小川一水『コロロギ岳から木星トロヤへ』

追記(20130818)
ブクマコメで指摘されるまで、タイトルがコロロギ岳であることに全く気付いてなかった。以下、いちいち修正するのが面倒なので、コオロギのままだが、コロロギと読んでください。記事タイトルだけ修正した。


時の泉に生息する生命体カイアク(個体の名称、種族の名称は不明)が、木星トロヤで何かに体を挟まれて身動きが取れなくなってしまったため、コオロギ岳にいる人間に助けを求める。
時の泉というのは、カイアク曰く空間1次元、時間3次元の世界で、こちらの世界の存在(コオロギ岳やそこにいる個々の人間など)は時の泉では楔のようなものとして見えている。カイアクたちは、そうした楔の間を泳ぎ回っているのだが、しっぽを木星トロヤの楔に引っかけてしまった。一方、頭側がコオロギ岳の方に出ていたので、そこにいた人間たちに助けを求めたわけなのだが、カイアクが時の泉という時間の流れの中を移動する生物であるために、コオロギ岳側は21世紀なのだが、木星トロヤ側は  世紀なのである。
コオロギ岳というのは日本アルプスのとある山で、天文台の観測所があり、その時は2人の研究員が滞在中であった。
一方、木星トロヤは、既に人類の生息圏になっており、あまつさえ戦争が起き、ちょうどカイアクがひっかかった方の場所は、他の星の統治下にあった。かつての戦争で戦い敗れた将軍の息子にあたる少年とその友人は、統治のシンボルとして記念館とされながらも半ば捨て置かれたかつての軍艦の中に閉じ込められる。
カイアクは、頭の方では人間とコミュニケーションがとれるが、しっぽの方ではコミュニケーションが取れない。少年たちがしっぽを叩いたので、そこに彼らがいることだけは知っている。コオロギ岳側の人間は、数百年後の木星にいるその少年たちへ伝言を試みなければならない。カイアクはその特性上、未来の出来事が分かる。それを利用して、政府の上層部とかけあい、様々な文書や伝承、そしてある絵画への裏書を使って未来へのメッセージを託す。
コオロギ岳側の主人公とその協力者が腐女子で、トロヤにいる少年2人の境遇に勝手に萌えて、彼らを助けようとする。
少年たちとしては、カイアクはどうでもいいが、閉じ込められた戦艦は放射能汚染されていることもあって、一刻も早く脱出したいが、外部との連絡手段がない状態。唯一、電子百科事典にはアクセスできる。カイアクのしっぽにモールス信号を送ると、それをカイアクがコオロギ岳の人間に伝え、彼らがメッセージを放つと歴史が変わって、その百科事典の項目が書き換わったりして伝達される。
カイアクを救い、2人の少年が脱出するために、戦艦にからみついたツタをどうにかしないということが分かる。


時の泉とカイアクという存在は、空間1次元、時間3次元と説明されるのだが、空間軸が、こちらの世界の時間軸のようになっているように見えない。
少年の父親である将軍の死の謎がいまいちわからない。

コロロギ岳から木星トロヤへ (ハヤカワ文庫JA)

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