ポール・オースター『ムーン・パレス』

フォッグが、伯父の死を一つのきっかけとして生活を放棄し、セントラル・パークでホームレスとなって餓死寸前のところまでいく。その後、友人に助け出され、老人の話相手のバイトを始める。そして、一度死んだという彼の半生を聞くことになる。彼の「死後」に生まれた息子に、フォッグの書き留めた老人の自伝を送る。と、その息子が実はフォッグの父親であることが明らかになるのだが、その時には彼はもう死んでしまう。
老人・トマス・エフィング、父・ソロモン・バーバーの一生、そしてM.S.フォッグの半生と、三人のそれぞれ違う世代の男達の人生が語られ、絶妙なタイミングとよって繋がり、あるいは繋がらない。
物語的には、エフィングと出会って以降が豊穣で読んでいて楽しいのだけど、フォッグが転落していく様がすごく感情移入・共感できてしまう。あと、最後のキティとの別れもそうかも。

ムーン・パレス (新潮文庫)

ムーン・パレス (新潮文庫)