とりあえず、美学って何なんだということで入門編として読んでみた。
美学の方法というタイトルで、色々な方法論が紹介されている。
わけわからんものもあれば、面白いものもあった。
現象学
フッサールの遺稿から、フッサールの美学を再構成するという試み。
さすがフッサールという感じで、今まで考えていたことの8割くらいが既に言われていたような感じがした。
逆に言うと、枠組をもらうことができた。
しかしまあ現象学なんで、分析系から見ると、まだ概念的に不分明なところもあるよなあとかは思う*1。
それでも想像以上に、使える、というかしっかりしていると思った。
それはそうとして、フッセルなんだよね。84年の本だけど。
解釈学
よくわからんかったー。
芸術記号論
エーコのそれ。
レヴィ=ストロースとの比較とかは分かりやすかった。
エーコの師であるパレイゾンの上演とかのが気になるw
あとは、開かれたテクストとかの話。
記号論の生産性がどれくらいあるのかが、いまいちよく分からない。
分析美学
分析系であるなあという感じw
芸術理論の地位・身分を問うという感じであって、芸術そのものの性質について何かを語る感じではない
最後に志向性が出てきた。芸術の性質って志向性なんじゃないの、と。
実験美学
なんだそれ、と思ったが、この人の場合は、芸術作品を作ることのできる、あるいは芸術を理解していく人工知能は作れるのか、という話だった。
人工知能のプロジェクト自体が暗礁に乗り上げている現在、楽観的にすぎるなと判断せざるをえないが、こういう試み自体は面白いはず。
比較美学
芸術と美学史がついていて、非常によかった。
やっぱりこういうのが好きなんだなー、自分。
比較って文化圏ごとの比較かと思ったら(それもあるのだけど)、むしろ諸芸術間の比較の話(詩と絵画の比較とか)で、個人的には俄然盛り上がる。
共通性と差異をどのように見出していくか、という美学史。
美学つうか芸術学なんだろうけど、ここらへんが一番実りがありそうな気がするけどどうなんだろうか。分かりやすいし。
制作学
ヴァレリーが、美学なんてのは出来上がった作品を事実として受け止めるものであって、制作にとっては邪魔だ。制作に役に立つものが必要だ、と言ったのが始まり。
で、20世紀になって、パスロンという人が、消費・受容を対象としたエステティック、制作を対象としたポエティック、作品を対象とした学、この三位一体で芸術学となすというのを打ち立てて、制作学研究の雑誌を創刊した、と。
カロノロジア
今道友信の造語。
美学というのは芸術の学となっているけれど、最近芸術と美は必ずしも繋がらなくなっているわけで、美そのものを対象とする形而上学的方法としてカロノロジアをたてる。
まず、短歌の分析がなされるけれど、これが普通の文学的研究とどのように違うのかはいまいちよく分からない。
それから、行為の美についても分析した上で、善よりも美の方が上位にあるとする。論理展開にやや問題があったような気もする(ってか、分析系の人間だったら嬉々として(?)指摘しそうな)
存在をさらに越えるものとして美をおく。
善も同じように考えられるが、善は必ずしも存在すべてに妥当しない。何かが善であれば、何かは悪となる。一方、美は全ての存在を包括しうるのではないか、という話。
- 作者: 今道友信
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*1:というか、美学は全般的にそうか?