『十二人の怒れる男』

昨日、つまり裁判員裁判初日に見た。
大分前に友達からビデオを貰っていたのだけど、見ないで放っておいたので、ちょうどよい機会だと思って見た。
90分くらいの長さで、密室劇。
父親を殺した少年の裁判。誰が見ても有罪だと思われたが、12人のうちただ1人の陪審員が無罪に票を投ずる。彼もまた無罪だと思っているわけではない。しかし、何の議論もすることなく決めてしまってはならないという責任感が、彼を無罪へと投票させたのである。
こうして、12人の男達が狭い部屋の中で、討論を始めることとなる。
静かな緊張感が画面を満たしていて、息つく暇もなく議論へと引き寄せられていく。
12人の陪審員達は互いに名前も知らず、彼らは最後まで番号でしか呼ばれないのだが*1、それぞれのキャラ設定が丁寧で、見ているうちに彼らの人となりも浮き上がってくる。
1人、なかなか偏見から自由になれない人がいて、彼がわめきちらす中、他の全員が席を立っていくシーンが、印象的だった。照明の感じとか、1人1人立ち上がっていくところが、なんか部隊演劇っぽいような感じがして。


まあ、普通にサスペンスとして面白いので、それでいいのだけど、あえて説教っぽいことを取り出すのであれば、
合理的な疑いを差し挟むことができるのであれば、無罪とする、ということが大事な原則であるということ。
主人公は繰り返し、「私には分からない」と述べる。
これは大事なことで、裁判というのは真実を明らかにする場所ではないのだと思う。
『それでもボクはやってない』を見たときにも書いたな。
裁判は、有罪か無罪か、有罪であるならばどれだけの刑罰が妥当かを判断する場所であって、それは真実を明らかにすることと必ずしもイコールではない*2

*1:正確に言うと、部屋を出た後に2人だけ名を名乗るが

*2:個人的な意見を述べると、そういう意味で、最近の「被害者感情を考慮して」という流れの司法制度改革の方向には全面的には賛同できない。被害者に対する手当は、司法ではなく行政の領分だと思うから