『美術手帖7月号』

特集がアウトサイダーアートだった。
アウトサイダーアートというと、ダーガーとシュヴァルくらいし知らなかったが、代表的な作家が10人くらい紹介されていて、さらにプラスして他の作家や日本の作家も紹介されていた。ので、ガイド的には非常によい感じだった。
以前、アウトサイダーアート紹介本眺めた時に載っていたような、気持ち悪い作品はほとんどなかった。緻密に描き込まれた作品が多いのは確かだけど。あと、オリジナルな文字や変形した文字書く人が結構いる。
他のアート運動との関わりとか知らなかったので、よかった。シュールレアリスムや精神医学の発展だったり、素朴派だったり。
その初期においては、降霊術との関係が盛んだったらしく、霊媒の人もいる。
キュレーターの小出は、アウトサイダーアートの定義ははっきりしておらず、一時的に保留するためのカートのようなものだという。
ただ、20世紀の時代的な状況とも密接にリンクしている概念なのだなあと思った。
例えば、小出はダーガーを「20世紀アメリカ大衆文化の寄せ集め」と称していて、言われてみれば全くその通りなのだけど、何だかわくわくしてくる。
わくわくしてくるといえば、

シュヴァルの「城」を筆頭に、建物や環境をつくりだす表現が「ヴィジョナリー・エンヴァイロンメント」という一大ジャンルを形成している

とあって、シュヴァルみたいなことしている人が他にもいるのかと思った。ヴィジョナリー・エンヴァイロンメントとか、すごく面白そう。
シュヴァルは、素朴派のルソーと同じ頃の人のようで、意外と前の人なんだなと思った。
あと、斎藤環アウトサイダーアートには、批評も鑑賞もしてはならない。関係しなければならないという倫理規定を提案する。それは、アウトサイダーアートの作品が多く、作り手の実生活とほとんど区別できないからだ。確かに、ダーガーの映画を見たりすると、如何に『非現実の物語』がダーガーの人生と強く関わっていたかが分かる。

美術手帖 2009年 07月号 [雑誌]

美術手帖 2009年 07月号 [雑誌]