虐殺器官』を足して、さらに「キャラクター」を掛け合わせてブーストしたような…

哲学者RPGを作ろう計画Ver0.3

哲学者RPGを作ろう企画 - pon_zhanの日記 哲学者RPGつくろうぜ計画 ver0.2 - 覚え書き、あるいは思考メモ というわけで、流れに乗ってみることにした。 哲学者RPG分析哲学編。 導入 主人公がフレーゲと会うところから始まる。数学の基礎について語り合う2人…

NoNoWire09面白かった

どうも、お久しぶりです。 さて、今日は初音ミクの誕生日らしいです。おめでどうございます*1。 でもまあそんなこととは関係なく、最近の自分はニコマスにはまっているので、以前にわかボカロファンとしてボカロ曲を紹介したように、にわかアイマスファンと…

色々

書くのをずっとさぼってしまった。 一回さぼるとどんどん面倒になるのだが、その一方で不安にもなってくる。 フィクションの美学作者: 西村清和出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 1993/03メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 27回この商品を含むブログ (20…

飛浩隆『象られた力』

「デュオ」が一番面白かった。 次に表題作。特に最後のオチみたいな奴がなかなか。 あ、どちらも語り手が変わるということが使われている作品だなあ。 前者は特にそれがうまかったような気がする。 「呪界のほとり」と「夜と泥の」もそれぞれ面白かったが、…

『サマーウォーズ』

面白かったー。 だがしかし、「面白かったー」以外に特に感想のない作品でもあるw それは『時をかける少女』と同じく、エンタメとしてよくできているということで まあ、大体どんな人が見ても楽しめるのではないかなあと思う。 ストーリーにも設定にもツッ…

『十二人の怒れる男』

昨日、つまり裁判員裁判初日に見た。 大分前に友達からビデオを貰っていたのだけど、見ないで放っておいたので、ちょうどよい機会だと思って見た。 90分くらいの長さで、密室劇。 父親を殺した少年の裁判。誰が見ても有罪だと思われたが、12人のうちただ…

ジョン・ハリソン『共感覚』

話しかけるような文体で進んでいくので読みやすい。 心理学の基本的な考え方なども分かる。 心理学の基礎→共感覚について、という構成ではなくて、共感覚について話ながら、必要になれば基礎的な話を適宜行うという構成なので、読んでいる分には非常に楽なの…

うえお久光『紫色のクオリア』

まさに見事なセカイ系ラノベであったなあ、と思う。 人の能力が視覚化されるってブギポっぽいし。 ループのあり方は、ひぐらしっぽい。 語り口は、ちょっとだけサマー/タイム/トラベラーっぽいけど、あそこまで感傷的じゃないし、単に一人称の語りで、あとか…

デーヴ・グロスマン『戦争における「人殺し」の心理学』

なかなかなんとも言えない本であるが、良書だと思う。 戦争において兵士が一体何を体験しているのかという話で、主に第二次大戦とベトナム戦争だが、第一次大戦や南北戦争の資料も結構出てくる。 人は人をそうそう殺すことはできない、というのがまず確認さ…

『哲学の探究』第35号

伊佐敷隆弘「反実仮想とフィクション――実在する物個体をめぐって――」 反実仮想とフィクションの違いについて 細部の確定性(不確定なのがフィクション) 変更明示の原則(伴わないのがフィクション) 履歴への追加の不可能性 これらから、フィクションには実…

日下三蔵・大森望編『超弦領域』

法月綸太郎「ノックス・マシン」 タイムトラベルのパラドックスもの キテレツ大百科で航時機を作ったのは誰か、みたいな。 数理文学解析の話とか面白い 林巧「エイミーの敗北」 樺山三英「ONE PIECES」 現代版フランケンシュタイン。 ジャンジャックに比べれ…

夏コミ!『筑波批評2009夏』

新刊『筑波批評2009夏』が出ます。 コミックマーケット76三日目(8/16(日)) 東地区M−28a 特集「ゲームの思考」 僕たちはゲームの中に生きている。 その中で確かに脈打つ隠れた思考を炙り出す、ゲームをめぐる新しい言葉が今ここに! 本文1…

今月の文芸誌

群像8月号 戦後文学2009高橋源一郎×奥泉光 群像で戦後文学を読む企画をやるんだけどどう、みたいな感じの対談。 自分たちが戦後文学をどう読んできたかとか、今の文脈でも面白いものは面白いんじゃないかという話から、次第に企画会議へと変わっていく…

グレゴリイ・ベンフォード『大いなる天上の河』

@migiさんから『BLAME!』の元ネタだよと貸してもらった。 主人公がキリーン! でもって、ヒロインがシボ! ニアルティとかサナカンとかも出てきて*1、テンション上がる 舞台は、どっかの惑星なのでBLAME!とは違うけれど、電基漁師の生活と雰囲気は似ている気…

外部のなさとしてのセカイ系

『社会は存在しない』を読んでいて考えたことなどを書いていく。 『コードギアスR2』と『ダークナイト』 笠井は、「セカイ系と例外状態」の中で『コードギアス』を画期的な作品だとしたうえで、R2のラストについても論じている。例外状態において親殺し…

『社会は存在しない』限界小説研究会編

サブタイトルに「セカイ系文化論」とある通り、セカイ系評論集となっている。 「何を今更セカイ系なんて」と思う向きにも、ちょっと立ち止まってもらいたい。 これは、セカイ系と称されてきた作品について論じる、というわけではなく、セカイ系という概念が…

稲葉振一郎『社会学入門』

あとがきによると、稲葉振一郎の勤める社会学部1年生向けの授業を元にしたとのことで、元々一般教養科目としての性質があったようで、「社会学」入門であると同時に一般教養である。 一般教養であるって、よくわからない言い方になってしまったw 全部で1…

『講座美学3』今道友信編

とりあえず、美学って何なんだということで入門編として読んでみた。 美学の方法というタイトルで、色々な方法論が紹介されている。 わけわからんものもあれば、面白いものもあった。 現象学 フッサールの遺稿から、フッサールの美学を再構成するという試み…

飯田隆『言語哲学大全 意味と様相』

2巻と3巻、意味と様相の上下を読んだ。 やはりこれもまた、何で今まで読んでいなかったという感じだが、久しぶりに言語哲学に触れるとやっぱり楽しい。1年か2年に一回、言語哲学の本を読むといいのかもしれない。わからんけど。 入門レベルというのには…

奥泉光『グランド・ミステリー』

面白い! というか、今まで何で奥泉を読んでなかったんだ、俺と言いたくなる。 『鳥類学者のファンタジア』も面白かったけれど、こちらも圧倒的。小説の仕掛けとしては、こちらの方が上かも。 笑いに関しては、そもそも主人公のキャラが違うので比較できない…

友人のデビュー作

友人である秋梨がケータイ小説文庫よりデビューしました。 『キミが教えてくれたこと』というタイトルで、第3回ケータイ小説大賞ジャンル賞を受賞した表題作*1と、「さみしさを追いかけて」という2篇が収録されてます。 ちなみに、以前筑波批評で彼にイン…

アントニオ・ダマシオ『感じる脳』

これは面白かった! 感情とは一体何かということについて、かなり踏み込んで仮説を構築している感じがする。 具体的な部分について、まだ分かっていないところがあるとも言っているが、大まかなアウトラインはできている。 何よりも、感情とは内部状態につい…

『新潮』

『新潮』読んだ。佐藤友哉、川上未映子(太宰治特集創作)、東浩紀(『ファントム、クォンタム』) ファントム、クォンタムは次回完結らしい。不定期連載なので、前の回など色々忘れているけど、それでも面白い。単行本出たら、まとめて一気に読みたいと思う…

ポール・オースター『ムーン・パレス』

フォッグが、伯父の死を一つのきっかけとして生活を放棄し、セントラル・パークでホームレスとなって餓死寸前のところまでいく。その後、友人に助け出され、老人の話相手のバイトを始める。そして、一度死んだという彼の半生を聞くことになる。彼の「死後」…

泉信行『漫画をめくる冒険』下巻

これまた、非常に面白く、また色々と示唆に富む本。 とりわけ、下巻の序で言われている「詠む」という概念の提起は素晴らしいと思った。これは自分のフィクション論にも適用していくことができそうだ。 非常に細かい、技術的な話を論じているようにも思える…

『美術手帖7月号』

特集がアウトサイダーアートだった。 アウトサイダーアートというと、ダーガーとシュヴァルくらいし知らなかったが、代表的な作家が10人くらい紹介されていて、さらにプラスして他の作家や日本の作家も紹介されていた。ので、ガイド的には非常によい感じだ…