飯田隆『言語哲学大全 意味と様相』

2巻と3巻、意味と様相の上下を読んだ。
やはりこれもまた、何で今まで読んでいなかったという感じだが、久しぶりに言語哲学に触れるとやっぱり楽しい。1年か2年に一回、言語哲学の本を読むといいのかもしれない。わからんけど。
入門レベルというのにはやや難しいけれど、しかし語り口は明確でむしろ分かりやすい。
入門レベルという意味では、どの論点も大体ある程度分かっている話だったけれど、それらの復習としても、また新しく見直すという点でも、非常に良かった。言語哲学の楽しさというか醍醐味みたいなものを感じさせてくれる本。
論理実証主義にしろ、クワイン全体論にしろ、クリプキの可能世界意味論にしろ、かなりクールに検討していくというスタイルなのもよかった。それらの解説に留まらず、評価点と問題点をはっきりと並べてくれている。どういう議論の中にそれらの理論が置かれているのか、という点にも目配りがきいている。
特に、可能世界意味論に関して言うと、自分が今まで読んだのは三浦俊彦の『可能世界の哲学』とクリプキの『名指しと必然性』なので、内容に関してはおおむね把握していたけれど、置かれている文脈や問題点に関してはほとんど知らなかった。この本がクールに感じるのは、三浦俊彦と比較してというところもあると思うw
可能世界意味論が、従来の哲学が重視してこなかった論点を認識させたという点で評価しつつ、問題点や限界点を指摘して、様相とか指示とかの問題が決して解決されたわけではないということを示している。
個々の論点で、今まで知らなかったことがあって勉強になったなあというのも多いけど、やはり全体的な見通しのよさ、明晰さみたいなのがあったのが一番良かった。
1巻(「論理と言語」)や4巻(「真理と意味」)は、スルーしようと思っていたのだけど、何だか読みたくなってきた。まあ、他にも読みたい本が溜まっている状態なので、すぐに取りかかることはない気がするけれど、いつか読むことにしたい。こと真理に関して(つまり、タルスキとかデイヴィドソンとか)はかなり食わず嫌いしているところがあるので。

言語哲学大全2 意味と様相(上)

言語哲学大全2 意味と様相(上)

言語哲学大全 3 意味と様相 (下)

言語哲学大全 3 意味と様相 (下)